ジャズボーカリスト・Shiho「“自分色”が強すぎる」3年ぶり2ndアルバム『COLOR』に迫る
INTERVIEW

Shiho

「“自分色”が強すぎる」3年ぶり2ndアルバム『COLOR』に迫る


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:22年10月14日

読了時間:約10分

 ジャズボーカリスト・Shiho(ex Fried Pride)が、”Brand New”をテーマに取り組んだセカンドアルバム『COLOR』(カラー)をリリース。2021年、デビュー20周年を記念してリリースされた配信シングル 「Music & Life」、「Happy Song feat. HAMOJIN」に加え、fox capture plan、ケイコ・リー、J.A.M piano trio from SOIL&"PIMP"SESSIONS、武田真治、桑原あい、牧山純子とのコラボレーション楽曲を収録し、それぞれの個性を堪能できるカラフルな1枚となっている。インタビューでは、約3年ぶりとなったソロアルバム『COLOR』の制作背景や、Shihoの活動の原動力に迫った。【取材・撮影=村上順一】

自分がいいと思ったものはそう簡単に曲げられない

村上順一

Shiho

――『COLOR』というアルバムタイトルになったのは、色んな人とのコラボからですか。

 それもあります。“自分色”が強すぎるというのもCOLORだなと思いました。他にも大事なものということで、Cherishもタイトル案としてはありましたが、レーベルのディレクターさんが考えてくれた『COLOR』がすごくしっくりきたんです。

――ところで今回のリリースにあたってのコメントで、自分は頑固者だと思ったと書かれていましたが、何があったんですか。

 マネージャーとアルバムについて話していた時のことです。マネージャーはいろんなアイデアを出してくれたんですけど、そのアイデアをことごとく断ってしまいました。もちろん自分の考えがあってのことです。一回しっかり考えたんですけど、自分がいいと思ったものはそう簡単に曲げられないんだと。でも、それが私の個性ですし、無理して曲げなくてもいいのかなと同時に思いました。

――でも、確固たるものがあるからですよね。

 自分では「私って柔軟だわ」と思っていたんですけど(笑)。

――さて、リード曲の「Holiday」はJ.A.M piano trio from SOIL&"PIMP"SESSIONSとのコラボですね。

 丈青くんが今回胸キュンな曲を書いてくださって、「Holiday」は女性に人気の曲なんです。ギラ(・ジルカ)に書いていただいた歌詞なんですけど、コロナ禍で鬱々としているから、みんなホリデーしちゃおうよ、というテーマなんです。リード曲をどの曲にするかすごく悩んだのですが、そういう曲が今回リードというのも面白いかなと思いました。

――レコーディングはどんな感じでした?

 丈青くんと2回ぐらいリハをして、メロを決めたりとかしていたんですけど、レコーディングの時に、その場で決めたこともいくつかあったのを覚えています。例えばイントロはみどりんのドラムから始まったら面白いかもとか、基本はグランドピアノを使ってるんですけど、そこにローズピアノを被せてみたり。今回それが吉と出ました。アウトロの歌がフェードアウトしてインストにいくところもメンバーのアイデアでした。最後のインストパートがラジオボイスみたいに、夏の思い出のように懐かしい音で出てきたら面白い、というところからでした。

――J.A.M piano trio from SOIL&"PIMP"SESSIONSのメンバーはどんな印象ですか。

 久々に一緒にやったんですけど、みどりんが以前よりもすごく良くなっていて、彼は天才なんだと思いました。こんなに変わるんだと本当にビックリしました。あと、初めて会ったとき、丈青くんはすごく話しかけづらい雰囲気の人で、私は絶対この人とは友達になれないと思っていたんですよ(笑)。でも、一緒に演奏したらそんなことも吹き飛んだのを覚えていますし、めちゃくちゃいい人なんです。

――丈青さんの印象が変わったのは、音楽なんですね。

 それはありました。私たちはそんなに喋らなくても音で繋がるところはあります。そういう私も思っていることを言葉にして表現するのは苦手なんです。なので、こういった取材の時は頑張っています(笑)。だから私は表現の一つとして、音楽をやっているのかもしれないです。

――音楽は世界共通語のような部分もありますよね。そういえば、Shihoさんは海外での公演もやられていますが、5月にルクセンブルク・フィルハーモニ ー管弦楽団(OPL)と共演されていましたね。

 ありがたいことにお話をいただいて、今回で4回目だったんですけど、シンガーとしてオケと一緒にできるというのは夢ですよね。コンサートも満員で、みんな一緒に歌ったりして、新型コロナなんか収束したような雰囲気でした。久々に「ライブってこういう感じだったよな」と思い出したりして、すごく楽しかったです。今回、オーケストラの人数も80人と今までやってきた中でも最大でした。なので迫力がすごくて、それを味わえたのは嬉しかったですし、私のオリジナル曲も演奏して頂いたので感動しました。

――本作に収録されている「刀と煙」も歌唱されたみたいですね。この曲、タイトルが謎なのですが。

 中二病みたいな(笑)伊藤志宏くんがこの曲でピアノを弾いていただいているんですけど、その伊藤くんに「Shihoさんは女新撰組だ」と言われたことからできた曲でした。新撰組の中でも沖田総司や土方歳三ではなく、三番隊隊長の斎藤一だと言うんです。そんなこと言われたの初めてでした。

――どんなところからそのイメージが生まれたのか気になります。

 私が音楽をするタイミングが人より早い、歌っていなくても一音鳴った時点で一緒に音楽をしていると話してくれました。それが刀を抜いているようなイメージみたいなんです。私はその発想がすごく面白いなと思って、斎藤一をモチーフに曲を書いてみようとできたのがこの曲なんです。なので最初のタイトルは「三番隊長」(笑)。でも、それは流石にタイトルとしてはどうかなと思ったので、この曲が出来るきっかけになった伊藤くんにつけてもらおうと思いました。それで伊藤くんから出てきたワードが「刀と煙」だったんです。

――煙はどこから出てきたのでしょうか?

 煙は『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』で登場する斎藤一が咥えタバコをしているので、多分そのイメージからなんだと思います。タイトルが決まってから、ギラに歌詞を書いてもらったんですけど、斎藤一の女という目線の歌詞になりました。女と言っても正式な妻ではなく、おそらく内縁の妻のような感じだと私は捉えました。そして、内容は中々家に戻ってこない斎藤一の動向を知りたくて、自分がスパイになるというものなんですけど、映画みたいですごいなと思いました(笑)。

原動力は忙しい中に身を置いておくこと

村上順一

Shiho

――さて、韓国ドラマ『ヴィンチェンツォ』の挿入歌「Is This Love」が収録されていますが、どんな経緯が? 

 レーベルのディレクターさんが韓流ドラマの曲とかどうですか? と提案していただいたのがきっかけで、サントラの中からピックアップしてくれたのが「Is This Love」でした。私、最近は韓流ドラマしか見ていないくらい大好きなんです。お風呂が好きで長風呂なんですけど、大体韓流ドラマを観ていて、『ヴィンチェンツォ』も観ていたんですけど、ちょっと曲は全然覚えていなくて。でも、色々聴かせてもらった中で、私が歌うのなら「Is This Love」だなと思いました。

――武田真治さんがサックスで参加されていますね。

 武田くんは以前から交流があったので今回ぜひ参加して欲しいと思いお願いしました。でも、この曲での雰囲気は武田くんのいつものスタイルではなかったので、チャレンジしてもらったという感覚もあります。オケと歌を先に録ってサックスは武田くんの自宅でダビングしていただいたんですけど、アプローチに悩んだんじゃないかなと。おこがましいのですが、私がサックスのフレーズを指定して録り直してもらったりもしました。

 それでレコーディングが終わって初めて武田くんと会った時に「いろいろ教えてくださってありがとうございます」と深々と頭を下げてくださって。キャリアも私より長いのに、そういう真摯なところがすごいなと思いました。だから人にも愛されるし、長年続けてこられている理由なんだろうなと思いました。私もそうありたいと思うんですけど、長くやっていると忘れてしまうところなんですよね。

――武田さん、すごいですね。Stevie Wonderの「As If You Read My Mind 」は、オリジナルの雰囲気もありながらも、Shihoさんらしさも加わって最高でした。

 この曲のメロディはすごく難しいです。メロディ自体に抑揚があまりなくて、レンジが狭いんですよ。私は自分で曲を書くので、このレンジの中でもこんなに格好いい曲が作れるんだ、と思いました。コードもそんなに多くないんですよね。

――桑原あいさんのピアノソロも凄まじいですよね。

 もうあのセクションはライブのようでした。何周ソロを回すのかも決めていなくて、あいさんの合図で次のセクションにいくみたいな。でも、みんなそれぞれブースで演奏しているから合図が見えない(笑)。そろそろ次に行くのかな? みたいな探り合いでした。なので、実は一回失敗してるんですけど、それもライブみたいで面白いかなと思い残しました。

――スリリングでしたね。そして、The Beatlesのカバー「Got To Get You Into My Life」は、アップチューンでクールですね。

 原曲がThe Beatlesだとは知らなくて、ずっと私はEarth, Wind & Fireのオリジナル曲だと思っていました。Earth, Wind & FireはThe Beatlesとリズムは同じなんですけど、コードアレンジがめちゃくちゃ格好いいんですよ。それで、今回fox capture planと一緒にやれることになって、すごく速い4ビートで、最後にEarth, Wind & Fireの要素も入れたら面白いなと思いました。歌は生っぽい感じにしたくて、コーラスもほぼ入れていないですし、リバーブもあえて切ってしまったところも何箇所もありました。

――疾走感がより感じるのもそういった細かいところが影響しているのかもしれませんね。「You’re My World」では、ケイコ・リーさんとご一緒されていますが、ライブでも共演されていますよね。

 すごく可愛がってもらっています。過去にケイコさんがリリースされた日本語のカバーアルバム『Timeless 20th Century Japanese Popular Songs Collection』で「ロンリー・チャップリン」で参加させていただいたことがあるんですけど、その経緯があったので自分のアルバムでも歌っていただきたいなと思いました。今回ご一緒することができて、宝物の一曲になりましたね。この曲は「You’re My World」というタイトルからもわかるように、ラブソングなので男女で歌う方が合うのかもしれないけど、あえて女性2人で「大好き」という気持ちを歌いました。

――さて、「Chatterboxes」はバイオリニストの牧山純子さんがゲストで参加していますが、タイトルも“おしゃべり”と面白い楽曲になっていますね。

 演奏する機会はそんなにないんですけど、私と純子は仲がすごく良くて、一度ご飯にいけば何時間でも喋れてしまうんです。その感じを曲にしてみました。それで面白いタイトルはないかなと思って、調べていたらChatterboxesを見つけたんですけど、語感がすごくいいなと思ってこのタイトルに決めました。

――お2人でどんなお話をするんですか。

 音楽の話もしますし、私たちご飯が好きなので「次はどんなレストランに行く?」とか、ずっと話しています(笑)。

――最後に、Shihoさんの活動の原動力になっているものは?

 ご褒美ですね。これが終わったらあれを食べに行こうとか、温泉に行こうとか、何かを購入するといった感じです。特に高額なものとか大きいものを購入するわけではなくて、お洋服だったりそのくらいのものなんですけど。あと、コロナ禍になって何をしていたのかよく聞かれたんですけど、他のアーティストはYouTubeや配信ライブとかやっていましたが、私は本当に何もやる気が起きなくて...。ただただご飯を作り続けていました。私は忙しいルーティンの中にいないと、やる気が起きないんだと気付きました。締切がちゃんとあって、その中で音楽を作っていくということが自然なんです。なので、忙しい中に身を置いておくことも原動力の一つなのかもしれませんね。

(おわり)

作品情報

Shiho 2nd アルバム『COLOR』
2022.09.14 RELEASE/KICJ-859/定価:¥3,300(税抜価格¥3,000)
商品詳細:https://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKICJ-859/
配信サイト:https://king-records.lnk.to/shiho-color

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