神サイ、n-bunaとアユニ・Dの世界観が融合した「初恋」に迫る
INTERVIEW

神はサイコロを振らない

n-bunaとアユニ・Dの世界観が融合した「初恋」に迫る


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年07月21日

読了時間:約11分

 福岡発4人組ロックバンドの神はサイコロを振らない(神サイ)が16日、1st Collaboration Single「初恋」を配信リリースした。この楽曲はアユニ・D(BiSH/PEDRO)をボーカリストに迎え、n-buna from ヨルシカによるプロデュースで制作された楽曲。神サイは2020年7月にデジタルシングル「泡沫花火」でメジャーデビューし、同年12月に1st Digital EP『文化的特異点』、2021年に入ってからも3月にメジャー1stシングル「エーテルの正体」をリリースし、5月からは全国ツアー『Live Tour 2021「エーテルの正体」』を開催するなど精力的に活動。今回リリースされた「初恋」はバンド初となるコラボレーション楽曲となっており、神サイとn-buna、アユニ・Dの世界観が見事に融合した1曲に仕上がった。インタビューではツアーの手応えから、「初恋」の制作背景など多岐に亘り話を聞いた。【取材=村上順一】

ライブで感じたお客さんの変化とは

「初恋」ジャケ写

――『Live Tour 2021「エーテルの正体」』の手応えはいかがでしたか。

柳田周作 Zepp規模をワンマンでツアーを回らせていただいたこと自体すごくありがたかったですけど、Zepp Tokyoの公演ではカメラも入れて、あの規模でお客さんも映っている全体の画が使えたというのは嬉しかったです。あと、お客さんが変わりつつあります。これまではじっくり佇んで聴く感じでしたが、今回はみんながあそこまでノッテいるというのは初めてで。神サイが新たなステージに踏み出せた気がしました。コロナ禍が収まったらもっとすごいライブになるんだろうなという予感がしています。

吉田喜一 9月22日に残り大阪の1公演あるんですけど、感謝のツアーでした。ファンの皆さんはもちろんなんですけど、僕らのチーム、ライブをやれるような環境を整えてくれた方たち、エンタメをここまで盛り上げて下さった方たちにも感謝を伝えたいツアーでした。特に印象的だったのはツアー初日の福岡です。目の前にお客さんがいる光景は、今も鮮明に覚えています。

桐木岳貢 初日の福岡はガチガチで緊張していたんですけど、徐々にほぐれていった感覚がありました。前回のライブから3段階ぐらい会場のキャパがステップアップして、お客さんの数も増えましたし、ロックバンドのライブになってきたなと。柳田が話していたようにお客さんがノッテいるのも新鮮でした。

黒川亮介 自分たちが変わればお客さんも変わるんだというのがわかったツアーでした。ライブの1曲目が「クロノグラフ彗星」だったんですけど、僕らがステージに出るまでは皆さん座って待っていて。

柳田周作 SEが鳴ってもみんな座っていたから、心配だったんですけど。

黒川亮介 この曲はライブで拳を掲げることをイメージして作った曲で、1音鳴らした瞬間からお客さんが総立ちになってくれて、曲の意図が伝わっていることに感動しました。本当にすごく嬉しかったです。

――9月に行う予定の大阪公演はどのようなライブに?

柳田周作 東京公演の模様をストリーミングで配信してしまったので、みんなある程度流れはわかってしまっていると思うんですけど、大阪公演はセットリストも少し変えて、新曲も出来たらいいなと。また面白いものができるんじゃないかなと思います。

――7月22日には大阪 なんばHatchでアユニ・D(BiSH)さんのソロ・バンド・プロジェクトであるPEDROとの2マンライブ『GM+ 』を控えています。

黒川亮介 2マンは独特の雰囲気があると感じています。対バン相手よりお客さんの心を掴みたいという気持ちが強いです。ワンマンとは違う、相手がいるからこそ燃えるものがあります。

吉田喜一 同じ空間をみんなで作れるというのが、対バンの魅力だと思っています。PEDROさんとご一緒させていただきますけど、何から何まで楽しみです。

柳田周作 これまで接点がなかったPEDROさんと対バンするということにファンのみんなは驚いてくれて。僕らとPEDROさんとはお客さんの層も違うと思うんですけど、もしかしたら僕らのことを好きじゃない人もいる可能性もあるわけで。でも、そんな人たちを振り向かせることが出来たらすごいことなんじゃないか、ライブをする意味があるんじゃないかと思えるんです。

――2マンという形態についてはどう感じていますか。

柳田周作 僕は対決とかそういう感じではないです。ライブでバチバチした感じというのはあまり好きじゃなくて。お客さんは音楽が聴きたくてライブに来ているので、良い空間であることに越したことはないなと思っています。その日来てくれた人たちが1日ハッピーでいられる空間をPEDROさんと作りたいです。

桐木岳貢 初めて僕らを見るお客さんもたくさんいると思うんです。自分達のライブで見ていて思うのが、ノリ方がわからないといったお客さんの姿なんです。割と僕らはクールなイメージが強いのかなと思っていて、盛り上がる曲から聴かせる曲がたくさんあるので、皆さんにわかりやすいように提示できたらと思います。

さらに新しいことに挑戦したい気持ちがコラボに繋がった

――今回バンド初となるコラボ作品となりましたが、吉田さんがヨルシカさんをリスペクトされているとお聞きしています。

吉田喜一 普段からヨルシカさんの話はよくしていて、n-bunaさんの作る音楽が大好きなんです。n-bunaさんがギタリストというのもあるんですけど、すごくフレーズやニュアンス、ソウルが自分と近いものを感じていて。今回のレコーディング中でも柳田を含めて3人でギター談義で盛り上がりました。

柳田周作 僕もヨルシカさんは大好きです。曲もすごく良いし、MVもめちゃくちゃいいのでよく話題にはなります。ツアー先に向かう車の中でもヨルシカさんの曲を流したりしていましたから。

――コラボというお話はどのように進んで行ったんですか。

柳田周作 これまでも様々な挑戦してきた神サイが、さらに新しいことに挑戦したい気持ちがありました。自分たちでも曲は作ってきましたけど、これまでも自分達らしい曲は作れてきたと思っていて、さらにここから新しいエッセンスが欲しいという思いが出てきました。そういった話をメンバーとしていたところでコラボをしようという話が出てきて、誰とコラボするかという具体的な話になっていきました。海外ではフィーチャリングというのがすごく一般的に浸透していて、その曲がバズってこのアーティストは誰なんだろう? と言う感じで知られていくと思うんですけど、日本ではそういうのはあまりない気がしていて。そこにバンドの僕たちがやったら面白いだろうなと思ったというのもあります。

――どのような制作の流れがあったのでしょうか。

柳田周作 n-bunaさんに楽曲を作っていただくことが決まって、打ち合わせをさせてもらった時に、まず「どういう曲にしたいか」というお話をしました。僕がリファレンスとしてヨルシカさんのバラードソングを提示したら驚かれて、n-bunaさんは「激しいゴリゴリのロックを求めてくるのかと思った」とおっしゃっていて。僕はn-bunaさんの日本語やメロディの美しさに惹かれていたので、お互いの最大限を生かせるのがバラードだと思ったので、そこを目指して制作に入りました。

――アユニ・Dさんとの共演してみて、いかがでした?

柳田周作 アユニ・Dさんは力強い歌声が特徴だと思うんですけど、この「初恋」が呼んでいる歌声というのは真逆でした。そのなかで僕は歌を歌うという感じではなくて、語りかけるような気持ちで歌いました。なので、アユニ・Dさんにもつぶやくような感じ、マイクに喋りかけるようなイメージで歌ってほしいとお願いしました。アユニ・Dさんはいままでやったことがなかった歌い方だったので、初めて挑戦したその歌声が新鮮ですごく良かったんです。その初々しさというのもこの曲にすごく合っていると思いました。

――なぜ「初恋」というテーマに?

柳田周作 タイトルが決まったのはレコーディングが終了してからでした。テーマも何もない中でゼロから歌詞を作って行ったんですけど、これが大変で...。最近は主題歌なども多かったので、テーマがあってある種書きやすかった部分もあったのですが、久しぶりにゼロから作り上げたので、n-bunaさんの曲を聴きながら思いついたのが夏の海でした。作詞をしていくなかでストーリーが生まれて、考えた時に「初恋」しかないと思いました

音楽的にもっと成長していくことが課題

――デモを聴いた時、いかがでした?

黒川亮介 仙台公演が終わった直後にシンセメロが入ったデモを聴かせていただきました。初めて聞いた時に「n-bunaさんだ!」と思いました。サビに入る前のメロディーラインなど“n-buna節”みたいなものはデモでもしっかりでるんだなとすごく感動しました。併せてそこからどうやって自分らしさを入れこむのかと考え始めました。

――アレンジはデモから変わった部分も?

黒川亮介 n-bunaさんからは「自由にやってください」と言ってもらえたので、自分なりに変えた部分もありました。

――サビで聴けるギターは?

吉田喜一 あれはn-bunaさんのフレーズを自分なりにコピーしました。それはn-buna節を取り入れたいという考えが僕の中であったので、ニュアンスまでしっかりコピーさせてもらったんですけど、逆にギターソロでは自分がやりたいように弾かせてもらいました。

桐木岳貢 ベースは要所要所でデモに寄り添ったものにして、他は自由に弾きました。Aメロからサビ前まではベースが引っ張っていくようなアレンジになっていて、ベースが目立つので耳に残ると思います。音数がすごく少ないので音をどこまで伸ばすかはすごく気を付けましたね。細かいところなんですけど注目してもらえたら嬉しいです。あと、ベース選びもこだわりました。自分の普段使っているベースでは合わないなと思い、友人からベースを借りました。それで家で試して一本に絞って、アンプもマネージャーに話して合うものをレンタルしてもらって。なので音選びにもこだわりました。

柳田周作 n-bunaさんから「良い意味で神サイのグルーヴになって良かった」と言ってもらえて。すごくお互いの良いところを出すことが出来たと思っています。

黒川亮介 ドラムはまさにグルーヴを意識して叩きました。フィルとかフレーズはデモからそんなに変えていなくて、ドラムのスネア、ハット、キックの3点に全てを捧げたような感覚があります。太鼓の音にもこだわりました。

柳田周作 こういう雰囲気の楽曲はリズムがより重要だなと感じています。

――自分が書いたメロディではないところに作詞するというのはいかがでした?

柳田周作 大変でした。でも、苦悩したからこそ良いものが出来たと思っています。シンセメロを聴いて言葉をはめていくんですけど、打ち込みなのでかっちりとした音階なんです。僕がメロディを作るときはMIDIで打ち込まず、自分の感覚でメロディを考えているので、他の人が作ったメロディに“自分節”を入れていくのが大変でした。言葉がハマったとしても自分の歌にならない感覚があって。なので、自分なりにメロディを変えさせてもらったところもあったんですけど、n-bunaさんはそれも許容してもらって。すごくフラットに接してもらいました。

吉田喜一 n-bunaさんは半音の使い方が素晴らしいなと思いました。クロマチック(半音階)で上がるフレーズはヨルシカさんでもよく見られるんですけど、その使い方が天才的で。それがすごくキャッチーに聴こえてハッとさせられるところなんですけど、そこがn-bunaさんならではと感じています。あと、楽曲のビジョンが常に見えているということがわかりました。というのも僕はレコーディングが終わるまで、本当の意味での完成形は見えていなかったんです。マスタリングが終わったときに点が線に繋がったと思いました。コラボならではの制作だったと思うんですけど、n-bunaさんは最初からずっと見えていて、プロデュースして下さっていたんだなと思うと、“作品を創る力”というn-bunaさんの新たな魅力を見つけました。

柳田周作 n-bunaさんももちろんなんですけど、エンジニアの方の恩恵も大きかったと感じています。僕とアユニ・Dさんの声質は全く違うんですけど、Aメロでボーカルのパンニング(定位)を30度くらいでLRで振っているんですけど、<わざと戯けてみた>でセンターになるんです。それによってマジックが掛かると言うか、2人ボーカルがいるということを強調させているんですよね。サビでは2人がセンター寄りの定位になっているのに分離して聴こえるというギミックがあって、これはすごいテクニックだと思いました。バラードなんですけど、できれば大きめなスピーカーで聴いてもらいたいミックスになっています。

――定位で声質の違いをコントロールされているところに注目ですね。最後に、2021年下半期の展望をお願いします。

柳田周作 僕らは来年まで大筋のビジョンは決まっていて、そこに向けてやるべきことをやっていくんですけど、楽曲制作はもちろんなのですが、それぞれがスキルを磨いていくこと、音楽的にもっと成長していくことが課題なんです。これから先も楽しいことがたくさん待っているので、みなさんも期待して待っていてください。

(おわり)

ライブ情報

◆Live Tour 2021「エーテルの正体」 <TOUR FINAL>

9月22日(水・祝前日)【大阪】Namba Hatch *5月28日(金)【大阪】Namba Hatch振替公演

チケット料金 3,500円(税込・ドリンク代別途)

・ローチケ

https://l-tike.com/concert/mevent/?mid=494875

・イープラス

https://eplus.jp/sf/word/0000082516

・ぴあ

https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=G1080020

◆GM+

7月22日(木・祝)【大阪】Namba Hatch

出演:神はサイコロを振らない・PEDRO <2MAN LIVE>

前売りチケット:4,800円(別途ドリンク代600円必要)

https://eplus.jp/gmp/

◆TREASURE05X 2021

8月21日(土)【愛知】ダイアモンドホール

https://www.treasure05x.jp/

◆MONSTER baSH 2021

8月22日(日)【香川】国営讃岐まんのう公園

https://www.monsterbash.jp/#

◆SWEET LOVE SHOWER 2021

8月27日(金)【山梨】山中湖交流プラザ きらら

https://www.sweetloveshower.com/2021/

◆RUSH BALL 2021

8月29日(日)【大阪】泉大津フェニックス

https://www.rushball.com

◆「Ivy to Fraudulent Game presents "揺れる" 1.1」

9月1日(水)【東京】TSUTAYA O-EAST

出演:Ivy to Fraudulent Game・神はサイコロを振らない <2MAN LIVE>

https://eplus.jp/itfg/

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事