LUNA SEA楽曲の多様性

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LUNA SEAの音楽性、独創性が最も色濃く表れたシングル「ROSIER」(1994年発表)

 どの楽曲もLUNA SEAらしさを保ちながらも、多様なアプローチの楽曲がある。一辺倒の手法のみであってもオリジナリティを出すのは難しいが、LUNA SEAは楽曲毎に様々なアレンジや音楽性をもってして、そのオリジナリティを表現している。独自性に欠いた場合、多様なアプローチを持ち出しての自身の音楽性を統合する事は難しい。

 ストレートでシンプルに聴こえるが、細かく仕事が施されている楽曲「Tonight」や「TRUE BLUE」の様に、一つの言葉を、同一のメロディーで繰り返す、サビのワンフレーズがその楽曲の全てと言わんばかりのアプローチ。しかし、何度もその曲を聴くと、バンドアンサンブル上では実に様々な展開をしている。リフレインされるギターフレーズ(注釈=曲中、同じ演奏が続くパート)の背後では別の複数のギターが縦横無尽なプレイをしていたり、セクション毎にベースラインが微妙に変化したり、ドラムのアクセントが巧妙に異なっていたりと、強印象のメッセージの歌を自然に際出たせている。

 耽美(たんび)な世界観が広がる「NIGHT MARE」ではそれこそ夢に出てきそうなベースライン、中世の劇場にトリップする様な感覚、悲劇をダイレクトに音にしたかの如きリードギターは、ビジュアル系ロックのアプローチの深い解釈を感じる事が出来る。

 一方、「SHINE」という楽曲では、おおよそビジュアル系サウンドとは表現できないアプローチをみせている。リズムにのせて語る様な歌と、柔らかく響くコーラスパート。タイトルよろしく、輝く様な音階と音数で奏でるギターソロ。フレンチ・ポップの様な要素も各所にある。ロックバンドサウンドでありながら、ポップで味わい深い曲。それでいて、「LUNA SEAらしさ」が明確にある。

 「STORM」では、歌の抑揚は控えめながら、絶妙に練られた弦楽器のアンサンブル、歌詞をものの見事に表現したギタープレイ。アップテンポながらも淡々とした印象と共に、激しさと共に過ぎ去って行く様なサウンド。その歌詞による意味は自然と溶け込み、意図的に盛り上げる様な狙いとはまた違った展開でのサビは非常に特徴的だ。これらもあまり類を見ない。

 能や歌舞伎、日本の舞台芸術の様な雰囲気を歌唱から彷彿とさせる「END OF SORROW」のボーカル。LUNA SEAサウンドもさることながら、「RYUICHI節」が全開だ。「思わずマネをしたくなる様な歌い方」というのは、オリジナリティが溢れてるという証明ではないだろうか。

きっかけとなった代表曲「ROSIER」

 低音域ボーカルからのサビのハイトーン、キレキレの「キメ」、前のめりなシンコペーションリズムの嵐、ギターのロングトーン、正にRockバンドといった攻撃的疾走感のベースライン、爆発的なダイナミズムとメリハリの効いた巧なドラムプレイ。LUNA SEAの魅力が存分の代表曲「ROSIER」。独自性という点でも、こういったアプローチの作品は国内のみならず、海外でも珍しいのではないだろうか。

メンバーの音楽的アプローチ

 特有のグルーヴ感がLUNA SEAにはある。それは、攻撃的でありながらも安定したベース・Jのプレイ、そしてドラムス・真矢の巧みなプレイと抑揚のコントロールによって支えられている。LUNA SEAのグルーヴ、リズム的なノリの気持ち良さは、周辺のV系ロックバンドとは明らかな一線を画しているとすら感じてしまう。

 各楽曲で様々な奏法をもって、調和的なアンサンブルを構成するINORAN、本能的に突き刺してくる様なプレイを見せ場では確実に決めるSUGIZO。LUNA SEAのギタリストである両者からは、プログレからパンク、ヘビメタ、エレクトロ派生の音楽やアンビエントな音響解釈、その他幅広い音楽的バックボーンの存在、音楽そのものに対する敬意がみられ、その多岐に渡る要素はLUNA SEAの多様な音楽性をフルレンジで支えている。

 LUNA SEA、バンド、音楽のみならず「オリジナリティ」を持ち、それを維持し表現し続けるという事は難しい。しかし、それを実行する事は共感する者の強力な目標や道しるべとなりうる。そしてそれを経て、また新たな独創が次々と生まれ、明るい未来が切り拓かれていくのではないだろうか。

 ロックフェスを主宰するという企画を打ち出したLUNA SEA。25年の間で示して来たその音楽の独創性は、ロックシーンに大きな影響を与えている。その彼らが主宰するフェスは間違いなく新たな方向性を見出すものとなるであろう。  【平吉賢治】

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