INTERVIEW

副島 淳

「自分が幸せだと思えばそれでいい」副島淳が考える私らしさ。『老後の資金がありません!』で天海祐希と共演


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:21年11月08日

読了時間:約4分

 副島淳が、天海祐希主演の映画『老後の資金がありません!』に出演している。垣谷美雨さんの同名小説が原作。老後の資金に2000万円は必要ともいわれる現代日本を舞台に、一般の主婦がお金にまつわる“災難”に振り回されながらも奮闘する姿を描く。副島は天海演じる主人公の主婦・篤子が勤めるパート先のコンビニの先輩店員役。本作では、家計のやりくりに奔走する主婦のドタバタ劇をコミカルに描いているが、本来の幸せとは何かを改めて考えさせられる内容にもなっている。副島は容姿などへの偏見を受け苦しんだが、いまは「自分らしく生きられている」と笑顔を見せる。撮影秘話と共にその思いを聞いた。※一問一答は動画で。【取材・撮影=木村武雄】

天海祐希の器の大き

 社会的に関心を集めた「老後資金2000万円問題」。金融庁が報告した老後資産の報告書にそれが記載され、メディアが大きく報じ話題になった。副島自身も報に触れ「自分も足りていないな…」と思っていたという。そんな折に本作の出演オファーが舞い込んだ。「こんなタイムリーに話を頂けるなんて」と驚いた。

 映画のタイトルから「社会的なテーマを持った作品になるだろうと身構えました」。緊張もあったようだが台本を読み「重いテーマをコミカルに面白く書かれていて少し緊張が和らぎました」

 演じたのは、天海祐希演じる主人公の主婦・篤子がパートするコンビニの先輩店員。夫・章(松重豊)の父の葬儀代に330万円もかかりなんとか工面するが、契約社員として働いていた仕事がまさかの満了で失職、さらに今度は夫がリストラ。家計を支えるため奮闘する篤子がパート先に選んだ一つがコンビニだ。

 副島自身も大学時代にコンビニでバイトした経験を持つ。「初めてバイトしたのがコンビニで、その頃のことを思い出して演じようと思いました。当時はお金を初めて自分で稼ぐ緊張感と、右も左も分からない不安もありました。懐かしいですね」

 くしくも篤子は「自分が稼がないといけない」という思いが空回りし失敗を連発する。「僕も何度もミスって店長に怒られたので、篤子さんの気持ちは分かります。その時は先輩に優しく教えてもらいましたので、演じる時はそれも意識しました」

 台本を読んで緊張がほぐれたという副島だが、緊張の中で天海と初対面を果たした。「ガチガチでした」と笑う。それでも「天海さんは気さくで、同じ下町出身ということもあってたくさんお話させて頂きました。器が大きい方だなと思います」。天海に胸を借りる思いで臨んだ撮影はテンポ良く進んだ。「天海さん、コンビニで働いたことがあるんじゃないかと思うぐらいでした(笑)」

天海祐希との共演シーン。『老後の資金がありません!』より (C)2021映画『老後の資金がありません!』製作委員会

「自分らしく」

 家計をやりくりする主婦の姿をコミカルに描いている一方で、「本当の幸せとは何か」「自分らしさとは何か」を問うている。

 日本人の母と米国人の父を持ち、東京・蒲田出身。小学生の頃には容姿の違いから同級生からいじめを受けた副島。しかし、中学生時代にバスケットボール部に入部しプレイで周囲を認めさせた。副島の原動力は何かと聞けばその時の体験といい「いじめられたこと、辛かった時期です」と返す。

 「今までいろいろなことがありましたが、少しずつ乗り越えていき37歳になってようやくそれをどう変えていくかが分かるようになってきました。でも苦しんでいる方は多いと思います。そういう辛いと感じる人が少しでもいなくなればいい、それが原動力になっています」

 あの時の行動が今に繋がる。それは『老後の資金がありません!』でも描かれている。副島自身は、32歳でNHK朝の情報番組『あさイチ』にレギュラー出演が決まったことがそれにあたるという。「その時は転機になるとも思ってもいませんでした。仕事は楽しく全力で臨んでいますが、責任感が付いたのはこの時です」

 現在も出演中の同番組は、副島淳の知名度を全国区にした。

 「オーディションでしたがまさか受かるとは思ってもいなくて。事務所の社長が『良かった』と泣いていました。でも僕は全く実感がなくて。出演して反響を頂いてようやく自分の事として実感しました」

 出演が決まる前も、「同じように苦しんでいる人たちに何かできないか」と思っていた。だが漠然としていた。出演をきっかけにそうした声がダイレクトに自身のもとに届くようになり「視野が広がりました」

 「英語もしゃべれない、お父さんにも会ったことがないという少し変わった副島淳という人物がどういう人生を歩んできたんだろうと興味本位ではあったと思います。僕もそれでいいと思いました。取材などを通してそうしたことを知って頂く機会が増え、同じように苦しんでいる人たちの声を多く頂くようになりました。そこから講演にも呼んで頂くようになり幅が広がり、より責任感が出てきました」

 いま、一歩踏み出せない人たちに声をかけるなら…と聞けば「何をやるにしても遅いはない」

 「小学生の時は本当に辛かったです。20代の時も順風満帆ではなくて。32歳の時に後に気付いた転機。それが早いのか遅いのかは誰かが決めるものではなく、自分自身で判断するものだと思います。始める、始めないは自分次第。それが小さくても大きくても、早くても遅くても関係ないと思います。ネット社会でいろんな言葉が良い意味でも悪い意味でも溢れていて左右されることもあると思います。コロナ禍でストレスも抱えやすいと思います。でも自分自身の思いはぶれずに、自分の物差しで芯を持って行動する、自分が幸せだと思えばそれでいいと思います」

副島淳

(おわり)

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