澤野弘之「改めて認識できた」ピアノソロアルバムで見せた新たな情景
INTERVIEW

澤野弘之

「改めて認識できた」ピアノソロアルバムで見せた新たな情景


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年12月22日

読了時間:約5分

 作曲家の澤野弘之が12月22日、ピアノソロアルバム『scene』をリリース。ボーカルプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキヌジーク)としても活動する彼はアニメ『進撃の巨人』やドラマ『医龍 Team Medical Dragon』など、多くの劇伴を手掛けている。本作『scene』は様々な劇伴を担当してきた澤野初のピアノソロアルバムで、自身のオフィシャルファンクラブ会員向けに公開してきたピアノ演奏音源を初収録した作品。表題曲「scene」や本アルバム用に演奏したアニメ『青の祓魔師』のメドレー、その他ドラマ『魔王』や、アニメ『進撃の巨人』『機動戦士ガンダム UC』『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』『ギルティクラウン』など、自身が手掛けてきた作品を中心に、全19曲を収録した。MusicVoiceではメールインタビューを実施。初のピアノソロアルバムの制作背景や、今、自身が追求していることなど回答してもらった。【取材=村上順一】

クリスマスソングで一番好きなのは「Silent Night」

『scene』通常盤ジャケ写

――2021年を振り返って、澤野さんにとってどのような一年でしたか。印象的だったことや意識的に変わった部分などあれば教えて下さい。

 ライブの面では久々に有観客で開催できた事が嬉しかったです。音楽制作としては、[nZk]プロジェクト以外にも楽曲提供やプロデュースなどの機会が増えた事もやりがいがありましたし、そうした経験が来年にも繋がっていきそうな気がしています。

――自身初のピアノソロアルバムとのことですが、制作することになった経緯とはどんなものだったのでしょうか。

 【-30k】というFan Clubサイトのコンテンツの一つで、毎月1曲、過去の作品やアドリブなどピアノソロで演奏してきたのですが、楽曲数がある程度たまった事で、これらを1枚のアルバムにするのも面白いんじゃないかという話から決まりました。

 本来なら「ピアノアルバム作るぞ!」という感じで、録音に向けて構成やアレンジをある程度考え制作すると思うのですが、このアルバムは「とりあえず弾いてみます!」という、その時の気持ちや感覚で弾いてきた音源になっていて、結果的にそれが自分らしいピアノアルバム企画だったと思っています。

――全19曲が収録されていますが、曲順はどのように考えていましたか。

 わりと、弾いて行った順番にそって並べていった気がします。

――オリジナルのバージョンをピアノアレンジとして成立させるために、どんなところを気をつけてアレンジされたのでしょうか。

 そこまで深く考えず、とはいえ原曲の抑揚などをある程度は考慮しながらも、その時の感覚で弾いていたので、“ピアノアレンジ”というものを強く意識してはいなかったですね。

――数ある楽曲の中からピアノソロ曲として収録するにあたり、選曲の基準になったことは?

 基本的には自分にとって思い入れの強い作品であったり、作品の中でも重要なシーンなどに使われた楽曲をメインに選んでいったと思います。

――「scene」というアルバムタイトルに込めた想いは? そして、表題曲はどんな情景をイメージして書かれたのでしょうか。

 映像作品の音楽として制作した楽曲をメインに構成しているので、“シーン”という言葉が一番自然かなと思い付けました。表題曲はスタジオでアドリブ的に弾いた楽曲なので、タイトルとは反対に情景などはイメージしてなかったですね(笑)。タイトルも後になって付けたので、“scene”という言葉も意識して弾いていなかったです…。

――アルバムの最後に「Silent Night」が収録されています。クリスマスも近いリリースでの選曲だと思われますが、この曲を演奏して発見はありましたか。そして、どのような気持ちで演奏しようと思いましたか。

 2年前に【-30k】サイトのクリスマス企画として、この曲を演奏しました。いい歳して未だにクリスマスが一年で一番好きな時期で、この時期はほぼクリスマスソングを聴いているんです。その中でも「Silent Night」が一番好きな曲なんですよね。弾いている時は「やっぱりクリスマスはいいな~」とクリスマスシーズンに浸っていたと思います(笑)。

――今作を制作するにあたってピアノという楽器の可能性、新たな発見などありましたか。

 可能性・新たな発見というよりは、やはり自分にとって大切でありずっと好きな楽器なんだなという事を感じました。僕はピアニストではなく、あくまで作曲家としてピアノ演奏している感じなのですが、演奏する事の楽しさや難しさを改めて認識できたと思います。

――この作品を通してリスナーにどんな事を感じてもらえたら嬉しいですか。

 「ピアノアルバム!」と身構えて聴いて頂くのではなく、何かの作業用、もしくは寝る用くらいの感じで聴いて頂ければと思います(笑)。もちろん様々な作品とリンクさせたり、原曲とは違うピアノだけのシンプルなアレンジなどを楽しんで頂ければ嬉しいです。

――初回盤にはライブBlu-rayが付属しています。改めて映像を観て澤野さんはこのライブをどのように感じていますか。

 LIVE【emU】は普段のボーカル楽曲メインのライブとは違い、インスト楽曲などよりサウンドトラックに寄った構成のライブなのと、バンド&アンサンブルというスタイルに凄くやりがいを感じています。お客さんと一緒に盛り上がるライブも楽しいですが、こうしてじっくり聴いて頂くライブも今後広げて行けたらなと思っています。

大人になったら「こんなスキーデートしたい!」

澤野弘之

――リリース日がクリスマス間近ということもあり、澤野さんの思い出として印象的だったクリスマスはありますか。

 クリスマス1週間前くらいに外から母親が電話をしてきて、「今デパートいるんだけど、クリスマスのプレゼント、サンタさんに何頼むの?!」と言われた時、「サンタって百貨店に住んでんのかよ」と、突っ込みたくなったのを強く覚えています。

――冬の曲と聞いて澤野さんがイメージする楽曲は? その楽曲にまつわるエピソードなどあれば併せてお聞かせください。

 「Departures」です。高校の時にスキーのCMで流れていたんですが、そのCMに出ていた女性が綺麗だったのと、大人になったら「こんなスキーデートしたい!」と思っていました。
イントロのピアノフレーズをよくスタジオやライブのリハーサルで弾いたりしています。

――いま、澤野さんが追求していること、していきたいことは?

 日々、海外の音楽から影響を受けて、それを自分なりに吸収して音楽制作しているので、サウンドやアレンジの面でそれをどこまで近づけていけるかは、常に追求していますし、これからも続けていくと思います。

――2022年の展望としてはどんなことを考えていますか。挑戦したいことなどお聞かせください。

 現在動いている新しいプロジェクトで、新人のボーカリストの方達と進めている物があり、[nZk]プロジェクトとは違う形でそれらも広げて行けたらなという思いで取り組んでいます。今までとは違った世界観の作品にも携わる予定なので、そこでの音楽制作で新たな挑戦をして行けたらとも思います。

(おわり)

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