2021年6月にEP『透明な付箋』でソロアーティストデビューを果たした高橋李依が2023年2月26日、東京・LINE CUBE SHIBUYAで1st LIVE「Cinderella popcorn」を開催した。

 シャンデリアをほうふつとさせる照明がステージ上に備え付けられるなど、『シンデレラ』の世界観を連想させるセットに、詰めかけたファンは開演を今か今かと待ちわびている様子。ライブの幕開けを告げる時計の音がけたたましく鳴り、続くテンポのいいBGMに客席からは自然と手拍子が沸き起こった。

 バンドメンバーに続いて、シンデレラをイメージした青いドレス姿で登場した高橋は「こんばんは~!『Cinderella popcorn』へようこそ!」と笑顔で叫び、青いペンライトが揺れるなかで「反省会」を歌唱。最後は胸に手を当てて、オーディエンスに向けてお辞儀した。さらにこぶしを振り上げながら「U撃つ」を投下。ひるがえすたびにキラキラときらめくドレスに、ファンはくぎ付けだった。

高橋李依(撮影=高田真希子)

 最初のMCでは緊張気味に「どの曲も時間をかけて作った大事な曲です」と切り出し「思い返すのは後でいいので、いまの時間を楽しんでください!」と本ライブの楽しみ方を伝授。さらに高橋さんが提唱している「RIE(りえ)」を紹介。それぞれ「理性」、「労(いたわ)り」、「エネルギー」を胸にライブを楽しんでほしいという旨を、来場者に向けて伝えた。続いて「普段なかなか言えないことを、自分で歌って自分で昇華させたかった曲」という「不健康社会」を赤いペンライトに囲まれるなかで熱唱。心のさけびを声に乗せて会場に解き放った。

 次に披露したのは「最初はみんな裸で生まれてくるのに、いまでは服を着てちゃんと生きてるよね」という気持ちを体現した「BABURU」。包み込むような優しい歌声を響かせ、そして最後ははにかみながら親指を加える仕草で最高の「バブみ」を見せた。「ひとつがいマグネティック」では一転、飛び跳ねるように激しく動き回る高橋。めくるめく楽曲のコントラストにオーディエンスは酔いしれていた。

 バンドメンバーによるしっとりとした演奏(インスト)のあとは、衣装替えをした高橋がステージにふたたび登場し、生朗読パートへ突入。

高橋李依(撮影=高田真希子)

 自分に存在意義を感じていない「私」が何ともなく入った本屋で見つけたのは、昔よく読んだ絵本だった。まるで自分のような情けない主人公に憤慨する「私」。本を閉じると、いつの間にか背後にひとりの女の子が立っていた。その正体は「シンデレラ」。物語の結末を知っている「私」はシンデレラに待ち受けている運命を伝えようとするが、彼女は「自分の足で進みたい」と拒否してしまう。「自分を変えるための力を貸してほしい」とお願いされた「私」はページをめくり、シンデレラを魔法使いに出会わせてあげるのだった。きれいなドレス姿に変身したシンデレラは「私」にお礼を言うと、「たとえ結末が決まっていても、そこにたどり着く過程を一生懸命生きてみたいの」と力強く宣言した。そして「もうひとつお願いがあるの。私のことを、ただ近くで見守っていてくれる?」と微笑むと、「私」は反射的にうなずいた。シンデレラは「私の物語はほかの誰でもない、あなたに見てもらいたいな、って思ったの。そして、私もあなたの背中を押すことができるのかもしれない。そのときは私があなたのことを見守るから」と話し、その場から消えていった。シンデレラとのやり取りを終えいつの間にか本やに戻っていた「私」は、「次のページをめくる力がわいてきた。彼女が見ている私の物語、楽しんでやるか!」と笑顔で前に進みだすのだった。

 ステージ上のソファやベッドに座り、朗読の合間に曲を披露していく。胸に手を当て、スポットライトを浴びながら「0のひと匙」、さらに「ハウメニィ」では高音ボイスを披露。キーボードのきれいな音色に合わせて「カメレオンシンドローム」を切なく、そして最後は客席にクラップをうながしながら「アオハルインクルージョン」を笑顔で歌い上げた。

 朗読を終えると「『Cinderella popcorn』をテーマに、楽曲ごとの世界観を生かした物語を作ることができてよかったです。家に帰ったら、朗読の内容を思い返してもらうと、明日からの“1ページ”になると思います」と語った。

 ライブは早くもラストスパートへと突入。「『みなさんの魔法使いになれればいいな』と思い、ライブを作ってきた」と明かし、残り2曲を披露していく。

 まずは、自身初めてのアニメタイアップ曲「共感されなくてもいいじゃない」。アニメ『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』OPテーマの同曲、主人公・アイリーンを「人生のなかで出会えて本当によかったと思う存在です。いや、もはや概念です(笑)」と表現するほど思い入れの深い作品、楽曲となったようだ。歌う前に水分補給をしっかり取り、アイリーンのドレスの色でもある青いペンライトの海に向け、力強い歌声を届けた。

 そして、間髪入れずに本編最後のナンバー「最つよワタシイズム」へ。「ライブで絶対に盛り上がると思って作った」という同曲を、人さし指を突き上げながら熱唱し、充実感に満ちた表情で手を振りながらステージをあとにした。

 迎えたアンコールではライブTシャツ姿で登場。「忙しいなか集まってくださった関係者のみなさん、バンドメンバーのみなさん、そして応援してくださるみなさんと記念に写真を撮りたいんです!」と客席バックに記念写真を撮影。カメラマンがOKを出した後も「もったいないから別パターンも!」と「1st LIVEを記念した『(指で)1のポーズ』」を取って撮影に臨んでいた。

高橋李依(撮影=高田真希子)

 ライブの本編で持ち歌全てを披露してしまったのだが、ここで高橋は「今回のライブにも通じる『次のページをめくる力』というキーワードにぴったりの曲を歌わせていただきます」と切り出し、坂本真綾さんの「色彩」を披露。「次のページをめくりたいと思ったとき、自分を支えてくれた曲」という同曲を、心を込めて歌唱した。

 ライブは残すところ最後の1曲。「明日から次のページをめくるのが楽しみになる魔法がかけられるように」と「カメレオンシンドローム」もう一度歌い上げた。

 これにてすべての曲目が終了。自身のTwitterで公演に向けた「しおり」を公開するなど、「絶対に公演を成功させてみせる」という努力が結実した瞬間を迎え、あふれ出してきた感情と涙を必死でこらえる高橋。すべてを出し切った彼女をバンドメンバーが温かく支え、大きく両手を挙げて客席からの声援に応えた。

 最後に高橋が「これからも私が次のページをめくるときは、そばにいてください!」と叫ぶと、場内はこの日一番の大きな拍手に包まれた。

ライブの模様(撮影=高田真希子)

 なお、今回のライブの模様にインタビューとメイキング映像が追加された特別番組が3月25日に「フジテレビTWO ドラマ・アニメ」で放送されることが発表された。

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