- 1
- 2
乃木坂46の久保史緒里が、6月30日より公開の映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』に出演。ホストの星矢(演:高野洸)に恋しているキャバクラ嬢の絢香を演じる。本作は映画『ミッドナイトスワン』の内田英治氏と映画『さがす』の片山慎三氏が共同で監督を務め、主演:伊藤沙莉×共演:竹野内豊による異色エンタメ作品。MusicVoiceでは、6話構成の中で3作担当した内田英治監督と久保史緒里の対談を実施。内田監督から見た女優・久保史緒里の印象、久保は自身が演じる絢香に何を感じていたのか、撮影時に感じていた不安について、話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】
イチ役者としてかなりハイレベル
――久保さんは内田監督とご一緒してみていかがでしたか。
久保史緒里 監督と初めましての時は緊張して、自分からあんまり積極的に話しかけに行くこともできず、最初はちょっとおじ気づいていた部分もありました。私は経験も浅くてほとんど映画の経験がなかった中で、監督は1つ1つ細かい部分を見逃さずにいてくださり、すごく救われました。
――その緊張感は内田監督だからなのか、それとも関係なく?
内田英治 たぶん彼女はそういう性格じゃないと思いますよ(笑)。
久保史緒里 (笑)。私がすごい引っ込み思案で、人見知りするところがあって。何事も慣れるまでに時間がかかってしまう人間なんです。
――監督は“女優・久保史緒里”をどのように見られていたのでしょうか。
内田英治 音楽活動をしている、アイドルにしてはいいよね、といった評価、表現をされることもよくあると思うんですけど、実際は全くそんなことを思わせないくらいイチ役者としてかなりハイレベルだと思います。撮影初期の頃は冗談で「乃木坂46一の演技派だよね」とか、ちょっといじっていたのですが、撮影していく中でその要素が本気であるんじゃないかと思いました。
――久保さんが演じる絢香はホスト狂いのキャバクラ嬢という役柄で、これまでのイメージになかったと思います。
内田英治 これに関してはよくやりきったと思います。まあ、僕がお願いした役なんですけど、なんだかんだ言ってもアイドルですし、正直この役を「やる」と言うとは思っていませんでしたから。
――久保さんはこの役をいただいた時、どのような心境だったのでしょうか。
久保史緒里 今までやったことがない役柄でした。嬉しいというのが適切な表現なのか分からないんですけど、「絢香はこういう役です」と説明を受けた時にすごく嬉しかったんです。私は自分と違う世界線に興味があるので、自分とは180度違う人物を演じられるというのは、私にとってこんなにも嬉しいことはないんです。私の中では、不安など全てなくして挑みたいという気持ちでした。
――タバコを持ってるシーンも印象的でした。普段タバコに触れる機会なんてないですよね?
久保史緒里 なかったです。ですので、経験がないことがバレるじゃないですか? 全く経験がなかったので、撮影に入る前に実際に出演者の方などに教えていただきました。タバコの箱の開け方など本当に基礎的なところから教えてもらって(笑)。
内田英治 うまくやってたよね。
純粋さを残したかった
――完成した映像を観られて、絢香はどういう人物だと改めて感じていますか。
久保史緒里 色々ありますが、絢香はすごく純粋な人なんだろうなと思いました。歌舞伎町という場所に憧れを持っていて、色んなことがうまく回らない人生ではあるけど、自分の思ったこと、やりたいこと、星矢のこと、そういうものに対してすごく純粋で隠そうとしない人間。そこを演じるにあたって、彼女の核の部分として残したいと思っていました。それに加えて孤独な面もすごくあるなと感じていました。
――監督はどのような象徴として、絢香を描きたいと思われていたのでしょうか。
内田英治 最近の恋愛、まあ何でもそうだと思うのですが、刹那的だなと感じています。僕らみたいな大人がいい日本を作れなかったからだとは思うんですけど…。それは結局先が見えないからそうなってしまう。80年代や90年代は想像できる未来がいっぱいあったから、恋愛とか夢とか末永く追うことができたと思います。でも今は瞬間だけを切り取って楽しもうとすると言いますか、まるで 30年後がないかのような感じがしていて、その象徴として絢香と星矢というキャラクターを作りました。それは60年代、70年代のアメリカ映画とちょっと似てると思います。当時も先が見えない、刹那的な瞬間を描いた映画がたくさんありました。
――バッドエンドと言いますか、絢香と星矢の結末に関しては?
内田英治 本当にあった事件をちょっと組み合わせて描いてるというのもありますし、ハッピーエンド、バッドエンドについては、自分の映画作品ではよく言われるんです。でも、ハッピーエンドなんて今の時代ってどこにあるの? と逆に聞きたくなりますよ(笑)。
――現実でハッピーエンド、難しいですね...。
内田英治 夢を見るのであればハッピーエンドでいいと思います。今回はちょっとファンタジーとして描いてる分、リアリティを追求したかったので、そうなるとハッピーエンドなんてないよねというところに行き着いてしまいました。実際に歌舞伎町には、毎日かわいそうな恋愛の結末がおそらく何千何万とあるんじゃないかなと。僕は歌舞伎町のそういう文化みたいなものがいいとは全く思っていないですけどね。
――久保さんは歌舞伎町の思い出や印象というのはありますか。
久保史緒里 この作品への出演が決まるまで行ったことがない街でした。作品への出演が決まってマネージャーさんと初めて街を歩いてみて、本当にいろんな方が集まってるなと思いましたし、時間帯によって、景色も色も全く違う街になるので、すごく面白いなと思いながら見てました。
――でも、ちょっと怖い街でもありますよね。
久保史緒里 私が知らない世界だっただけで、歌舞伎町を全く知らない状態で歩いた私にとっては、本当になにもかもが新鮮に映りました。あれは何だろう? これは何だろう? と好奇心がありました。きっと歌舞伎町を知ってる方ですと、それが恐怖に見えるものもあったんだろうなと撮影を終えて気づきました。
不安だったアイドルがお芝居をするということ
――久保さんが今だから監督に聞いてみたいことはありますか?
久保史緒里 撮影中は緊張していたので、あまり自分から何かをお聞きすることはなかったのですが、自分の中でアイドルとして見られてしまうというのが、ちょっと怖くて気にしていたことでした。アイドルがお芝居をするというところで、私は監督にとって難しい人間だったのでは? と思ったのですが、実際どう感じていらっしゃったのか、お聞きしてみたいです。
内田英治 “アイドルだから”というのは1mmも考えたことないです。そもそもアイドルだからこうだという固定観念がないかもしれない。自分の作品に入ってもらったからには、役者として全力で力を合わせて良い作品を作るということだけでした。そもそもアイドルだから参加してもらうという発想もないですし、アイドルだろうがなかろうが、僕は才能のある人と仕事がしたいだけなんです。ただ、そのアイドル活動をしているとスケジュール的な難しさなどはあると思いますが、アイドルがお芝居をするにあたって、演技の世界だとマイナスなんじゃないかというのは、そもそも考え方が古いと思います(笑)。
久保史緒里 あはは。考え方が古い(笑)。
内田英治 アイドルと一口に言っても簡単にはなれないじゃないですか。特に人気のあるアイドルは相当な努力を重ねてきている人たちなので、そもそもポテンシャルが高いんですよね。だからスタート地点が高いところから始められる。努力の仕方が厚いからはっきり言って楽だと思ってます。
――それが垣間見えた瞬間もあって。
内田英治 たくさんありましたね。彼女に関してはこういう役が初めてだったということで、僕は彼女の横で「こうしてみようか?」とか、2〜3分のペースでチクチク言ってたんです(笑)。それをちゃんとその場で飲み込んで、自分なりに解釈して、それを吐き出すスピードも速かったです。
久保史緒里 自分の中ではそこを毎回考えて現場に入ってしまうことがあったので、改めてその現場を振り返ると、監督はそういう目線ではなく、いま仰ったように、1人の人間というのをすごく大事にしてくださっていたと思います。今回の経験があって今後グループに在籍しながらの出演となっても、申し訳ないなみたいな気持ちではなく、しっかり作品の一部として参加できたらと思いました。
内田英治 時代が変わったんだと思います。最近、いわゆるアイドルと呼ばれる方と仕事をしますけど、一昔前みたいにアイドルだからすごく爽やかな役をやらなきゃいけないとかではなくて、むしろアイドルを職業にしている人達の方が攻めた役にチャレンジしてくれますし、それにプラスしてやっぱりとても良いんですよ。一昔前のアイドルが演技に挑戦するということと、今の時代のアイドルが演技に挑戦するものの意味合いがすごく変わって来たなと思います。
――また1つターニングポイントとなるような、そういう作品に出演できましたね。最後に作品を楽しみにしている方にメッセージお願いします。
久保史緒里 絢香という人間はすごく不器用だなと思いながらも、生き様みたいなものを客観的に見た時に、私は格好いいなと思った部分がありました。歌舞伎町のカールモールというBARを起点にいろんな人に出会い、その中で絢香は決断をしましたけど、それは彼女の中の一つの覚悟だったと思います。その覚悟みたいなものを劇場で見届けてもらえたら嬉しいです。
(おわり)
【久保史緒里 衣装】
ワンピース 29,700円 (ジル スチュアート)
ジル スチュアート 03-5785-6454
スタイリスト 林かよ
ヘアメイク 森柳伊知
■作品情報
『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』
伊藤沙莉
北村有起哉 宇野祥平 久保史緒里(乃木坂46) 松浦祐也
高野洸 中原果南 島田桃依 伊島空 黒石高大
真宮葉月 阿部顕嵐 鈴木聖奈 石田佳央
竹野内豊
監督:内田英治 片山慎三 脚本:山田能龍 内田英治 片山慎三 音楽:小林洋平
プロデューサー:菅谷英智 藤井宏二 尾関玄 キャスティング:伊藤尚哉 撮影:岸建太朗 照明:尾崎智治 録音:平直樹 助監督:井手博基 美術:松塚隆史 衣装:百井豊
ヘア&メイク:板垣実和 編集:小美野昌史 サウンドデザイン:岩丸恒 アシスタントプロデューサー:藤田航平 宣伝プロデューサー:泉真人 制作担当:今井尚道
製作:「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」製作委員会(東映ビデオ S-SIZE Alba Libertas 吉野石膏)
制作プロダクション:Libertas 配給:東映ビデオ
©2023「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」製作委員会
- 1
- 2