THE JAZZ AVENGERSが、6月7日に丸の内コットンクラブで全国ツアー「THE JAZZ AVENGERS 1st Album Release Tour 2023」のファイナル公演を行った。

 4月に発売した1stアルバム『THE JAZZ AVENGERS』を手に、5月よりスタートした全国ツアー「THE JAZZ AVENGERS 1st Album Release Tour 2023」。そのファイナル公演が、6月7日に丸の内コットンクラブで催された。チケットはSold Out。THE JAZZ AVENGERSへの期待の高さが、その結果からも見えてきた。開演前の場内は、まだ喧騒に包まれていた。でも、会場が次第に暗くなるのに合わせて、そこには心地好い緊張感が生まれだす。幻想的なSEへ導かれるように、メンバーらが次々と舞台へ。おもむろに楽器を手にし、互いに顔を見合わせあう。ステージのフロントに居並んだ4人の管楽器陣。4人ともサックス奏者というのもTHE JAZZ AVENGERSの特色だ。

4本のサックスの高らかな叫び(演奏)を合図に、ライブは、アルバムの冒頭を飾った『Top Me Up!』からスタート。8人は華やかな演奏を通し、 この場に足を運んだ人たちを夢あふれる世界へ連れだした。4本の管楽器が一斉に鳴りだす音が、現実から切り離す心の扉を開けば、リズム隊が荒々しい演奏を叩き出し、気持ちを騒がせるビートを作り出す。色鮮やかな音が飛び交う演奏だ。それぞれに際立つ音の色を塗るソロまわしも印象的だったが、躍動するリズムを身体で感じながら、お互いに顔を見合い、音の呼吸を合わせるメンバーらの姿も見目麗しい。曲が進むごと、その場が華やかな舞踏会の場へ染まりだす。軽快に走るリズムの上で、それぞれの楽器陣が音を踊らせる。彼女たちは、コットンクラブという空間に大きな見えない五線譜を広げていた。その上で8人の奏者(走者)が、互いに競い合うように駆けながら。でも、しっかりと歩幅を合わせ、華やかな音を重ねあわせてゆく。冒頭から、この空間には気持ちを嬉しく踊らせるドラマが描きだされていた。

ドラムロールを合図に、楽曲は、心地好く跳ねだした。フロア中から起きた温かい手拍子、メンバーらは『One by One』に乗せ、この場にきらびやかな輝きが交錯する都会の夜空を映し出す。リズム隊と管楽器陣の巧みに絡み合う演奏が心に翼を授け、華やかな音の風に乗せ、夜空に向かって羽ばたく気持ちにしてゆく。ときにムーディーに。でも、ときには刺激的な音色を注ぎ込むメンバーたち。心を踊らせる音の風を受け、場内中の人たちも気持ちを嬉しく騒がせていた。メンバーどうしの心地好い音色飛び交うソロまわしにスリルを覚えたのは、流れるように弾む音の上で、8人が互いに音の駆け引きを楽しんでいたから?! THE JAZZ AVENGERSはこの空間を、心騒がせる都会の夜に染め上げていった。

短いMCをはさみ、演奏は一気に妖艶な様を描きだす。ねっとり艶めく4色のサックスの音をゆったりとスウィングする演奏に重ねながら、彼女たちは『Michel Tokyo』を奏でだす。大人の女性の色気漂う艶めいた音色に酔っていたら、急に鞭をしならせて刺激的に攻めだすなど、彼女たちは、巧みに恋の駆け引きをするようにいろんな音の手札を示していた。軸にあるのは,、甘く艶めいた音色たちだ。エレピと管楽器陣が優しく音を掛け合い、重ねあう様は、心を嬉しく惑わせる。きっと、絶世の美女たちにこんなアプローチでせまられたら、絶対に落ちてしまう。気高い紳士たちをメロメロにする女スパイたちではないが、心へスーッと寄り添いながらも、いつしか身体中にねっとりとした音の手で絡みつく彼女たちの演奏に抱きしめられていたら、間違いなく心が溺れてゆく。後半に起きた管楽器陣の掛け合いが、情熱を抱いた女性たちの嫉妬心をぶつけあうバトルのようにも感じていたのは、筆者が男ゆえの嬉しい錯覚か。終盤に向け、ふたたび優しく寄り添うようにねっとりとした音の手で絡み合う彼女たち。麗しきレディーたちに、少しの情熱と挑発めいた演奏で煽られ、気持ちがずっと騒いでいた。

(PHOTO:梛野浩明)

 フロア中から起きた大きな拍手。情熱的で妖艶な演奏とは裏腹に、MCでは、意外と緩い口調で言葉を述べていた。ここでは、この日から新衣装姿で演奏していたことも伝えていた。

 パチンと弦を弾く音を響かせながら、重厚なベースの音が跳ねだした。何かが起きそうな、スリリングな空気を作り出す芹田珠奈のベース音。緊張感を抱いた中にも、どこか優しさを覚えるのは、彼女の性格が現れ出たもの?! そこへ低音を効かせた管楽器陣の音が鳴り出すと同時に、楽曲は、一気にファンキーかつソウルフルに踊りだした。うねるような音を上げて響くベースへ、しっかりと絡みつくように7人の演奏が重なりだす。ミドルメロウな曲調の上で、管楽器陣がソウルフルな演奏を重ねてゆく。『Pain or Pleasure』。ムーディーなのに、心地好い緊張感を覚える楽曲だ。切れ味鋭いソリッドなビートの上で、竹田麻里絵の弾くエレピの音色が軽やかに踊れば、米澤美玖の吹くテナーサックスの音が、強く自己主張してゆく。この曲では、ベースと他の楽器陣が、ゆったりとしたグループの上で熱い駆け引きをしながら、音を交わし合う様を味わえる。挑発するようなビートを作りだすリズム隊。途中、激しいスラップを用いたベースのソロプレイも飛び出せば、彼女たちの作りだす重く跳ねたグループに刺激を受けた観客たちが、椅子に座りながらも大きく身体を揺らし、舞台の上からあふれ出す刺激をしっかりと受け止めていた。終始、太い弦を弾きながら、低音の効いたファンキーな音色を響かせていた、ベースの芹田珠奈。その演奏に気持ちがずっと刺激を覚え、身体を揺さぶっていた。

 優しくリズムを刻む川口千里のドラム。そこへアルトサックが優しい音色を重ねだす。THE JAZZ AVENGERSは『All The Way』を通し、目の前に壮麗な景色を描きたす。果てに見える美しい理想郷へ向かい、彼女たちの優しくスウィングする演奏に合わせてゆっくりと、でも、しっかりと前を向いて歩き続けたい。そんな気分だ。あえて少ない音数で、その一つ一つの音色に深い想いを映しながら、彼女たちは太い音符の絵筆で、目の前に、夢に描いた景観を映しだす。ゆったりとスウィングする演奏に乗せ、月夜に照らされた道を、温かな音色の光に照らされながら進んでいくと、その先には朝焼けに輝く綺麗な景色が広がってゆく。そんな気分に浸っていた。終盤のドラムソロも、嬉しく気持ちを騒がせた。4本の管楽器が織りなす重厚なハーモニーも、壮麗な景色を描き出す嬉しい要素になっていた。

甘い甘い音色が、心を惑わせる。優しく伸ばした音の手をギュッと握ったとたん、彼女たちが、甘いファンタジックな世界へグイッと引き入れた。瀬川千鶴の奏でる丸みを帯びたギターの音へ、同じように甘い音色で寄り添う中園亜美の吹くソプラノサックスの音色、ランデブーしたその音たちは、観客たちをドリーミーな世界へぐいぐい引き寄せてゆく。『Mima Mounds』、なんて夢見心地を覚える楽曲だろう。この演奏に触れている間、ずっと8人の作りだした音のゆりかごの上で優しく揺られている気分だった。一つ一つの音色が、まるで子供をあやす優しい母親の手のようだ。いや、それは彼女たちに対して失礼か。日々の戦いに疲れた戦士たちを優しく音で抱きしめ、しばしの安らぎと微睡みを与えてゆくようだ。ときに躍動した演奏も加え、癒しや安らぎの中へさりげなく活力を与えてゆくのも嬉しい。しばし微睡みを覚えながら、『Mima Mounds』の演奏中、ずっと彼女たちに両手で優しく抱かれていたような温かい想いに包まれていた。

川口千里による、雷鳴の如き猛々しいドラムの演奏か炸裂。彼女は、身体中から沸き立つ情熱をすべてぶち撒けるように、激しい演奏を叩きつける。さぁ、ここから一気に気持ちを華やがせて駆けだそうか。4本の管楽器が勇壮な音を鳴らすのを合図に、楽曲は『Raise Your Flag』へ。管楽器陣の吹く一つ一つの異なる音符の弾丸が、勢いよく胸を貫く。強靱なリズムとは裏腹に、ギターは甘く優しい音を響かせ、雄大に広がる景観を描き出す。途中には、竹田麻里絵の弾くシンセとギターが速弾きでバトルを行う場面も登場。そこからは、シンセの音が雄大な景観を描けば、そこへギターが鋭利な音を重ねて輪郭を与えてゆく。2人の熱いセッションへ、管楽器陣も情熱を抱いた音の風を吹かせて参加。何時しかその演奏は、大作映画のバトルシーンを彷彿させる勇壮な世界を作りあげていた。クライマックスへ向けて大きな展開を描きだすスリリングな場面にも似た演奏が、気持ちを沸き立てる。この緊張感がとても心地好く、身体を奮い立てる。そして…。

(PHOTO:梛野浩明)

THE JAZZ AVENGERSが、この日のライブのクライマックスに持ってきたのが、『Buena Vista』だ。軽快にステップを踏みながら演奏をする管楽器陣の動きが瞼へ強烈に焼きついた。何よりこの演奏が、じっとしていることを許さない。フロアでは、椅子に座りながらも、高く拳を突き上げ、舞台の上にエールを送る人たちがあちこちに登場。みんながその場で身体を揺らし、大きなダンスフロアで軽やかにステップを踏みながら踊る気分を夢想していた。メンバーたちも、互いに駆け引きをしながらパーティーなグループを作りあげることを楽しんでいる。彼女たちの動きに合わせて起きた熱いクラップ。華やぐ・騒ぐ、踊りだす。ここは、感情のストッパーを外して踊らせる、最高に刺激的で楽しい大人の社交場。気取ったスーツなど脱ぎ捨て、無邪気で無鉄砲だったあの頃の少年や少女に気持ちを戻し、8人と一緒にはしゃごうじゃない。『Buena Vista』は、この場にいる人たちを、眩しい青春の景色へと連れ出す最高にエモいパーティーチューン。現実など全部消し去り、騒ぐ気持ちのまま、トロピカルなダンスチューンに身を任せ、8人と一緒に踊っていようか。「スウィングする」。その言葉の意味を、THE JAZZ AVENGERSが、この場を通してレッスンしてくれた。そんな素敵な音楽のレッスンなら、何度だって受けたい。

やまない熱い声と拍手。ふたたび、メンバーがステージへ。最後を飾ったのが、配信シングルとしてもリリース中の『Unite』。目の前に広がりだしたのは、キラキラと輝く眩しい桃源郷のような世界。気持ちが華やぎだす。希望に満ちた光を全身に浴びながら、その演奏を推進力に、今は夢中になってはしゃいでいたい。メンバーらが大きく左右に振る手の動きに合わせ、フロア中の人たちも手を振り、クラップをしながら、華やいだ会場の中、一人一人が無邪気にはしゃいでいた。舞台の上から次々とカラフルな音符たちが滑るように流れてくる。途中、メンバーたちの演奏に、観客たちが声を上げて掛け合う場面も登場。誰もが心を裸に、情熱的な踊り子と化したメンバーたちの熱い、ときに甘くメロウな音色の誘いに乗り、心地よく気持ちをスウィングしていた。楽しい、何時しかここは最高のパラダイスに染め上がっていた。誰もが心を裸に無邪気にはしゃぎあうカルナバルが、ここに生まれていた。

次は、追加公演として発表をした7月4日、横浜ビルボードを舞台にしたライブ。その興奮をふたたび味わうためにも、また足を運びたい。(TEXT:長澤智典)

セットリスト

Opening Video

『Top Me Up!』
『One by One』
『Michel Tokyo』
『Pain or Pleasure』
『All The Way』
『Mima Mounds』
『Raise Your Flag』
『Buena Vista』

-ENCORE-

『Unite』

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