INTERVIEW

左から楠木ともり、谷山紀章、東山奈央

「ハイボルテージな現場」アフレコの舞台裏に迫る:『BASTARD!! 』インタビュー


記者:村上順一

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掲載:22年10月01日

読了時間:約7分

 アニメ『BASTARD!! ―暗黒の破壊神―』が、9月15日より2クール目となる14話から24話までがNetflixで全世界配信中。同作は6月30日に1話から13話までが配信され話題となったのも記憶に新しい。『BASTARD!! ―暗黒の破壊神―』は累計発行部数が3000万部を超える、萩原一至によるファンタジーバトルマンガ。インタビューでは、ダーク・シュナイダー役の谷山紀章、ティア・ノート・ヨーコ役の楠木ともり、シーラ・トェル・メタ=リカーナ役の東山奈央に、アフレコ現場の様子や、この作品を通して気づいたことなど三人に話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

責任を持って演じようと思った(楠木ともり)

――この作品に参加が決まった時の心境は?

谷山紀章 オーディション時から手応えはありました。俺が思うダーク・シュナイダーの方向性が、作り手側の皆さんと同じだとしたら、自分に決まるだろうなと思っていたので、思惑通りに決まって本当に嬉しかったです。

――この作品は過去にOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)がありましたが、そこへのプレッシャーはありましたか。

谷山紀章 プレッシャーがないと言ったら嘘になりますけど、今回新しくシリーズアニメとして作るものだったので、矢尾(一樹)さんが務めたダーク・シュナイダーは意識せずに、自分の方法論みたいなところを見つけてオーディションに臨みました。

楠木ともり 私が演じさせていただいた(ティア・ノート・)ヨーコは、オーディションを受けて決まりました。歴史ある作品なので、私がヨーコに決まったことにすごく驚いたのと同時に、プレッシャーもすごく感じていました。周りのキャストの皆さんも大先輩で、私が入ることにどんな意味があるんだろう? と考えて、とにかく責任を持って演じようと思いました。

――どのようにアプローチしようと考えていたのでしょうか。

楠木ともり オーディションの時は、幼さと意志の強さを出した演技をしていました。ですが、収録が始まるにあたって、スタッフの方から「もっとヒロイン然としたお姉さんであるところを出してほしい」というリクエストをいただいたので、大幅に演技プランを変えました。

――東山さんがシーラに決まった時の心境は?

東山奈央 本作のキービジュアルにも「遂に蘇ったぞ」とあるのですが、令和の『BASTARD!! ―暗黒の破壊神―』として一つの回答を出せたらという気持ちで臨んでいました。私が演じるシーラ(・トェル・メタ=リカーナ)はオーディションではなかったんです。もともと私はヨーコのオーディションを受けていたので、シーラに決まったと聞いてからドキドキした気持ちで過ごしていて、1話を録り終えるまではそのアフレコを通してオーディションを受けているかのような気持ちでした。結果、私の中で思い描いていたシーラが、スタッフさんのイメージから外れていなかったようなので、スムーズに本番も終えることができました。

――アフレコ現場はどのような雰囲気でしたか。

谷山紀章 作品が長期連載ということもあり世代間のギャップがありました。女性キャスト陣はこの作品をリアルタイムでは見ていない若い世代が多かったんです。でも、男性陣は俺を含めてリアルタイムで観ていた人たちばかりだったので、「わからないことは俺らに聞いてね」みたいな雰囲気でした。女性陣としてはアーシェス・ネイ役の日笠(陽子)さんが、俺らと若い世代との架け橋みたいになっていたのは流石で、ありがたいなと思ってました。

東山奈央 日笠さん、ムードメーカーみたいな感じでしたよね。

――アフレコで印象的だったことは?

谷山紀章 ともりる(楠木ともり)と俺は年齢がちょうど二回り違うんです。今でこそ、こうやってともりると話せるけど、日笠さんが「紀章さんとともりってうまくやってるの?」みたいなこと言ってくるんですよ。それで俺とともりるが逆にギクシャクしちゃったらどうするんだよ、という(笑)。でも、それが日笠さんなりの空気の作り方なのかな、という感じでした。

楠木ともり 最初、私は緊張していて紀章さんとお話ができないと思っていて。

谷山紀章 俺、第一印象が割と怖いって言われるからね。それもあったんじゃないかな。

楠木ともり 私は人見知りなので、どなたに対しても緊張してしまうタイプなんです。日笠さんが橋渡しとなって、紀章さんが話しかけてくださったのがすごく嬉しかったですし、ちょっとセクシーなシーンをやった時に、紀章さんが「ヒュー♪」って言ってくださったのも嬉しかったです。

谷山紀章 「ヒュー♪」ってやったね(笑)。ともりるはセクシーなセリフをあまり言ったことがないだろうなと予想していたんです。もしかしたら録り終えた後に現場がシーンとするんじゃないかなと思い、囃し立ててみました。そうしたらともりるが「ちょっと紀章さん!」というノリになってくれたから、俺もすごく嬉しかったですね。

東山奈央 逆にシーラの時は紀章さん、何も言って下さらなかったんです(笑)。ともりちゃんが紀章さんから「ヒュー♪」って言ってもらっていたから、私も言ってもらえるのかな? と期待していたら、セリフが言い終わったら現場はシーンとして。(リップ音を出すために)手にハチミツまで塗って頑張ったのに(笑)。

谷山紀章 (笑)。東山君は随分前に作品で一緒にやったことがあったし、あの時からキャリアを積まれているので大丈夫かなと思って。今回ともりるに関しては、初めての共演だったということもあり、一つ考えるところがあったということです。

 でも、東山くんにそんな思いをさせていたとは申し訳ない(笑)。堂々と演じている感じに俺は見えたし、キャリアのある東山くんに今さら俺がそういうことを言うのは、逆に失礼かなと思ったんです。

東山奈央 次回お願いします(笑)。

谷山紀章 じゃあ東山君のセクシーシーンはことごとく「ヒュー♪」って言ってやる(笑)。

もう何でもありになってきた(谷山紀章)

村上順一

左から楠木ともり、谷山紀章、東山奈央

――皆さんそれぞれお好きなセリフは?

谷山紀章 いっぱいありますよ。ダーク・シュナイダーで言うと、呪文詠唱で叫んだりするのも印象的なのですが、この世代の漫画特有なことかもしれないですけど、笑い方として「ゲラゲラゲラ」というのがあるんです。これをアニメのセリフで表現する時にどうしようかなと考えていました。当初は「ゲラゲラゲラ」は「あひゃひゃ」という笑い声として変換してアフレコしたんですけど、ついにそのまま「ゲラゲラゲラ」と指示もなくやってしまって。しかもそれが通ってしまったんです(笑)。もう何でもありになってきたなと思いました。

東山奈央 セリフとは少し違うのかもしれないんですけど、呪文や登場人物の名前がいいなと思いました。特に「最愛なる美の女神イーノ・マータ」は、その言葉の響きもなんだか好きですね。あと私は「ダーク・シュナイダー!」といっぱい言っているのですが、それも印象に残っています。名前を呼ぶ時全て強めに「ダーク・シュナイダー!」と言ってしまうと、メリハリもなくなってしまうので、ここは希望を持った言い方、ダメかもと思っている言い方、ちょっと嫉妬するような言い方など、いろんなタイプの「ダーク・シュナイダー」を言わせていただきました。私が何回「ダーク・シュナイダー」と言ったのか、数えていただくために、もう一回見てもらうのもいいかもしれないです(笑)。

楠木ともり 私は「私のルーシェ(・レンレン)君を返してよ」というセリフが一番ヨーコの葛藤が出ていて印象的でした。これはダーシュ(ダーク・シュナイダー)の存在を認めないセリフなんですよね。ここが前半録っていた中で特に気持ちが入った部分でした。ヨーコは絶対に弱音を吐かなくて、「ダーク・シュナイダーなら大丈夫だよね」、「ルーシェなら大丈夫だよね」と、ずっと信じてくれているような感じがあります。こういったセリフが出てくると、ヨーコらしさを感じて印象深いです。観てくださる皆さんがこのセリフから、ヨーコの葛藤を感じていただけたら嬉しいです。

――今回作品を通して、それぞれ発見や気づきはありましたか。

東山奈央 アニメの中で敵キャラが木っ端微塵に倒されていくんですけど...。

谷山紀章 確かにそうなんだけど、東山くんが言うとなんか面白いな(笑)。

東山奈央 あれ……?(笑)。すごく大変なことが行われているんですけど、なぜかあまり悲痛な感じがしないなと台本を読んだ時に思いました。テンションが高いエンタメとして昇華されているからなんです。私はリアルタイム世代ではないんですけど、不思議と見ていて懐かしさを感じました。やられている時のセリフで「バヒャー」とか、「どうやって表現するんだろう?」と思っていたんですけど、様式美みたいなものを感じ、それを令和の時代に見られるというのが新しいなと思い、私の中での発見でもありました。

楠木ともり 私の生まれる前の作品というところで、セリフなど良い意味でギャップを感じていました。自分にはあまり馴染みのない空気感なのですが、それを作っていく上でOVAだったり、前任の方の演技を研究してからアフレコに臨んだので、今でも回を追うごとに新しい発見がたくさんあります。例えば語尾に小さい「ん」が入るんだなと感じて、それをやるようになってから、よりヨーコらしさがでたり、強く怒っているんだけど、その中に甘さがあるといった感じは発見でした。

谷山紀章 どの現場よりも火力が高いです。ずっとみんな叫んでいて、すごくハイボルテージな現場なので、そのテンション感が俺の中での発見でした。ここ最近のアニメでここまで単純明快で痛快なものってあまりないかなと、今も思ってます。引き算の美学みたいなものがありますが、この作品はもう足し算、掛け算の美学で、とにかくやれることを全てやる気持ちよさ、表現力の限界みたいなところで生まれる「俺、生きてるな」という感覚を再発見できたので、火力の高さを視聴者の皆さんにも感じてもらえたら嬉しいです。

(おわり)

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