松下奈緒「思いっきり楽しもう!」アルバム『FUN』で体現した想いとは
INTERVIEW

松下奈緒(撮影:LUCKMAN)

「思いっきり楽しもう!」アルバム『FUN』で体現した想い


記者:村上順一

撮影:

掲載:22年04月15日

読了時間:約9分

 女優、ピアニスト、ヴォーカリストとして多彩な才能を発揮する松下奈緒が13日、約3年ぶりとなるオリジナルアルバム『FUN』をリリース。2004年デビュー後、多くの映画やドラマに出演し、 2010年NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」でヒロインを好演。 同年、『第61回NHK紅白歌合戦』紅組司会を担当した。今作『FUN』は「音楽をもっと自由に楽しまないと♪」をコンセプトに 彼女が奏でる煌びやかなピアノ演奏を楽しめる多彩な作品が完成した。 5月から5都市6公演の全国ツアーも開催予定の松下に、アルバム「FUN」について、どんな意識で臨んだのか、話を聞いた。【取材=村上順一】

楽しいことを思いっきり楽しんでいいんだ

『FUN』通常盤ジャケ写

――オリジナルアルバムは3年ぶりですね。

 もう3年も経っていたんだ、という感じです。この3年でエンターテインメントは大きく変わりました。どんな状況であってもいつかコンサートをしたい! と思い続けていました。日々、状況が変わっても、自分がやりたい事は常に発信しようと思っていました。改めて自分を見つめ直す有意義な時間になりました。

――アルバムのタイトル『FUN』とはすごく前向きですね。

 タイトルはいろいろ考えました。短くてインパクトのある言葉を探していて、その中でみんなが「いいね」と言ってくれたのが『FUN』でした。シンプルでハッピーな気持ちになれるFUNという言葉から想像するアルバムのカラー、キラキラしている感じがイメージにありました。昨年のツアーではいろんな所を回っていく中で、どんな状況でも待っていてくださるファンの方がいてくださり、ツアーメンバーとも久しぶりに顔を合わせて一緒に音楽をやれたという楽しさを改めて実感しました。なので今回のアルバムは楽しいことを思いっきり楽しもう!、と音楽を通して感じていただけるような1枚を作りたかったんです。

――6曲目には「FUN !」というタイトルチューンもありますね。

 タイトル曲を入れることは当初予定していなかったんです。でも、曲を並べて見たときに、やっぱりFUN !と言い切れるものが欲しいなと思いました。

――ジャケ写も印象的で、今までの作品の流れから見ると一番明るいですよね。松下さんのリクエストが反映されているのでしょうか。

 ジャケ写はリクエストしたわけではないのですが、デザイナーさんが曲やタイトルからイメージしてくださったものが私のイメージとマッチしました。綺麗とか格好いいというよりも、可愛くて身近に感じてもらえるものを私は大事にしたいと思っていたので、撮影自体も皆さんと笑いながら進んで、その一瞬を切り取っていただいたジャケットになりました。

――私もこのジャケ写を見て、楽しい=FUNという気持ちがすごく伝わってきました。

『FUN』初回盤ジャケ写

 全てのことですが、「可能な範囲で楽しむにはどうしたらいいのか」ということをすごく考えました。笑顔ひとつとっても印象に残るものにしたいなって。紙吹雪がキラキラと降るなか、風船を持ってみたりと、すごく楽しいジャケット撮影でした。

――逆にレコーディングでは笑顔は封印、シビアだったのでは?

 リリースが決まった時はまだツアーもやっていましたし、曲は作り溜めておいたものもありました。“FUN”というコンセプトが決まってからも、常にコンセプトを確かめながら曲を作り変えたりもしました。時間的にはアレンジも含めて実質一カ月もない中で、3〜4曲ほど仕上げたという感じです。

――スケジュール的に大変でしたね。

 音楽漬けになっている自分がすごく久しぶりでしたし、この短い期間でスタジオでいろんな意見を皆さんと作り上げていきました。完成までの過程はもちろん大変なんですけど、制作中はすごく楽しくて、全てが“FUN”につながればいいなと。曲を作っているときは真剣ですけど、全て出来上がって聴いてみたら、「あ、やっぱり楽しいな」と思えるものになっていたので、これだけ濃密な時間を音楽と共に過ごせたというのはいい経験になりました。

弾き方をもっと極めたい

松下奈緒(撮影:LUCKMAN)

――今回久しぶりに全編インストゥルメンタルにした意図は?

 ヴォーカル曲はいろんな方に提供していただくことで、それがアルバムの良いエッセンスになっていくと思うんです。でも、今回は「松下奈緒って何だろう?」ということを考えた時に、インストでもこれだけいろんなカラーがあるというのを見ていただきたい、という想いがありました。でも、9曲目の「みんなのあした」という曲はヴォーカル曲を自分の中でイメージしながら作っていて、インストなので言葉はないんですけど、歌心を感じてもらえたら嬉しいなと思います。

――また原点に戻ってきたとも思いました。

 前の作品とは違うことをしよう、というのが常にアルバムを作る上で1つ大きなテーマとしてあります。前作は人と、音楽とシンクロできるというところで、楽器と楽器のコラボだったり、さまざまなコラボをやってみました。メロディというのは自分から出てきたものなので、今回のテーマとしても大事にしたいところでした。

――「Orpheus in the Underworld -天国と地獄- 」(以下、天国と地獄)の多重録音も今作の特徴ですよね。

 もともと私はクラシックを勉強していたのですが、CDデビューしてからはクラシック曲を収録したことはないんです。今回収録することになったきっかけは、ライブの中でカバーコーナーを設けたことが始まりでした。洋楽、邦楽問わず、皆さんがよく知っている曲をカバーで演奏したんですけど、その時にすごく皆さんが楽しんでくださっているのが印象的で、今までずっと自分のオリジナルにこだわっていたけれど、誰かの曲をカバーするのもいいなと思いました。自分自身もすごく楽しかったです。今回カバー収録する曲を決めるにあたって、直感で決めたのが「天国と地獄」でした。

――多重録音になったのは?

 2019年に2 pianosという野崎良太(Jazztronik)さんとピアノを2台使った連弾をやったことがあって、その時の緊張感がすごく楽しかったんです。今回は自分で2台のピアノを弾いたんですけど、スピード感のある「天国と地獄」もいいんじゃないかなと思いました。自分が好きだからやりたい、と思える流れでいいのかなと思って。

――1曲目の「it’s MOTTO」という曲ではシンセサイザーが入っていますが、ピアノ以外の楽器が入ることに、松下さんはどのように感じていますか。

 シンセサイザーのすごさというのはよくわかっていて、ピアノだけで表現するには限界がある時があるんですけど、シンセサイザーの幅広い音のおかげで、曲がすごくふくよかにもなるし、ミニマムにもなるんです。その多様性というのはすごいなと思いますし、ライブでもバンマスの河野さんがシンセサイザーを鳴らしていただいているのですが、本当に音が幅広くなります。

――松下さんはシンセなどは弾かれないのでしょうか。

 楽曲制作で使ったり、長期のロケなどで持って行ったりするので使うことはありますが、ステージではやったことないです。舞台上で弾くのはピアノだけですね。

――今後の新しい楽器へのチャレンジとしてはいかがですか。

 オルガンとかやってみたいです。例えば、その楽器を使いたいがために、曲を書くというのも面白いかも、と思っています。

――小さいころからピアノを弾いてきて、いまでも新しい発見はあるんですか。

 ありますよ。大きな編成、クラシックよりのコンチェルトみたいな曲がいつもはもっと入っているんですけど、今回はその代わりにジャズ寄りの曲だったり、いつもとは違う手の動きで弾かないと成立しない曲がけっこう多かったんです。「it’s MOTTO」や「Shiny Blue」、「FUN !」がクラシックな弾き方ではなく、ポップスフュージョン寄りの弾き方が求められる曲でした。今回特にその弾き方をもっと極めないとダメだなと思いましたし、同時にそれが課題だなと思いました。

――確かにクラシックとは趣が変わります。

 「光~ray of light~」と「FUN !」の弾き方は、まったく違う体の使い方をしているので、その力加減というのも感じていただけたら嬉しいです。私も同じ人が同じピアノで弾いても全然違うように聴こえるんだなと、改めて実感しました。

――『JAバンクpresents 松下奈緒コンサートツアー2022 ーFUNー』はどんなライブにしたいですか。

 楽しむことを思いっきりやりたいと思っています。今回は幅広い音楽を皆さんにお伝えできたらと思います。リズムが入った曲をたくさんやりますので、声は出せなくとも体はリズミカルに、を目指したいと思っています。このライブで「松下奈緒ってこういう音楽もやるんだ」ということを改めて知っていただけたら嬉しいですし、ライブに来ていただいて、実感していただきたい部分です。

――CD特典にライブの映像が収録されますが、これを見ればライブの雰囲気がわかりますね。

 そうですね。今回DVDに収録した4曲は全く違うジャンル、ビックバンド風なものもあれば、クラシカルなもの、ヴォーカルものなど、それぞれ違う私が観れると思います。今回のツアーではもっと進化したものをお届けします。純粋に音楽って楽しいんだ!と思っていただけるようなツアーをお楽しみに。

松下奈緒(撮影:LUCKMAN)

(おわり)

作品情報

松下奈緒 8thアルバム『FUN』

4月13日リリース

【Disc1】

M1 「it’s MOTTO」2022年 佐藤製薬「ユンケル黄帝液プレミアム」CMソング
M2 「光~ray of light~」2022年4月~ テレビ東京系列「ガイアの夜明け」オープニングテーマ曲
M3 「アカツキ」2022年4月~ テレビ東京系列 「ガイアの夜明け」挿入曲
M4 「Breath ~JUA la Africa~」テレビ静岡・フジテレビ系 「地球感動スペシャル!みなしごゾウを守れ 松下奈緒ケニア感動物語」テーマソング
M5 「Shiny Blue」2020年 佐藤製薬「ユンケルプレミアムシリーズ」CMソング
M6 「FUN !」
M7 「Orpheus in the Underworld -天国と地獄-」自身初クラシック曲カバー収録、ひとり多重録音
M8 「アライブ -Piano Version-」 フジテレビ系ドラマ「アライブ がん専門医のカルテ」劇中曲
M9 「みんなのあした」 2019年JAバンクCM曲

※全曲インストゥルメンタル
初回生産限定盤 (CD+Blu-ray)★三方背BOX仕様
★2枚組

【Disc2】 特典映像

CONCERT TOUR 2020 / 21 “PLAY LIST”
1.Lovin’ You
2.エカテリーナのための協奏曲
3.Melodious Sky
4.うんとしあわせになろう

ライブ情報

『JAバンクpresents 松下奈緒コンサートツアー2022 -FUN- 』

5月14日(土) 東京・かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール
6月15日(水) 北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)
7月1日(金)宮崎・宮崎市民文化ホール
7月3日(日) 熊本・熊本県立劇場 演劇ホール
7月9日(土) 東京・東京国際フォーラム・ホールC
7月10日(日) 大阪・新歌舞伎座

チケット情報、詳細はホームページを確認。
http://www.matsushita-nao.com/tour2022/

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