INTERVIEW

栁俊太郎


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:24年02月07日

読了時間:約7分

 俳優の栁俊太郎が、山﨑賢人主演映画『ゴールデンカムイ』(公開中)に出演。双子の軍人、二階堂浩平と洋平の2役を演じる。本作は野田サトル原作のシリーズ累計2700万部突破のベストセラー漫画。北海道を舞台に莫大なアイヌの埋蔵金をめぐって、杉元佐一(演・山﨑賢人)&アシㇼパ(演・山田杏奈) VS 第七師団 VS 土方歳三(演・舘ひろし)による三つ巴埋蔵金争奪サバイバル・バトル作品。インタビューでは二役を演じる栁に撮影でこだわっていたところ、アクションシーンで山﨑と話していたこと、もし他の役を演じられるならどのキャラクターに挑戦したいか、話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

違う不気味さがあった1人2役

村上順一

栁俊太郎

――試写を拝見して二階堂、すごくハマり役でした! 役にアプローチするにあたってどんなことを考えて臨みましたか。

 ありがとうございます。原作は読んでいたので、二階堂はすごく面白いキャラクターだなと思っていました。ただ、双子を一人でどう演じるのか、それは初めての経験だったのでわからないことだらけで。キャラクターについて改めて調べるというよりも、原作を読んだときのインパクトが強かったので、それを大事にしようと思いました。また、見た目のアプローチを探っていくという感じでした。

――見た目といえば、すごく原作の二階堂に似ていますよね。

 スタッフさんとも見た目でがっかりされないようにやっていこうと話していました。特殊メイクで額を埋めているので表情の作り方が難しくて。眉間のあたりがほとんど動かないので、衣装合わせのときに鏡で自分を見て、どういう表情にしたらより怖くなるのかを研究していました。

――双子を演じるにあたってボディダブル(代役)を立てながらの撮影とお聞きしました。

 そうなんです。その方に僕の意思を伝えて演じていただいて、今度は自分がもう一人をやるんですけど、合わせるのがなかなか難しくて。

――時間はかかりますよね。完成したものを見ていかがでした?

 自分が同じ画面に2人いるというのは変な感覚がありました。皆さんすごくいいと言ってくださること多くて嬉しいのですが、自分的には自分と同じ顔が2つあるのは気持ち悪い(笑)。原作でもすごくそっくりな双子で、それが二階堂の怖さ、不気味さに繋がっているんですけど、自分となるとまた違う不気味さがありました。

――似せようと考えていたのでしょうか。

 あえて変えようとはしなかったです。台本の読み合わせの時に、久保監督に「原作では一緒ですけど、さすがに実写で一緒のことを僕がやったらどうなんですか?」というお話をしたところ、「ほぼ一緒でいい」という結論になりました。台詞が違いますし、同じ画面に2人いたら同じ人が 2人いるという風には見えないだろうって。それは自分が演じているから変えようと思いますけど、瓜二つの人間がやばいことをするというのは、二階堂の特徴になるなって。

――山﨑賢人さん演じる杉元佐一のセリフで、“見分けがつくように印をつけてやる”、というのも生きるのかなと思いました。さて、久保茂昭監督とは『HiGH&LOW』で一緒だったと思うのですが、久しぶりですよね?

 2人で「久しぶりだね」といったお話はしました。『HiGH&LOW』の時はキャストがいっぱいいて、僕自身登場シーンが多いわけではなかったので、当時監督とあまり会話はなかったので、今回改めてよろしくお願いしますという感じでした。

――栁さん自身はどんなところが二階堂に選ばれた理由だと思いますか。

 原作もそうなんですけど、ちょっと人間味のないところが僕と合っていたのかなと。アクションでも爬虫類のような首の動きだったり、軟体動物のような人間っぽくない動きを求められました。アクション部の方が『今際の国のアリス』(Netflix)で演じた“ラスボス”のようなアクションを求めていたというのもあり、二階堂とラスボスはキャラクターとしては全然違うのですが、「アクションしたときの奇妙さみたいなものは栁くんにしか出せないよね」と言っていただいたことがあったので、おそらくそういったところを評価していただけたのかと思っています。

――今回の大きなポイントとして極寒の地での撮影で、馬ゾリに乗ってアクションするシーンもありましたが、過酷な撮影ですよね。

 今回初めて乗馬を経験したのですが、すごく楽しくてまたやってみたいなと思いました。ただ、本番は地面が凍っていて落馬の不安がありました。練習は普通の土の上でしたし、落馬は1 回もなかったのですが、結構スピードをつけてカーブも曲がったので怖かったです。

――極寒のなか体調は大丈夫でした?

 もちろんきついんですけど大丈夫でした。みんなもアドレナリンが出ていたと思います。役的にも大体アドレナリンが出ているキャラばかりなので。

――杉元と戦うシーンでは山﨑さんと相談されたりも?

 賢人とは何回か共演していますし、普通に普段から食事に行ったりするような仲なので、遠慮なく当てるところは当てていいよね、というのは話していました。初めましての人と比べたら、お互いこのぐらいだったら大丈夫というのもわかっています。賢人はアクションで様々な作品に関わってきているので、信頼感も強いですし、むしろ引っ張ってもらった感覚もあります。賢人が演じる杉元は古武術など、格闘技を習得している人物だったので大変だったと思います。僕は自由に暴れるだけだったので、怪我をさせないように気を遣いましたけど、距離感などしっかり練習していたので自信はありました。

軟体動物っぽい感じもいい

村上順一

栁俊太郎

――本作でもし好きな役を選べたとしたらやってみたいキャラはありますか?

 うーん、脱獄王の白石(演・矢本悠馬)をやってみたいかも。僕はコメディっぽい役はあまりやったことはなくて、白石の軟体動物っぽい感じもいいなと思ったり。とはいえ、実際撮影しているところを見ると、白石のように裸になって川に飛び込んだりはキツそうです。他にも白石はローションを塗って演技をするシーンもあったのですが、常にベタベタで乾かないからずっと寒いみたいで。それを考えるとやっぱりやりたくないかも(笑)。でも、キャラクターとしての興味はめちゃくちゃあります。

――二階堂とは違った大変さがあるんですね。鶴見中尉役の玉木宏さんと共演されてみていかがでした?

 玉木さんは大先輩なので、ご一緒することに緊張感はあるのですが、鶴見を演じているときに歯をカチカチ鳴らしているところがめちゃくちゃ面白くて。あんなにもクールに見える方がそういう芝居をするとすごく面白い。実際お話してみるとすごく優しくて緊張をほぐしてくれるような方でした。撮影中は鶴見中尉にしか見えなかったんですけど。

――役とのギャップがすごいですよね。さて、本作は戦闘シーンや埋蔵金探しのストーリーも印象的ですが、栁さんはこの作品からどんなことが伝わったら嬉しいですか。

 アイヌの文化などアイヌのことを知るきっかけとしてもすごく素晴らしい作品だと思いました。そして、キャラクターそれぞれに追いかけているものがあって、二階堂は埋蔵金ではなく杉元への復讐心なのですが、それぞれの熱さが伝わったら嬉しい。キャラクターも濃いですし、エンタメや文化など、てんこ盛りの作品はなかなかないと思うので、ぜひ劇場で観てもらいたい作品だなと思います。喜怒哀楽がいろいろ詰まっているので、そこも感じていただけたら嬉しいです。

――確かにアイヌのことを知るきっかけになる作品ですよね。

 僕も撮影するまでは、アイヌのことは詳しくなかったのですが、野田(サトル)先生はどれだけアイヌについて調べたんだろうと感銘を受けました。言葉もすごく細かいところまで突き詰めた作品だと思うので、僕があえて言わなくても観ていただければ伝わると思います。それぞれの環境が違う中で、家族のことだったり様々な状況で闘っている人間たちの物語を楽しんでほしいです。

――栁さんは今回撮影を通して、気づきや発見はありましたか。

 新しいことに挑戦した作品で、銃の扱い方だったり軍事監修者指導の元アクション練習もやりました。当時の軍事練習の集団行動や手の角度、頭の下げる角度も細かく指導していただきました。その角度も時代によって違うということを教えていただき、それは始めての発見でした。

 そして、先ほどお話しした乗馬もそうですし、北海道の広大な土地で寒い中よくやったなっていう。マイナス15度の中で撮影したことなんてなかったので、その体験は自分の財産になりました。

――その後に食べた温かいものが体に沁みそうですね。

 本当にそうでした。賢人とか北海道に来ていたみんなとジンギスカンを食べに行きました。すごく寒い中で撮影した後のビールとラム、鍋も最高だったので、撮影がなくてもまたジンギスカン屋に行きたいです。

(おわり)

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