水曜日のカンパネラ、新体制で見せる新たな音楽性
INTERVIEW

水曜日のカンパネラ

詩羽×ケンモチヒデフミ、新体制で見せる新たな音楽性


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:22年06月29日

読了時間:約14分

 水曜日のカンパネラが、再始動後初のEP『ネオン』をリリース。水曜日のカンパネラは2013年からコムアイ(主演/歌唱)、ケンモチヒデフミ(音楽)、Dir.F(その他)の3人ユニットとして始動。2021年9月6日にコムアイが脱退、二代目として主演/歌唱担当に詩羽(うたは)が加入し新体制での活動がスタートした。10月に新体制後初の新曲「アリス/バッキンガム」をリリース。12月には東京・WALL&WALLで新体制初の主催リリースパーティー『LET’ S PARTY』を開催し成功を収めた。2022年に入ってからもコンスタントに新曲をリリースしEP『ネオン』を発売。『ネオン』は「アリス」など既発4曲と4月に先行配信されたばかりの「織姫」を含む新曲4曲の計8曲を収録。インタビューでは、どのような意識で楽曲制作に取り組み、これまでとはどのような違いがあるのか、新加入した詩羽と作詞・作曲を手がけるケンモチヒデフミの2人に多岐に渡り話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

詩羽に日々助けられている

村上順一

詩羽

――発表からの8カ月間というのはご自身の中で心境の変化や新たな発見はありましたか。

詩羽 生活が一気に変わりました。昨年の6月に水曜日のカンパネラの主演/歌唱に決まって、9月に発表したんですけど、6月以前は自分が音楽やる、頻繁に色んな都道府県にも行くようになるなんて思ってもいなくて。それもあって活動が始まってからはもともとの生活リズムとのバランスが難しくて。私はすごく朝が苦手なんですけど、お仕事で朝早く起きることも増えましたし、曲を覚えることなどやることがすごく沢山あってワタワタしていたんですけど、今は少し慣れてきて、水曜日のカンパネラの詩羽というものが、うまく生活に浸透してきているのかなと思います。

――ケンモチさんは詩羽さんとの活動はいかがですか。

ケンモチヒデフミ ボーカルが変わるというところで僕もDir.Fもどうなるんですかね、みたいな感じでした。きっとファンの方からもネガティブな意見で溢れるんだろうなとか、ある程度想像していたんですけど、詩羽になって、1曲目からわりといい評価を皆さんにしていただいてて。音源は大丈夫でも、ライブはそうはいかないと予想していたのですが、ライブをしてみたらお客さんも喜んでくれて。楽屋でも「緊張してる?」という話をすると、「ステージに立てばなんとかなると思うので大丈夫です」と言っていて、日々頼もしいなと思っていますし、そんな詩羽に日々助けられています。

――詩羽さん、プレッシャーもありますよね?

詩羽 「アリス」と「バッキンガム」のリリース前はどんな反応が来るんだろう? というプレッシャーは確かにありました。その時にみんな受け入れてくれるんだというのが分かってからは、プレッシャーはわりと感じなくなって。

――肯定的な意見すごく多かった印象でした。

ケンモチヒデフミ 「アリス」と「バッキンガム」をリリースした時は、今までのファンの方達も満足させて、これからの新しい水曜日のカンパネラの姿を見せたい、と考えて2曲を作っていました。みんながいい反応で見てくれるというのがわかってからは、より自由に作れるようになって。面白いのが自分ではこれまでとは変えたつもりで新曲をリリースして、反応をSNSやYouTubeのコメント欄でみると、「今までのカンパネラっぽくていいね」といった声が割とあるんです。

――持ち味は残っているんですね。

ケンモチヒデフミ 自分ではすごく変えたつもりでも、根底にある手癖みたいなのは変わっていないんですよね。そのコメントを見て今までっぽさもしっかり担保できているんだったら、常に自分の中で今回も変えていこう、という意識で向き合っていった方がいいんだ、という気持ちになりました。これまでのテイストを保とうというよりも、新しい一面を強めに出すような曲作っても大丈夫なのかなと思って。

――ケンモチさんからみて、詩羽さんの歌、音楽的な魅力はどこにありますか。

ケンモチヒデフミ コムアイの声質はふわふわして丸い、トゲのない感じが面白いなと思っていたので、その声に合う曲を作っていました。詩羽はコムアイとは割と真逆の声質で、芯があって強い声なので、ダンスミュージックがベースとして鳴っている強いトラックの中でもスポンと抜けてくるんです。歌っても抜け感がすごくあるので、今まで水曜日のカンパネラになかった曲が作れるところです。詩羽の声に触発されて作れているところもあると思います。

――詩羽さんがケンモチさんの特にすごいと感じるところは?

詩羽 音楽はもちろんなんですけど、それ以外の引き出しもすごいと思いました。自分が着目していなかったことを教えてくれるんです。

――どんなことを?

詩羽 ケンモチさんの家でレコーディングした時に、ピラミッドのVRを見せていただいて…。

――ピラミッド?

ケンモチヒデフミ まだ詩羽と出会って間もない頃に、仮歌を録ろうと初めてうちのスタジオに来てもらったときのことです。出会って間もないしちょっと雑談して緊張をほぐした方がいいかなと思いました。それでYouTubeにピラミッドのVR映像があったので、「これがすごいんだよ」という話をしたんですけど、詩羽は全くピラミッドのVRに興味がなかったみたいで、微妙な空気感が10分ほどあったんです(笑)。

詩羽 この動画を見た反応として、何が正解なんだろうと考えて。今までピラミッドに興味を持ったことはなかったし、そんな映像がYouTubeにあるということですら私は知らなかったんです。逆にどこからこの映像にたどり着くんだろう?と思って(笑)。でも、ケンモチさんのすごいところは、新しいものを正しいことにできる人なのかなと思いました。私が今二十歳というのもあって、自分の年齢から離れた人ほど、新しいものを肯定、受け入れられないというのを感じることがあります。新しいもののいいところが分かってはいるけど、なぜか抵抗しちゃったりとか。ケンモチさんは私の話に「そうなんだ」と今を受け入れられることはすごいなと思いました。

――考え方が柔軟なんですね。ちなみにケンモチさんはVRにいまご興味が?

ケンモチヒデフミ VRというかテクノロジーの進歩です。人間の体や心は10年経ってもそんなに変わらないじゃないですか。なのでテクノロジーの進化を見ているのが好きなんです。

――好奇心がすごいですね。

ケンモチヒデフミ 僕が音楽をやっている中で、人と競えるところはアイデアなんです。音楽の素養といいますか、しっかり学んだこともないし、楽器がめちゃくちゃ上手いわけでもないので。じゃあ何で勝負していこうかと思ったら、アイデアを人と違った組み合わせで当てはめていくところだなと思いました。まだ人が見てないところとか、誰も取り入れてないものを早く知ることが自分の長所として、みんなと戦えるところだと思うと、好奇心を持って常に色々使えるものを探そうとは思っています。

――先入観をもって見てしまうと面白くなくなることもありますよね。お2人は先入観について思うことはありますか。

ケンモチヒデフミ 先入観はなるべく自分では持たないようにしようとは思っています。先入観によって勘違いされているものとかけっこうあると思うんですけど、それは逆にチャンスだなと思っています。なぜこれはみんなに嫌われているんだろうとか、なぜそんなに受けてないんだろうみたいな。まだその良さにみんなが気づいていないものとか、勘違いしているものを面白く活用できないかなと。先入観をもたないアイデアの組み合わせ方を意識しています。

――詩羽さんは先入観について考えたりすることはありますか。

詩羽 人というものが自分が生きている中心にすごくあるので、先入観を持たないように心がけています。誰々がこんなことを言っていた、という話が私は嫌いで、自分が本人から聞いたことしかできるだけ信じたくなくて。身近な友達のことが一番近いと思うんですけど、誰々はこんな人だったという話を聞くと、それに対して私は「へぇ」と普通に反応はするんですけど、それを自分は誰かに言いたくないし、その情報が正解だと思いたくなくて。特に人に対しては先入観を持っては駄目だから、自分が会って話してみた時に初めてその人のことがちゃんとわかると思っています。

勘違いが勘違いを呼んでいい方向に転がっていく

――「ネオン」のコンセプト、構想みたいなのはありましたか。

ケンモチヒデフミ このEPは全貌をイメージして作り始めたわけではないんです。今の詩羽に似合う曲を書こうと思っていました。これを1枚のEPにまとめるためにはどうしようという気持ちで着手した感じです。ハイパーポップという音楽のジャンルがあるんですけど、「織姫」と「卑弥呼」はそれを意識して作りました。コムアイの時はそれをカンパネラでやってもうまく見せられないという気持ちがあったんですけど、詩羽になってハイパーポップを持ってきたらすごく合うんじゃないかなと思ったんです。それと同時にEPのタイトルが『ネオン』、ジャケットビジュアルが決まって、徐々に新しい景色も見えてきた中で、追加する形で「一寸法師」を作って、俯瞰して8曲を見てみたら結果こういうものになっていました。

――どのような経緯で『ネオン』というタイトルに?

詩羽 EPのタイトルを決める時にどんなものにしようかと考えている中で、自分がいま気になっているものにしようと思って、ネオンサインが浮かんできて。そのネオンがいまは簡易的になって、本物のネオン看板がどんどんなくなってきているみたいなんです。ネオンを作るお仕事が減って、その職人さん自体も減ってきているという状況を見て、それはすごくもったいない、惜しいという思いがありました。あと、ネオン看板がなくなってきているというのが、コロナ禍で居酒屋さんが閉店したことにも通じているかもと思って。それでネオンを調べているうちにラテン語で「新しい」という意味があって、それを知った時にいまの自分の気持ちにぴったりな言葉だと感じました。

――EPや曲のタイトルに関してケンモチさんはあまり介入されない?

ケンモチヒデフミ そうですね。曲のタイトルも僕がつけたものはそんなに多くなくて、Dir.Fがお題をくれて、それを引き継いで詩羽に「タイトルは何がいいか決めておいてね」と委ねる流れがあります。「人名をいくつかちょうだい」みたいな感じなんですけど、いきなり言われたらなんのことだかですよね(笑)。MVとかジャケット、アーティスト写真の選定も、僕はほぼ関わらないようにしているんです。僕が思っていた「織姫」や「卑弥呼」のイメージとまた違う、スタイリストさんやMVの監督さんのイメージがどんどん乗っかって、全然違うものが最終的にアウトプットされるというのが面白いなと思っていて。

――他の人のアイデアがどんどん入ってくるのはウェルカムなんですね。

ケンモチヒデフミ はい。発想の飛躍と言いますか、勘違いが勘違いを呼んでいい方向に転がっていくというのを、僕は最終的に見てみたいなと思っているんです。

――今回の曲のテーマも、詩羽さんが出したものも多いんですね。

詩羽 「アリス」は、私の幼くて小さな女の子というイメージが自分に近いなというのがありました。あと「招き猫」や「モヤイ」は人じゃない物語がありなら、妖怪みたいなものとかもアリなんじゃないかなと思いました。「招き猫」は妖怪ではないですけど、私が猫好きというのもあって、ケンモチさんに「招き猫ってよくないですか?」と少しずつ押して(笑)。

――洗脳していくわけですね(笑)。人名とはまた違った「バッキンガム」と「モヤイ」は場所というのがアイデアとして大きいですね。

ケンモチヒデフミ 「バッキンガム」と「モヤイ」は僕のアイデアでネタありきの曲です。世田谷の給田という地名とか、数ある渋谷の待ち合わせスポットの中で、モヤイ像の周りだけは何もできない、というネタありきで作りました。普段生活していて気付いたことや、聞いたことがないような言葉を知ると、これをネタにできないかなと考えます。

――なかなか給田から「バッキンガム」という発想につながらないです。

ケンモチヒデフミ 世田谷の給田という地名を知っている人からしたら、「なんで?」となってるらしいんですけど、僕は最近まで給田という地名を知らなくて「あ、こんな面白い地名があるんだ」というところに気が付いただけなんです。

――今作でのチャレンジや新しい試みはどんなところに反映されていますか。

ケンモチヒデフミ 今の若いアーティストやリスナーが聴いているものを勉強して取り入れたつもりです。メロディーライン、歌詞の転がし方、最近の「歌ってみた」やボカロ界隈の人がやっている曲を聴いて、今こんなメロディーラインがあるんだとか、こんなに曲の展開がコロコロ変わっていくんだ、とか学びながら作っていたので、そういうのが反映されているところです。

――詩羽さんが印象的だったレコーディングや楽曲は?

詩羽 最初の「アリス」と「バッキンガム」の思い入れも強いです。初めてのレコーディングだったので集中力が持つのか、持たないかという問題があったり、いろんなことがある中でレコーディングしていたので、すごく印象に残っています。曲としては「織姫」は今の私だから歌える曲だと感じていて、特に気に入っています。「織姫」から始まって「招き猫」で終わるという流れもお気に入りで、最後まで聴いてまた「織姫」に戻って、このEPを何回も聴いてもらえたら嬉しいです。

可愛いと自己肯定感が上がっていく

村上順一

詩羽

――曲順はどのように考えたのでしょうか。

詩羽 Dir.Fがいくつか案を出してくれて、そこから話し合いながら進んでいきました。

――サブスクやダウンロードで単曲で聴かれる時代で、曲順があまり重視されない世の中になっていますが、お二人はどのように感じていますか。

ケンモチヒデフミ 僕自身もリスナー目線で聴くときはまるっと聴くってことは今はなくなりつつあるんですけど、新しくなった水曜日のカンパネラという看板を出すというところで、EPとしてまとまりがあるのがいいのかなと思いました。

――フルアルバムという案もあったり?

ケンモチヒデフミ 今の時代フルアルバムは聴く側も、ちょっと負荷が大きいと個人的に思っていて。電車で移動中に聴く、そういったちょっとしたタイミングで音楽をみんなは聴くことが多いと思うので、例えば80分もあると、みんなNetflixとか見てしまうんじゃないかなって。そう考えると一番大きい単位でも、8曲ぐらいのEPが聴きやすいのではと思いました。

詩羽 好きなアーティストさんだったら、私はプレイリストにEP丸ごと全部入れて聴きます。人によっては動画を早送りで見る世代で、映画とかもYouTubeを観る時とかできるだけ短く観ようとする手段を取りがちなんです。ケンモチさんと同じくこの長さがいまの時代に合っているのかなと思います。若い人が聴くなら、曲頭が何よりも大事になってくると思いますし、曲が長すぎると聴いてもらえない。そんなことを自分が同じ時代を生きていて思います。

ケンモチヒデフミ どれだけ効率よくコンテンツを消費できるかということに、みんな注力してるところがありますよね。でも一番良くないのは長い上に面白くないことです。イントロが何かありそうな感じで始まっているのに、特に何事もなく4分間が経ってしまったら、ちょっとなんだろうなと思ってしまうので、そういう気分にはさせないように考えて作っていますから。

――いま水曜日のカンパネラの武器はどこにあると感じていますか。

ケンモチヒデフミ 他のアーティストさんが曲を作ろうとして、変なスパイスを入れちゃうと、そこだけが浮き上がって聞こえてしまうから、世界観を崩さないために綺麗に作ろうとすると思うんですけど、ただ水曜日のカンパネラの場合はイビツさ、組み合わせのおかしなところが魅力なのかなと思っています。例えば歌詞がバラードっぽい雰囲気なんだけど、曲調がまったく違う感じ、半分王道で、半分全然違うみたいな文脈をよく考えたりしてます。

――バランス感覚が大切なんですね。今回そういう部分で苦労した曲も?

ケンモチヒデフミ どの曲もダサくなるギリギリな曲ばかりなんですけど、「織姫」の歌詞はギャル語を取り入れていて、そこは考えました。織姫がギャル化してラップするというのは、ちゃんとギャルになりきれてないと面白くならないので、今のギャルがちゃんと使う言葉であるかどうかを入念にネットでリサーチして。これがギャルが言ってないような言葉だったら面白くなくなってしまう。最後は入念に詩羽に確認をして歌入れしました。

詩羽 もうケンモチさんのギャル語はバッチリでした(笑)。

ケンモチ でも、詩羽の返事が軽過ぎて「本当にちゃんと聞いてる?」と疑いましたけど。

――(笑)。最後にお二人の今の原動力は?

ケンモチヒデフミ 音楽をずっと作っていて、楽しいというベースはあるんですけど、一つのものをやり続けるとそれがプレッシャーになってくると思います。前の水曜日のカンパネラだと気楽に作って、人とちょっと違った面白いものが作れたら、それでOKと思っていたのですが、キャリアを積み重ねていくと、「これは前やったな」「これは面白くないな」とか、ハードルがちょっと上がってきて。

 それを一回やめて自分のソロでジューク/フットワーク(アメリカのイリノイ州シカゴを発祥とするエレクトロニック・ダンス・ミュージック)をやってみたりしたんですけど、それもちょっと飽きてきて、今また新しい水曜日のカンパネラになって詩羽の世代にしかできないことや、今まで自分一人じゃできなかったようなことも色々実験したり、新しいアイデアをすぐ試せる環境にあることが、いま音楽を作る上でのモチベーションになっています。今は「曲作りを始めて3年目です!」ぐらいのフレッシュな気持ちに戻れてやれているので、すごく楽しいです。

詩羽 私は洋服が大好きなんです。ジャケット写真やライブ、MVの衣装も私が一緒にスタイリストさんと同じ目線に立って参加させていただいています。こういうものを着たいとか、ここはもっとこうしたいとか、ヘアメイクさんとビジュアルを相談しながら、みんなで一緒に考えて作るのがすごく楽しくて。私にとってビジュアルというのは大事で、可愛いだけで私はすごく楽しくなってしまうタイプなんです。MV撮影が大変で夜どんなに遅くなってしまっても服が可愛いとそれだけでテンションがあがります。その姿を鏡やスマホで見るとどんどん自己肯定感が上がっていきます。いろんなビジュアルに挑戦できることが自分にとっての原動力になっています。

(おわり)

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