2022年のPassCodeは“緊迫緩和”? 4人が今年を振り返る
INTERVIEW

PassCode

2022年のPassCodeは“緊迫緩和”? 4人が今年を振り返る


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:22年12月22日

読了時間:約13分

 2022年2月12日自身初となる日本武道館公演完全ソールドアウトを果たし、国内シーンを牽引するラウドクイーンへと飛躍的な成長を遂げたPassCodeが21日、約1年ぶりとなる新作「REVERBERATE ep.」をリリース。初回限定盤Aには、5月に開催された日比谷野外大音楽堂のライブ映像を、初回限定盤Bには9月に開催された『PassCode Tour 2022のKT Zepp Yokohama』公演のライブ映像が完全収録されている。

 今回リリースされた「REVERBERATE ep.」は、様々な経験を積み、野外ワンマンライブで披露された「SIREN」をはじめ、有馬えみりのシャウトではない歌声も初収録された楽曲など、歌にフォーカスしたPassCodeの新たな一面を感じられる作品に仕上がった。インタビューでは、「REVERBERATE ep.」の制作背景について、2022年の活動を振り返りながら4人の今に迫った。【取材・撮影=村上順一】

武道館前、武道館後の意識変化

――2022年を振り返るとどんな1年でした?

大上陽奈子 今までのPassCodeの続きではありますが、新たなスタートを切れた1年だったなと思います。去年が武道館に向けてツアーやイベントを組んでいて、 武道館に向けてチーム全体が動いてるなという感じがすごくしていました。それもあって、武道館でのライブ中にこれからが楽しみだなって思ったのを覚えています。

村上順一

大上陽奈子

――ライブ中に思ったんですか。

大上陽奈子 そうなんです。 武道館公演はツアーファイナルみたいな感覚もあったんですけど、今までとはちょっと違いました。今までのツアーファイナルは、長かったツアーも遂に最後まで辿りついたみたいな感覚があって、達成感があるんです。でも今回、武道館公演をやっている最中にまだまだ行けるみたいな感覚になりました。 ライブをしながら未来のことがよぎった瞬間というのは、私は初めてで、それがすごく新鮮でした。感極まるというよりも、明るい未来が勝ってしまい、これはPassCodeに新たな風が吹いたなと思いました。

――有馬さんの2022年は?

有馬えみり  私は1年ちょっと前にPassCodeに加入したのですが、 PassCodeに入るまではダンスも未経験に近かったんです。いろんなライブの映像を見ると、まだ1年ぐらいしか経ってないのに、すごく過去の自分を見ているようで、濃密に練習していたんだなと感じる1年でした。

村上順一

有馬えみり

――着実にレベルアップしている感覚があるわけですね。

有馬えみり はい。武道館ライブはダンスの先生に来ていただいたりして、ダンスに力を入れて練習していました。5月から10月にかけてはいつも通りの練習といった感じで楽しみながらやっていたような感じなんですけど、5月の映像を改めて見ると気になるところがあったりして。ここからもっともっと頑張ってパフォーマンス力を上げたいなと思いました。とはいえ、EPの初回限定盤AとBには、5月の日比谷野音と9月のKT Zepp Yokohamaのライブがそれぞれ収録されているので、ぜひ観てもらえたら嬉しいです。

――南さんは?

南菜生 私の2022年は鎧を脱ぐと言いますか、素の状態で過ごせた1年だったなと感じています。えみりが加入する前、武道館を経験するまでは、PassCodeはカッコいいと思ってもらわなければいけない、MCでも何か納得してもらう、今日来て良かったと思って貰えるようなことを言葉で伝えなければいけない、と思いながらライブをすることが多かったんです。

南菜生

――実際、MCなどで言葉の強さを感じていました。

南菜生 楽しんでライブをしているというよりは、頭を使ってやっていたというのが強かったです。私たちを観に来てくださった方々から、これからもPassCodeのライブを観たい、PassCodeが続いて良かったと思ってもらえたのが、武道館までの活動だったなと感じています。武道館以降は自分も楽しんでライブをやろうと思って、ファンの皆さんが喜んでくれること、PassCodeがやりたいこと、そして、自分も楽しいと思えることを1年考えて過ごしていたので、すごく自分らしくいられたなと思います。

――変化があったわけですね。「ぱすこーど」もその一環ですか?

南菜生  それが素というわけではないんですけど、 いろんなことに挑戦しやすくなったというのがあります。 武道館までで「これがPassCodeです」というのを提示できたと思っていて、ある程度自分たちがやってきたこととか、PassCodeというものがある程度確立できたと思っていて、これまでやれてなかったこと、遊びっぽいことにも気軽にチャレンジできるようになったという感じです。

――高嶋さんの2022年は?

高嶋楓 新しいことや新鮮なことをたくさんできた1年だったなと感じています。昨年はロックフェスにも出させていただいたんですけど、今年は『VERSUS PASSCODE 2022』で私立恵比寿中学さんをお招きした2マンだったり、『SUPER MAWA LOOP OSAKA 2022』というアイドルフェスにも5年ぶりぐらいに出演させて頂きました。初めて出るフェスもあったり、去年できなかったことを今年はたくさんできたと思います。しかもそれらをちゃんと吸収して、次のライブにメンバー1人1人がしっかり活かしていて、武道館以降もみんなどんどん成長しているなと傍で感じていました。

南菜生 自分(高嶋)もだよ。

――最後、他人事みたいになってましたね(笑)。

高嶋楓  (笑)。去年よりもすごく幅が広がりました。広がったからこそすごく楽しいですし、来年も今以上に楽しいことができるんじゃないかなと思った2022年でした。

村上順一

高嶋楓

――『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』に初出場されましたが、ステージはいかがでした。

高嶋楓 お客さんもたくさん来てくださっていて、来年もまた出れる機会があればもっとたくさんの方に見てもらえるんじゃないかなと思いました。セトリが後半に進むにつれて全体を巻き込んでいくような一体感が生まれているのを見ると、まだまだ私たちを知って貰える余地があるんだろうなと思いました。

PassCodeの平和なところが露わになってきた

――さて、今回のEPには4曲入っているので、お一人ずつ聴きどころや印象などお聞きしてもいいですか。まずは1曲目の「Live your truth」はスピーディーなナンバーですが、レコーディングなどいかがでした?

有馬えみり PassCodeの曲って、BPMが速い曲の方がシャウトがゆっくりになる傾向があります。BPMが遅い曲だと4分音符で言葉を言うことができるんですけど、速い曲だとそれができなくなるので、逆に遅くなるので2分音符でのフロウが多くなります。私はシャウトのリズムを覚えるのは得意なので、「Live your truth」は5分くらいで覚えることができた曲なんです。それもあって自信満々でレコーディングに向かいました。でも、忘れちゃってて…。

――油断しましたね(笑)。

有馬えみり 他の3曲と比べると、聴き直しながら録るようなかたちだったのですが、普通に歌うよりもシャウトは得意なので、肩の力を抜いてレコーディングできました。あと、曲の構成が気に入っています。アウトロのギターリフやドラムのフレーズが好きで、疾走感があるこのアウトロで終われるのは、後味がすごくいいといいますか、良い作品を聴いたなと思ってもらえるんじゃないかなと思います。

――2曲目は「SILEN」です。これは既にライブで披露されていますね。

高嶋楓 「SILEN」は、野外ワンマンの1曲目に合う曲が欲しい、と南が言っていたのを覚えています。そのオーダーをプロデューサーの平地(孝次)さんに伝えて作っていただいた曲なんです。その野外ワンマンは武道館後だったので、新しい幕開けと言いますか、その雰囲気にぴったりの曲になったなと思いますし、なにより歌が力強い曲だと思いました。今回のEPは歌がメインだとずっと言われていたのですが、私は感情を歌に乗せるのがあまり得意ではなくて、レコーディングでは感情を乗せることにすごく苦戦をしました。私、ちょっとロボットっぽくなってしまうんです...。

――印象的だったフレーズはありますか。

高嶋楓 出だしの<君のサイレン 届くまで 鳴り止まないで そう遠くまで>です。この曲はイントロがなくていきなり歌から入るんですけど、それがすごく印象的でした。私の中で歌入りというのはすごく説得力があると感じていて、それもあって一番最初のフレーズがすごく気にいっています。

――大上さん、3曲目の「NOTHING SEEKER」は?

大上陽奈子 今回のEPはすごく楽しくレコーディングができたなと思っています。今までもレコーディングは好きなお仕事のひとつだったんですけど、特に今回は楽しいなと思ったんです。それはなんでだろう?と考えたんですけど、インディーズの頃やメジャーデビューしたての頃は、仮歌を聴いてそのまま歌っていた感じもありました。それはプロデューサーの平地さんが思い描いているようなイメージで歌いたいと思って、レコーディング当日に一緒に色付けをしていくというような作業でした。平地さんの思い描く通りにしか歌っていなかった、 全てを委ねていたといった感じでした。

――そこから変化が生まれて。

大上陽奈子 はい。「NOTHING SEEKER」は、仮歌の時からこういう風に歌いたい、というイメージがありました。 それをデモで歌ったんですけど、それを聴いた平地さんが「いいね」と言ってくださったんです。レコーディングがすごく楽しかったですし、曲によって協議できるようになったのがすごく嬉しくて。 中には平地さんが「自分が考えていたものより、そっちの方がいいよ」と言ってもらえて採用してもらったパートもありました。「NOTHING SEEKER」は特にそういうやりとりが多かった曲でした。

――お気に入りのフレーズは?

大上陽奈子 <ヤッバッバッバッバイバイ> です。最初曲は聴かずに歌詞だけ読んだのですが、これまでだったらこのパートは私ではなかったと思うんです。でも、なんとなく今だったら、ここは私が担当するんじゃないかと思ったら、本当に私になって。これまでは落ち着いたパートを私が歌うことが多かったのですが、最近は今までとはちょっと違うところを歌わせていただくことが多くなってきました。逆に落ち着いたパートは南や高嶋が歌ったり、色んなパターンができるようになって、引き出しが増えたような感覚がこのEPにすごくあります。

南菜生 私は歌が強めなパートや、この歌詞だったら「ここは自分かも」というのはあります。ライブの時のMCを切り取ったフレーズがあったら自分になる可能性は高いです。陽奈子や楓はキレイに歌うタイプですし、えみりは強い歌声なので、私と分かち合っている部分があります。でも、今回のEPの曲たちはそれが覆されているところがあったなと感じています。<ヤッバッバッバッバイバイ> は、私は最初は楓が歌うのかなと思っていたのですが、陽奈子だったので予想が外れました。

大上陽奈子 昨年リリースした「Freely」で、早口のパートを担当したのも予想外でした。雰囲気からカッコいいイメージで練習をして臨んだのですが、平地さんからレコーディング本番で「もっとパキパキした感じで歌ってほしい」と言われて、実は当時ちょっと不服だったんです。

一同 (笑)。

大上陽奈子 でも、今は平地さんがイメージしている遊びみたいなものが理解できるようになってきて、自分からやりたいと思えるようになりました。上手いとかカッコいいということだけが良い作品ではない、というのがようやくわかってきました。

南菜生 大人になったんだね。

――成長がありましたね。4曲目の「Clouds Across The Moon」はどんな曲になったと感じていますか。

南菜生 今回のEPは明るいイメージというのがありました。なので、この曲はちょっと暗い雰囲気があるからというところで、EPに入る感じではなかったんです。 でも私はそんなに暗さを感じていなくて。歌詞は最初ちょっと落ち込んでいるようなところもありますけど、 サビのメロディーはすごく力強くて元気が出るし、1度聴いただけで耳に残るようなメロディーだったので、今回の EPに入れてほしいと懇願して収録してもらった曲なんです。

――もしかしたら今回は収録されなかった可能性もあったんですね。

南菜生 候補曲となるデモが沢山あって「歌をメインに響かせる」というのが今回のテーマとしてありました。力強さもあり人の心にしっかり届くようなメロディーと歌詞の曲があったらいいなと思っていたので、この曲が来た時に「ぜひ、歌いたいです」と話しました。

――先ほど高嶋さんもおっしゃっていましたが、EPの特色として、「歌」というのがあったんですね。

南菜生 そうです。その一つとしてとしてえみりの歌があります。えみりが加入してからレコーディングしたのが「Freely」と「FLAVOR OF BLUE」の2曲で、その2曲ではシャウトしかしてないんですけど、今回のEPではシャウトだけではなく、えみりの歌声が聴ける初めての音源なんです。同じ歌詞でも人の声が変わると伝わり方も響きも変わりますし、今回のEPがPassCodeにとってすごく大事なものになると感じました。

――有馬さん、シャウトではないメロディを歌うパートがあった曲はいかがでした?

有馬えみり シャウトよりも覚えるのに時間がかかるので、レコーディング前日まで何回も練習して、のど飴も舐めてレコーディングに臨みました。シャウトだったら声がガサガサでも、それが味になったりするのでおかまいなしなんですけど、歌のパートは綺麗な声が出るように気をつけてました。

――有馬さんの歌声、注目ポイントですね。南さんが「Clouds Across The Moon」で特に響いたフレーズは?

南菜生 全体的に好きなのですが、私のパート、落ちサビの<溺れそうな手をいつも救い上げたのは君 月が照らす次の未来へ... ゆこうぜ!> です。歌う人によってはちょっとダサく感じる、みたいなことを作詞をしてくださった方が話していたのですが、ここを歌うのが私になったので、歌詞はそのままにしたと聞きました。

――南さんじゃなかったら歌詞が変わっていた可能性もあって。

南菜生 その話を聞いて「歌詞としてはダサいのか…」と思った部分もあるんですけど(笑)。歌う人によって歌詞を変えてくれたり、ニュアンスを修正してくれたりするので、だからひとり一人やっていることがずれないんだろうなと思いました。そういうことを知ってしまったら、今まで以上に大切に歌わないといけないなと思いました。

――誰が何を歌うか、というのは重要ですよね。さて、最後に今のPassCodeを四字熟語で表現したら、どんな言葉がハマりますか。久しぶりに高嶋さんにも答えていただきたいです。

高嶋楓 今の私たちは「多彩歩幅」ですかね? 多彩なことをしつつも、みんなの歩幅を合わせていこうみたいな。ここから多彩なことをしていきたいという気持ちの表れでもあります。

南菜生 いいね!

――最後、大上さんお願いします!

大上 え〜「多彩歩幅」を超えるのは難しい(笑)。

――前回は「未来永劫」でしたね。

南菜生 「Freely」の歌詞から取った言葉ですね。何年か前に「停滞阻止」と陽奈子が話していて、すごく面白かった(笑)。

大上陽奈子 今でも「停滞阻止」というのはあります(笑)。さっきの楓ちゃんはこれからのPassCodeという面が大きかったので、私は2022年を振り返っての四字熟語にします。今年は緊張していたところが緩和されて、PassCodeのほんわかした、平和なところが露わになってきたんじゃないかなと思ったので、「緊迫緩和」です!

(おわり)

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村上順一
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