七海ひろき「過去の自分を超えていきたい」アーティストとしての姿勢
INTERVIEW

七海ひろき

「過去の自分を超えていきたい」アーティストとしての姿勢


記者:村上順一

撮影:

掲載:22年10月26日

読了時間:約8分

 声優・俳優・アーティストとして活躍する七海ひろきが21日、デジタルシングル「HEART BEAT」を配信リリース。同曲はカンテレ・TOKYO MXで20日より放送がスタートした七海ひろき初の主演ドラマ『合コンに行ったら女がいなかった話』 の主題歌となっている。

 「HEART BEAT」は、作中で男装イケメン女子を演じる、七海ひろき, 瀬戸かずや, 如月蓮と、予想外の合コン相手に翻弄される男子大学生を演じる、井上想良, 小西詠斗, 増子敦貴のメインキャスト6人が歌唱を担当。 そして、同ドラマの挿入歌となっている「2人の物語」は、七海が作詞を担当し、片思いの心情をストレートな言葉選びで描いた切なくも前向きなアップテンポナンバーに仕上がっている。インタビューでは初主演ドラマの撮影エピソードから、「HEART BEAT」「2人の物語」の制作背景など、多岐に亘り話を聞いた。

撮影しながら自分の役が固まっていった

――先日、Zeppライブツアー『HIROKI NANAMI ZEPP LIVE TOUR “COLORS”』を行なっていましたが、手応えは?

 様々な色の七海ひろきを届けたいなと思って「COLORS」というタイトルになったのですが、皆さんと一緒に作った時間が本当に充実していました。ライブハウスという場所でのステージは初めてで、臨場感がすごくあり、バンドのサウンドも体全体に響く感覚があって、これがライブ会場か!と、思いました。いつもとは違った気持ちでテンションも高く臨めましたし、久しぶりのライブというのもあり、皆さんの高揚感やエールもすごく伝わりました。

――今までのホールとはまた違った感覚があったんですね。

 はい。ミュージカルをやるような会場だと音が上に飛んでいくような感じがあるのですが、ライブハウスはそれとは違いました。

――「COLORS」というテーマに行き着いた経緯はどんな感じだったのでしょうか。

 ありがたいことに、現在、私は色んなことに挑戦させていただいています。前回の『FIVESTAR』では、“チャレンジ”しているオリジナル曲を制作し、それをライブでやりました。今回は、色々な七海ひろきを見せれたら良いなと思い、その表現方法として、今までお届けしたことのないカバー曲を交え、違う雰囲気の七海ひろきを届けられたらという思いからでした。しかし、カバー曲を歌うのはすごく難しいですし、自分が歌い切れるかどうかという不安もありました。でも、初日に皆さんが楽しんでくれてる顔を見て、不安が無くなり、新たなステップを踏めた気持ちになれました。皆さんにも色んな七海ひろきを感じていただけたんじゃないかなと思います。

――さて、今回ドラマ初出演で初主演とのことですが、いかがでした?

 驚きました。初めてのチャレンジ、そして主演ということでしたので、不安と緊張もありましたが、それと同時に楽しみだなと思いました。

 原作を読んだのですが本当に面白くて。原作の雰囲気を大切にし、それを実写としてどうしたら上手くできるのか、というのを考えました。撮影が始まる前から色々考えていたのですが、結果的に撮影しながら自分の役が固まっていきました。

――ということは1話と最終話では変化があるわけですね。

 最初の頃は緊張もありちょっと固さがあったと感じています。撮影を重ねていくうちに、だんだん現場に慣れていきました。撮影しているその時はわからないけど、放送を観た時に反省するところが色々出てくるとのことで、それが舞台とは違ったドラマの面白いところだなと思いました。

 同じシーンを何度も撮って、しかもどれが使われるのか完成するまでわからないので、そこに最初は戸惑いもありました。顔の向きだったり、小物の位置が違ってしまったり、細かいところなんですけど、撮り直しすることもありました。ひとつひとつのシーンを作り上げていくという感覚は、とても新鮮でした。

――お芝居でも違うんですね。七海さん演じる蘇芳(スオウ)はどんな人だと思いました?

 飄々としていてミステリアスな雰囲気を持った王子様系イケメンだという印象です。自分の思いをすぐに言葉にするというよりは、色々考えてから行動しているので、そういったところが傍から見るとミステリアスにうつるのかなと思いました。性格は私と真逆で、演じるのが難しいなと思いました。蘇芳は人の気持の変化や周囲の動きを察知する能力があるのですが、私は鈍感なのでそういったことには中々気づかないんです(笑)。

――蘇芳は勘がいいんですね。

 そうなんです。そして、ちゃんと周りを見ています。私は空気を読むのが…苦手です(笑)。

――さて、今回共演者に宝塚出身の瀬戸かずやさん、如月蓮さんがいらっしゃいますが、ドラマという枠の中で共演されてみていかがでした?

 共演すると聞いた時はとても嬉しかったですし、心強いなと思いました。瀬戸さんは、宝塚在団中は組が違い、一緒に演じたりすることがほぼなかったので、今回のドラマでとても仲良くなりました。

――そうだったんですね。

 当時は、お芝居のこととかをお話したこともなかったんです。今回、共演して、瀬戸さんの醸し出す雰囲気や演技に対する熱量を真近で感じ、「すごく格好いいな」と思いました。そ

――如月蓮さんはいかがでした?

 在団中は同じ組にいたので、よく一緒に出かけたり旅行に行ったりするくらい仲が良いんです。とにかく如月さんは現場を明るくしてくれる人です。その明るさに撮影中は私も助けられました。

――ムードメーカーなんですね。

 「おはようございます」というひと言の挨拶が、私の割りと高めのテンションの5倍くらい明るいと思います(笑)。今回ご一緒した男性陣とは初めましてで、しばらくはお互い緊張していたと思うのですが、それまで、少し大人しめだった如月さんがある時「もう、崩していきますから」と宣言し、急に色々しゃべり始めて(笑)。そこからみんな一気に仲が深まっていきました。あと、萩役の増子くんもムードメーカーでいつも現場を和ませてくれていました。琥珀と萩のペアが、役とリンクするようにすごく盛り上げてくれていたのも印象的でした。

ギリギリの曲にも挑戦していきたい

――さて、主題歌「HEART BEAT」はキャスト全員で歌唱されていますが、この曲はどんな印象を持ちましたか。

 すごく耳に残るメロディで、つい口ずさんでしまう明るくてポップな曲で、このドラマの主題歌にピッタリだなと思いました。レコーディングは1人ずつ行ったのですが、キラキラ系の王子様イケメンという蘇芳をイメージしながら歌いました。

――お気に入りの歌詞はありますか?

 <カッコつけないでハグしよう>です。カッコつけ無くていい場面でカッコつけて空回ったり、気持ちを伝えられなかったりしてしまうことってあると思うんです。ありのままに気持ちを表現しているストレートな姿が、カッコつけていなくてもすごくカッコいいと思ったのでお気に入りのフレーズです。私もそういう風にいれたらいいなと思います。

――七海さん、カッコつけてしまう時があるんですか。

 自分の中で、全てを完璧にしたいというのがあって、出来ないところを知られたくないというか、見せたくないとよく思ってしまうので、そこはカッコつけてるなと思います(笑)少しずつ、まわりが見えるようになってきて、ひとりよがりにならず、その時の自分の最善を尽くすスタンスで頑張りたいと、最近は思っています。

――七海さんの周りでこの人はありのままだなと感じる方はいますか?

 最近、アニメ作品のトークイベントに出演すると、皆さんありのままだなと感じる事があります。余計な肩の力が入っていなくて、周りをよく見られているので、お客様の反応にも敏感に反応できていて凄いです。第一線で活躍されている方たちはみんなそうなんですよね。それができる時がきたら、またひとつ進化した七海ひろきに出会えるのかなと思います。

――ミュージックビデオの撮影で印象的だったことは?

 シチュエーションシーンとダンスシーンの2つのパートがあったのですが、各ペアで踊るダンスシーンは、同じダンスでも雰囲気が違うんだなと思いました。私と井上(想良)さん演じる蘇芳常盤ペアは、踊っているとちょっとずつセンターに寄ってしまうというクセがあって、何回も撮り直したのは良い思い出です(笑)。

――もう1曲の「2人の物語」は七海さんの作詞ですが、どんなイメージで書かれたのでしょうか。

 ドラマの挿入歌ということで、ドラマをイメージした言葉をドラマチームの方からいただいて、それに加えて自分が撮影しながら感じていたこと、誰かを思う優しい気持ちや楽しさ、そして嬉しいという感情をイメージしながら作詞していきました。

――<青い時の中>という歌詞が印象的でした。

 原作やドラマの世界観がすごくキラキラしていて、登場キャラがすごく成長していく印象がありました。そこに私は青というイメージを重ねて、この歌詞になりました。

――レコーディングはいかがでした?

 優しい気持ちや温かさみたいなものを伝えたいなと思いながらレコーディングしました。私の場合、何も考えずに歌うと圧みたいなものが出てしまうので、優しく軽く歌うというのをすごく意識してレコーディングに臨みました。

 あと、私はいつも録ってるうちにギアがかかっていくタイプで、最初に録った部分も改めて録り直したりするんです。やっぱり今回も、最後の方にかけて調整されていったので、OKとなっていた最初の部分をもう一度レコーディングし直しました。

――七海さん、スロースターターなんですか?

 スロースターターですね。舞台の稽古場でも「最初の方、なにか不安があるのかな?大丈夫かな?思ってました」って言われることもあって(笑)。私はその日に出せる全力でやっているのですが、なにか噛み合ってない感じがあり、周りの方が心配に感じていたみたいで。でも、最近ははじめにスロースターターだということを伝えているので大丈夫です!

――ありのままを伝えているんですね。最後に歌手デビュー4年目に突入した七海さんですが、デビュー当時から音楽に対する向き合い方は変わりましたか。

 当時は私がメジャーデビューですか? という驚きから始まったのですが、そこから新しいものに挑戦したいという気持ちが芽生えていきました。それまでは七海ひろきらしい楽曲だったり、自分らしく歌えるものを歌っていたのですが、前回の『FIVESTAR』から新たな挑戦がありました。できないかもしれないものに挑戦したい気持ちが強くなっていったんです。なので、七海ひろきにこの曲は歌えるんだろうか、と思うようなギリギリの曲にも挑戦していきたいです。

――殻を破っていく、ということですよね?

 そういうことにもなりますね。もちろん、今まで皆さんと作ってきた七海ひろきらしさは大事にしていきたいと思っています。ただ、挑戦しないと殻は破れないので、アーティストとして進化していきたい、過去の自分を超えていきたいという思いは強いです。

(おわり)

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