INTERVIEW

結木滉星

約3年ぶり舞台 今江大地と誓う「僕らならではの『エゴ・サーチ』を」


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:22年04月09日

読了時間:約6分

 結木滉星が、4月10日に初日を迎える舞台『エゴ・サーチ』に出演する。鴻上尚史氏が作・演出を務める作品で、2010年の初演、13年の再演を経て今回3度目の上演となる。自分の名前を検索してその評価や評判を調べるエゴサーチをきっかけに、失われた記憶や届かなかった思い、苦悩などそれぞれの思惑が集まって真実が明らかになる。結木が演じるのはカメラマン志望の広瀬隆生。巧みに女心に入り込む姿とは別の裏の顔を持つ。終盤にかけて物語を動かす重要な役どころだ。結木と言えば、これまでも二面性を持った役を好演してきた。約3年ぶりとなる舞台ではどのような姿を見せるのか。【取材・撮影=木村武雄】

含みのある役どころ

 「陰があり二面性が強い役柄をずっと演じてみたいと思っていました」

 昨夏、ドラマ『#コールドゲーム』への出演が決まった当時、こう語っていた。

 『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』で爽やかな青年を演じた結木も今では含みのある役柄を多く演じるようになった。

 『危険なビーナス』や『#コールドゲーム』、『SUPER RICH』など、本心をひた隠しする役どころで、物語を大きく動かす役割を担った。

 今回の役どころもそうした性格を持つ。

 カメラマン志望で巧みに女心に入り込むが、本心は別の所にある。

 「広瀬にとってカメラは、女性を一番口説きやすいアイテムなのでカメラマンと名乗っていて。広瀬には目的が明確にあって、ある人物のために行動しているので、それが軸になっています。その本心と、口説く相手の女性によってもお芝居は全然違います。なので二面性だけではないかもしれません」

 そうした本心を抱えつつも、表向きは普通に振舞っている。

 「彼も一人の人間なので、広瀬の二面性は相手によって接し方が異なるぐらいの感覚で皆と一緒だと思います。ただ目的が違うだけで。女性に対しては詐欺まがいのことをしていますが、彼自身はそういう風には思っていなくて。本当は根がピュアなんだと思います。だから周りから見たら悪いことも彼はそう思っていない」

 その広瀬は終盤に進むにつれ物語の軸となっていく。

 「広瀬がきっかけで物語が進んでいくので、僕がしっかりしないと全部だめになってしまう。そこの責任感があります。受けではなくて、相手に与えるような役回りでもあるので、全員にしっかりと感情という“糸”を出し続けることを意識しています」

 関係する人物に「感情の糸」を出し続ける。それだけに演じる負担は大きい。

 「だから毎回すごく疲れます。でもアドレナリンが出ているので、稽古が始まったら考える余裕もないです」

木村武雄

結木滉星

鴻上氏の言葉

 舞台自体は『里見八犬伝』以来約3年ぶりだ。2020年上演予定だった『舞台 あおざくら 防衛大学校物語』はコロナ禍で中止となった。

 「舞台はやっぱり楽しいです。映像は日によって撮るシーンが全然違いますし、回想や何年も前のシーンを撮ることもありますが、舞台は全部一本で流れていて感情が全て繋がっているので役者としては楽しいです。毎日が充実しています」

 それでも久々の稽古場に戸惑いもあった。

 「映像とでは声の出し方も演じ方も全然違います。少しの仕草で表現できますが、舞台では大きく見せないと伝わらないので。最初の方、鴻上さんに『映像だったら成立するけど、舞台だったらそうは見えない』と指摘されハッとしました。今は動きに頼らず、セリフと音量、表情を含めて表現していこうと頑張っています」

 「自分の実感と心の旅をしろ」

 演出の鴻上尚史氏に言われ、印象深く残った言葉だ。

 「お芝居は、何となくでもできてしまうと思うんです。それをどれだけなくしていけるかという作業は大変です。大きい声を出すから疲れるとかではなく、そういうところが一番疲れます。鴻上さんは『自分の実感を大切にしろ』とおっしゃるので、まずは自分に近い言い方とか、自分だったらこう言うだろうなとか、自分だったらこの表現はしないなとか、自分に置き換えて向き合っています」

 その教えは今後の芝居にも活かされていく。

 「鴻上さんから受けた演出は、どんな脚本にもどんな作品にも活かせると思っています。台本の読み方を一つとっても全然違っていて、この人物は何でこのセリフを言うのか、なぜこういう動きになるのか、そういう理由、裏付けをしっかり探す必要があります。鴻上さんは『感情の線をいかに太くしていくかが大事』ともおっしゃっていて、『そのセリフは成立しているけど、もっとプラスしてほかの想いを入れたらそのセリフに深みが増す』と。今それと向き合っています」

 同じ言葉でも感情一つでその意味が変わる。鴻上氏が求めているのはまさに人物それぞれの本心だ。結木は今、稽古場で試行錯誤を繰り返し、広瀬という人物の深度を高めている。

 「今は幕が上がるのがちょっと怖いですね。まだ観せられるものじゃないというか、もっと時間がほしいです。もちろん稽古場では広瀬として100%生きていますが、まだまだ上に行けるはずだと思っています」

結木滉星

恐怖と喜び

 その広瀬に印象的なセリフがある。

 <写真を撮るとき喜びと恐怖が同時に生まれます。写真が撮れる喜びと、ダメな写真になったらどうしようという恐怖と。>

 そういう感覚はどの職業にもあることだろう。結木自身はどうか。

 「まさにその感じです。やりたいけどやりたくないみたいな。喜びだけになることはないと思うんです。常に喜びと恐怖というか、そういう感情が行き来していると思います。達成感と不安。でもやるしかないですからね。昔は現場に行きたくないとか、稽古に行きたくないということはありました。でもそれがなくなったのも、お芝居に対しての楽しさを覚えてからです」

 昨年のドラマ『主夫メゾン』の取材の時にも語っていた過去。

 「大学に入ってから役者を本格的に始めました。実はこれまで波がありました。芝居が楽しいと思う時がある一方で、何をやっても上手くいかなくてへこんで負のスパイラルに陥る時もありました。色んな感情がある中で、今はすごくやり甲斐を感じていて、純粋にお芝居が楽しいと思えています」

 この2年の役者・結木滉星の心の持ちようがうかがい知れる。

 稽古場で苦楽を共にする共演者は良き仲間になっている。

 「仲いいですよ。稽古も楽しいですし、お芝居だけじゃなくてダンスも多少はあるので、そういうところでコミュニケーションが取れています。(今江)大地とは同世代ということもあって特に仲良いです」

 そんな今江大地は主人公の一色健治を演じる。

 「大地とは台本のことについても話しています。大地と初演・再演時の映像を見させて頂いたので『俺らはこうしたいよね』とか、『こうしないと僕らがやる意味がないよね』とか。真似しようとかは思わず、今までやってきたことを信じてやろうねという話をしています」

 そんな結木に「エゴ・サーチ」にかけて自身のSNSの向き合い方を聞いた。

 「僕はエゴサーチはあまりしないです。SNSにあまり興味がないので。もともとSNSは苦手なんです、機械も弱いですし。ただ、舞台初日の時とかどういう反響なんだろうとか気になってすることはありますね。いろんな声がありますがネガティブな声は聞かないようにしています。この仕事は自分との向き合いだとも思っているので。だからそういう声は全然気にしなくていいと思います」

(おわり)

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