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加藤小夏が映画『君たちはまだ長いトンネルの中』(なるせゆうせい監督)で自身初の長編映画初主演を務めた。漫画『こんなに危ない!? 消費増税』(ビジネス社刊)を原作とした社会派青春ストーリーで、この国の問題を何とか解決したいと奮闘する女子高生を演じた。加藤は初の連続ドラマ出演作となった『I”s』では藍子を瑞々しく演じ話題に。昨年3月放送のドラマ『取り立て屋ハニーズ』ではドラマ初主演を飾った。一方、環境に配慮したアパレルブランド『ForWe』を立ち上げるなど活動の幅を広げている。そんな彼女に動画でインタビューを行った。【取材・撮影=木村武雄】
「今」しか見ていない
高校最後の年に初めて取材を行った。まだまだ初々しかった彼女も、今は大人の魅力も感じられる22歳だ。この期間、『I”s』など話題作で好演し反響を集めてきた。順風満帆に見えるが20歳に差し掛かる頃、自分を見つめ直すこととなった。その中で生まれたのがアパレルブランド『ForWe』だ。環境に配慮し、自分らしさが表現できるものを発信したいという思いがあった。女優としても活躍は目覚ましく『取り立て屋ハニーズ』ではドラマ初主演を飾り、『おばあさんの皮』では短編映画初主演を飾った。そんな彼女はいまどう思うのか。
「いろいろと考えた時期もありましたが、今しか見ていないという感じです。以前と比べ、一点を集中するようになりました。撮影期間中は、現場から離れても役を考えていて、過ごし方は以前とは違うかもしれないですね。もともと気を遣う性格でした。喋りたくなくても喋らなきゃと思ったり、人に対しても一生懸命に頑張らなきゃと思う所が大きくて。でも今はそうではなくて、頑張らなくても作品を良くするために人と喋ったり、今はちゃんと一人の人間、加藤小夏として喋れているなって思えます。それも今を生きていることに繋がっているのかなって思います」
よい緊張を得ながらも構えることなく自然体で過ごせている。
「気づいたらそうなっていました。たぶん徐々になっていけたんだと思います」
記者「女優・加藤小夏と胸張って言える?」
加藤「胸張って言えるようでありたいと常に思っています」
経験は人を大きくさせる。
セリフ量に驚き
そんな中で加藤が挑んだ本作は、この国の問題を何とか解決したいと奮闘する女子高生の姿を描く。加藤はその主人公・高橋アサミを演じた。
「オーディションの数分後にマネジャーさんに電話がかかってきて。『決定です』って言われて。『えっ!』みたいな。すぐに決めていただけたのはすごい嬉しいんですけど、初の長編映画の主演、大丈夫かなという不安もありました」
驚いたのはセリフの量。
「とにかくセリフの量が膨大だったんです。昨日もインタビューあるからと思って台本見直したんですけど、『私、こんなにしゃべってたんだ』っていうくらいセリフの量が多くて(笑)。撮影まではちゃんとセリフを入れなきゃと思いながら毎日を過ごしていました」
ただセリフ量が多いわけではない。消費税など社会問題に関わる専門的用語が多くある。
「もうわけわからなくて、正直、無知だったので、台本読んで、まず分からない用語を書き出して調べるところから始まったのでそこは大変でした。とにかく勉強しました。理解してないと言葉も自分のものにならないので、セリフの量と共にわからない言葉を自分のものにしていく作業が大変でした」
演じた高橋アサミは同級生や教師からは一風変わった目で見られる。だが、社会問題となれば真っすぐで、次々と論破していく。
「言葉尻もきつく、はっきりものを言う性格なので観て下さる方にアサミを応援したいと思って頂けるかを大事に、頑張れって思ってもらえるようなチャーミングさはどこにあるのかを考えていました」
そのアサミだが、社会問題に興味を持ったきっかけがある。
「アサミは、父親の死をきっかけにこれからの人生をどう生きていくかということをちゃんと考え始めました。自分の中にちゃんと芯を持って信じられるものもあって、とにかく真っ直ぐな子でした。もちろん高校生なりの大人になり切れていないところもあります」
そのアサミは女子高生。加藤に初めてインタビューしたのは高校3年生の頃だ。今は22歳。
「いやぁ、ちょっと若いなって思いました(笑)。アサミ役が決まってから駅とかで見かける高校生を見るんですけど、とにかく若いんですよ。もう行動とか発言とか。その姿をみてもうそこに私はいないんだと思ってしましました。過去の写真とかも見ながら自分と向き合いました」
加藤は幼少期からダンススクールに通い、中学生までジャズヒップホップというジャンルのダンスを続けていた。ダンスの道を進もうと受けた事務所のオーディションの帰り道に、サンミュージックにスカウトされ、所属を決めた。
デビュー後、NTT西日本(2015年)やポカリスエット(2016年、17年)など多くのテレビCMに起用され、ミュージシャンのMVにも出演した。当時からその容姿が注目され「宣材美女」というワードで話題になったが、当時は彼女なりの葛藤があった。
「振り返った時あまり高校生活は楽しくなかったなと思って。大人になる途中、10代の一番大事な時期だったので悩むことも多かったですし、この仕事を続けるかどうかもどうしようかなっていう時期だったので。どうしたらいいか分からなかった時期だったなと写真を見ながら思いました」
当時の自分に言ってあげるなら…?
「いつも自分に言い聞かせているのは、『今はどんなに辛くてしんどくても2年後には笑っていられる』ということです。その頃の自分にもそう言ってあげたいなって思います」
その言葉は、今の彼女を形成する一つのピースになっている。
「主演だからと言ってそれを強く意識するのではなく、この子に任せても大丈夫だと思ってもらえるようにならなきゃと思っていました。今回はセリフの量も多かったですし、私がつまづいたら全てつまづいてしまうという責任感がありました」
そんな彼女。今後はどうか。
「私たちのためにできること、地球環境とかを考えながらファッションやバッグなど、いろいろと作っていきたいと思います。秋冬も春夏も着れるセットアップや今は「with東北」という東北のオーガニックコットンを使ったプロジェクトもあって。それも今後も続けて、いいモノづくりをしていきたいです」
女優・加藤小夏としてはどうか。
「前向きであること、誠実であること、感謝を忘れずに、ということを心に置きこれからも進んでいきたいです。それが目標です。人としては変わらずに加藤小夏でいたいなって思います。生きていく中で頑固になってしまう部分も多いと最近は思うので頑固にならずにフワフワと私らしく生きていたいです」
(おわり)
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