INTERVIEW

酒井大地×原愛音

「自分とリンクさせながら観てもらえたら」映画「僕ラー」撮影の舞台裏に迫る


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:23年05月31日

読了時間:約11分

 俳優の酒井大地と原 愛音が、現在公開中の映画『僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。』(通称「僕ラー」)に出演。酒井は主人公の本江透(以下、トオル)、原はトオルの同級生・壁花凛を演じる。同作は製作総指揮に石橋冠氏(『人生の約束』監督)、本多繁勝氏が監督を務め、西永貴文氏が脚本を手掛けた、富山県射水市を舞台に、地元の危機を救うため奮闘する男子高校生3人組の成長を描いたハートフルコメディ。インタビューでは、お互いの印象、撮影の舞台裏、酒井と原の2人が宝物にしているものについて話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

台本を読んでワクワクが強くなった

――出演が決まった時の心境は?

酒井大地 この作品に出演させていただけることが決まって嬉しかったです。台本を読ませていただいてすごく面白いストーリーだなと思い、どういう感じで撮影していくんだろう、とワクワクが強くなりました。

村上順一

酒井大地

――主演というところでプレッシャーはありましたか。

酒井大地 最初はプレッシャーもありました。けどあんまり気負いすぎてもよくないので、監督や共演者、スタッフのみなさんに支えていただいて、クランクインしてからは楽しく撮影できたので良かったです。

――トオルを演じるにあたって事前に準備したことはありますか。

酒井大地 主に方言です。クランクインする前に、共演したお笑いコンビ雷鳥のお姉ちゃんから方言でセリフを収録したテープをいただいたので、それをたくさん聞いて練習しました。

――酒井さんは福井出身。舞台となった富山県と割と近いですが、言葉は全然違うんですか?

酒井大地 同じ北陸なので最初は似てるのかな? と思っていたのですがイントネーションや語尾がけっこう違いました。

――原さん、出演が決まった時の心境は?

原 愛音 脚本を読ませていただいた時からワクワクが止まらなかったです。そして、監督の富山好きが、脚本からひしひしと伝わってきました。私は富山に訪れたのは初めてで、詳しく知らなかったのですが、脚本を読んですぐに「富山に行ってみたい」と思いました。

村上順一

原愛音

――方言でのセリフは原さんも大変でしたか。

原 愛音 大変でした。私は動画サイトなどで富山弁を調べたのですが、わからないことも多かったので、これはもう聞くしかないと思いました。雷鳥のお姉ちゃんが方言指導をしてくださったので、現場で聞きながら覚えました。

――富山での撮影はいかがでしたか。

原 愛音 初めて行く場所だし、地元の方も撮影でご一緒にするということだったので、どういう風にコミュニケーション取ろうとか、少し不安なところはあったんですけど、現場の暖かい空気感に支えられ落ち着いてお芝居ができました。

――共演したヨシキ役の長徳さん、アゲル役の宮川さんは現地の方なんですよね。映画の公式SNSのヘッダーにも使用されているお写真、自然体ですごくいい雰囲気ですね。

原 愛音 この写真は私服で、撮られることを意識してない1枚なんです。オフショットとしてどこかに使うのかな? と思っていたのですが、SNSのヘッダーや資料にも使われていて驚きました。

――キャストの皆さんとはどのようにコミュニケーションを取られました?

酒井大地 初顔合わせから2〜3時間で監督と僕、長徳くん、宮川くんで銭湯に行きました。何を話したのかはあまり覚えてないんですけど、お湯が熱くて、3人で「うわ! 熱い」とか言いながらはしゃいでました。

――原さんはその時どうされていたんですか。

原 愛音 私は女湯にいたのですが、3人の声は聞こえてきました。なんかやってるな、楽しそうだなみたいな。本当にお湯は熱くて体が燃えるかと思いました(笑)。

――体が燃える(笑)。ちなみにお湯の温度は何度くらいあったのでしょうか。

酒井大地 48度と聞きました。

原 愛音 監督は何度も温泉に行かれてるから、全然平気と仰ってました。

酒井大地 監督は「2分はお湯に浸かれる」って。

――その温度で2分はすごいですね。さて、撮影を通してのお互いの印象は?

酒井大地 原さんが撮休の日も現場に来られているのを見て、お芝居や作品作りに対してすごく熱量のある方だなと思いました。あと、撮影の中で夢を語るシーンがあるんですけど、僕が演技に苦戦していた時も「大丈夫、大丈夫」と声を掛けていただいて、すごく優しい人だなと思いました。

――ちなみにどんなことに苦戦されていたのでしょうか。

酒井大地 監督から体のしぐさで恥ずかしい雰囲気を出してほしいというリクエストがありました。足をモジモジしたりする感じなんですけど、それを表現するのに僕はちょっと苦戦してしまいました。

――原さんから見た酒井さんの印象は?

原 愛音 3人でわちゃわちゃしている印象が最初あったのですが、泉谷(しげる)さん演じる松蔵さんが亡くなるシーンは、現場も雰囲気がガラッと変わって、3人でいる時のわちゃわちゃしてる感じとはまた違う酒井くんがいました。空気感に合わせて演じていたのが印象的で、切り替えがとても上手い人なんだと思いました。

――ちなみに泉谷さんはどんな印象でした?

酒井大地 泉谷さんは現場のムードをすごく明るくしてくれます。お芝居はもちろん、どうやったらうまく現場を明るくできるかなど、学ばせていただきました。

――パブリックイメージにあるような感じではなくて。

原 愛音 私は撮休のとき泉谷さんと一緒にいたんですけど、テレビなどで見るイメージとは全然違いました。私にもすごくフランクに話しかけてくださるので、すごく優しい方だなと思いました。

酒井大地 すごく暑かったから団扇(うちわ)で仰いであげたりしてたよね。

原 愛音 泉谷さんがお布団に入るシーンがあるんですけど、夏でかなり暑かったので、私が足元からずっと仰いでました(笑)。

2人の宝物とは?

村上順一

酒井大地×原愛音

――本作の撮影を通して発見や気づきはありましたか。

酒井大地 この映画は地元のスタッフさんも多く参加されていて、僕が経験してきたこれまでの撮影とは雰囲気が違いました。これまでの僕は「演じる」ことに重きをおいていたのですが、地元のスタッフさん仕事を見ていて、演じるだけでなく改めて映画、作品を作る楽しさを学べました。

原 愛音 そのお話に通じるのですが、花凛は要所で登場するので、2〜3日撮影が空くことがありました。休みの日は自由時間だったのですが、1人で行動するのは寂しかったので、勉強を兼ねて撮影現場に行って、ちょっと撮影のお手伝いみたいなことをさせていただきました。今まで自分は演じる側、サポートして頂く側だったのですが、スタッフさんは裏でこんなことをやっているんだとか、知らなかったことが知れて、いい経験ができましたし、発見がありました。

――お2人が思う印象的なシーンは?

酒井大地 僕はお風呂のシーンが印象に残っています。男3人で頭や背中を洗うシーンがあるんですけど、監督から「3人で動きを揃えてほしい」というリクエストがあったので、このセリフが終わったら右手で洗って、この台詞が終わったら左手で洗うみたいなことを一つひとつ決めてやっていました。セリフを言いながらだったので難しかったです。

原 愛音 私は花凛の登場シーンが印象に残っています。船に乗って登場するのですが、インパクトがあって新鮮でした。

――役を演じてみて、どのような人物だと感じましたか。

原 愛音 花凛は3人から一歩引いて俯瞰して見ているような、同級生だけどちょっと大人な感じの印象がありました。そして、上京することを目指しているところとか当時の自分とリンクするところもあったので演じやすかったです。私も高校生までずっと福岡で、卒業してから上京してきたので、東京への憧れがあるところなど、花凛ちゃんと同じだなと思いました。

――酒井さんはトオルと重なると感じたところは?

酒井大地 トオルは自分自身にも共通点が多いなと思いました。福井県に住んでいた頃は田んぼ道を自転車で走り回ったり、学校が終わったら川に行くみたいな少年時代だったので、どこかトオルと似てる部分はあるなと思いました。

――今回、タイトルにもあるように、ご当地ラーメンが色々出てきますね。けっこう食べました?

原 愛音 現場には付いて行ったのですが、私はそんなに食べてないんです。

酒井大地 僕は撮影で早朝からラーメンを食べてました。ヨシキを演じていた(長徳)章司くんは、朝から3杯も食べているのを見て、すごいなと思いました。

原 愛音 すごい、そんなに食べてたんだ!

酒井大地 章司くんは1つのカットでラーメンを食べ終わっちゃって、新しいラーメンが来るのを待つみたいな時間もありました。

――ラーメン待ちですね(笑)。さて、お2人から見た富山の魅力はどこに感じてますか?

村上順一

酒井大地×原愛音

原 愛音 人の温かさです。初めての場所ということもあって最初は不安もありましたが、エキストラとして地元の方も撮影に参加されていたんですけど、参加されていない方も「なんか撮影しようと?」みたいな感じで気軽に話しかけてくださるんです。そういったやり取りもあって、ここには温かい人たちしかいないと、すごく富山の方々が好きになりました。

酒井大地 僕も射水市の人たちはすごく温かいなと思いました。撮影が始まる前に「おはようございます!」と挨拶すると元気よく返してくださったり、道を挟んで向かいの家の人同士で会話しているのをみて、町の人同士でつながっていていいなと思いました。

――人の優しさに触れることができて、癒されて帰ってきたんですね。映画にはお祭りのシーンもありますが、見られました?

原 愛音 お祭りの日を撮影の最終日に合わせていたので、生で見ることができました! お祭りが行われている中で撮影したんですけど、3年ぶりの開催ということもあり、人がたくさんいてすごかったです。

酒井大地 その日、僕たちは午前中に撮影が終わったので、お祭りに4人で遊びに行きました。みんなで金魚すくいをやって、それぞれ1匹ずつすくうことができて、アゲル役の(宮川)元和くんに「この金魚、“あげる”!」と、僕らの金魚を託しました。僕はその金魚の一匹に「トオル」という名前をつけて、いま元和くんのお家で育ててもらってます。

――さて、タイトルにもある埋蔵金と掛けてお2人の宝物、大事にしてるものはありますか。

酒井大地 たくさんあるんですけど家族です。家族が僕のことを支えてくれているのを実感していて、大切にしているものの一つです。

原 愛音 私も家族です。一人で上京してきたので、より家族のありがたみを今すごく感じています。きっと何があっても私の味方をしてくれるのが家族なので大事にしていきたいですし、これから色々恩返しをしていきたいなと思っています。

――ちなみに埋蔵するとしたら、お2人はどんなものを埋めますか。

酒井大地 僕はギターとスニーカーです。 ギターは2ヶ月前ぐらいから始めたんですけど、ONE OK ROCKさんの「欲望に満ちた青年団」という曲を練習していて、休みの日は5時間弾くこともあるくらいハマっています。始めたきっかけは学校の授業だったのですが、そこで触ってから楽しいなと思いました。

――原さんは?

原 愛音 私はアニメが大好きなので、アクリルスタンドとかアニメのグッズを埋めると思います。特に『進撃の巨人』をずっと推していて、一番好きな作品なんです。

――最後にお2人が思う本作の見どころを教えてください!

原 愛音 この作品を観終わった後、すごく心が温かくなりました。ほっこりもしましたし、男子3人から元気をもらえる作品だなと感じました。皆さん、お仕事とかで疲れていると思うんですけど、ふとした時にこういう映画を観て、「よし、頑張ろう」とか「ラーメンを食べに行ってリフレッシュしよう」とか、そういう気持ちになってもらえたらいいなと思っています。

酒井大地 映画の中で「何でもやってみなければわからん。すぐ無理とか言うな」という松蔵さんの言葉があるんですけど、特にまだ夢や目標がない方、夢を諦めかけてる人、夢をいま頑張って叶えようとしている方に観ていただきたい作品です。男子3人と花凛の将来のことなど、自分とリンクさせながら観てもらえたら嬉しいです。

(おわり)

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