2ラッパー&3ボーカルから成る5人組DANCE&VOCALユニットのMADKID(マッドキッド)が7日、5th SINGLE「Gold Medal」をリリース。2014年に結成され2018年メジャーデビュー。2020年9月に所属事務所を独立。自ら設立した事務所Future Notesに移籍し、今年2月にリリースされた1st E.P.『REBOOT』で新たなスタートを切った。インタビューではこの上半期を振り返ってもらいながら、新曲「Gold Medal」とレーベルメイトであるLACCO TOWERの真一ジェットが作曲編曲、メンバーの細川大介がギターを担当した「グッバイ・ティーンエイジャー」の制作背景に迫った。【取材=村上順一】
改めて見たら恥ずかしい
――上半期を振り返ると、どんな半年間でしたか。
SHIN 僕はドラムに没頭した半年間でした。この上半期、バンドで演奏することが決まってからずっと練習していました。週に4回くらいスタジオに入って、また家でも練習するルーティンが続いていました。
――先日、初めて皆さんで演奏を合わせた時の動画をアップされていましたね。
SHIN 最初は「Stay with me」という曲を合わせました。初めて合わせたにしてはすごく良い演奏が出来た、と自画自賛していたんですけど、今、改めて見たらすごく恥ずかしいです(笑)。
――成長された証でもありますよね。YOU-TAさんはこの半年間いかがでした?
YOU-TA 僕もギターに集中した半年でした。過去にギターはやっていたので、多少は弾けたんですけど、立って弾いたことがなかったので、やってみてこんなにも弾けないものかとビックリしました。ストラップを高くしてひいていたら、ディレクターさんからもう少し低い方がカッコいいと教えていただいて、やってみたら全く何も弾けなくなって(笑)。
LIN 練習初日、僕しか立って弾いてなかった(笑)。
YUKI 僕は自分たちで弾いたのももちろんですが、生バンドでライブをやれたことも印象に残っています。ずっと夢だったので叶って嬉しかったです。K-POPなどで生バンドでライブをやっているのを見て、生の力というのもあるのは知っていましたし、自分たちもその上で歌ってみたいなとずっと思っていました。
――オケとはまた違った臨場感がありますよね。LINさんはこの半年いかがでした?
LIN 去年はほとんど何もできていなかったので、コロムビアさんに戻ってきて、こんなにもリリースを続けて出来るとは思っていなかったので、それがすごく嬉しくて。音楽を作ってライブをすることがすごく好きなので、本当に充実した半年でした。
――KAZUKIさんが印象的だったことは?
KAZUKI やっぱり生バンドでやりたい、というのはずっと夢としてあったので印象的でした。ワンマンの時はいつも感極まって泣いてしまうんですけど、今回は泣かなかったんです。
YOU-TA それ、泣いた時のテンションの言い方だけど(笑)。
KAZUKI 昨年の12月に赤羽ReNYで行ったワンマン『MADKID ONE-MAN CONCERT
–REBOOT-』では、LINの最初に発した言葉で僕は泣いちゃって。でも、今回は涙こそ出なかったんですけど、違う方向の感動がありました。
――MCでグッときたりしなかったんですか。
KAZUKI 今回のMCはダメでした…。
LIN みんなMCはフニャフニャしてたよね。
YOU-TA 初めてイヤモニをしてライブをやったんです。タイムキーパーの方がMC中に「あと何分です」とか指示を出してくださるんですけど、僕らがまだイヤモニに慣れていなくて、聞き入ってしまって指示が入った瞬間みんなフリーズして(笑)。イヤモニは声を張らなくても自分の声がしっかり聞こえるので、すごく歌いやすくて良かったんですけど、MCは本当に下手くそでした。
マスロックを取り入れた「Gold Medal」
――さて、今回のリード曲「Gold Medal」はどんな想いを曲に落とし込んだんですか。
LIN 今回、僕の曲をリードトラックにすることが決まっていた中で制作した曲です。テーマや曲名はシンプルでいいんじゃないかというのがありました。オリンピックの年というのもあって、そこに僕らのマインドを曲に落とし込めたらいいなと思いました。
――リードトラックへのプレッシャーみたいなものはありました?
LIN 制作している段階では、リード曲でもカップリングでも臨む姿勢は変わらないです。でも、一番緊張するのがメンバーとスタッフさんがいる中で、曲を初めて聴いてもらう時なんです。
YUKI そうだったんだ。僕らはLINの作る曲をリスペクト、そして信頼しているので、カッコいい曲が来ることはわかっていました。あとは僕らがどう昇華するかだと思いました。トラックを作る初心者の僕からすると、カラーを出すことと癖というのは違うと思っていて、一人でやっていると癖が出てきてしまうと思うんです。でも、そういった癖みたいなものがLINにはなくて、ユニークな部分がありつつ、テンポ的に単調になりやすいところをギミックを使って工夫しているんだろうなと感じました。メンバーが作ったトラックにラップを乗せるのはプレッシャーもあるんです。どんどん引き出しを開けて行かないといけないなって。それによって成長出来ている部分もあります。
――皆さんはこの曲を初めて聴いた時、どんな印象を持ちましたか。
KAZUKI これまで沢山、LINの曲は聴いてきたんですけど、新鮮な感覚もありました。
SHIN LINの良さもありつつ、皆さんに受け入れられやすい楽曲に仕上がっているなと思いました。あと、BPM128というのも相まってすごく聴きやすいなと。
YOU-TA 最初、この曲を聴いた時はワンショットのサンプルが沢山入っているという印象が強かったです。聞き馴染みのある音が入っていて、「それ入れるんだ」と遊び心があるなと思いました。
LIN この曲は羊の皮を被った狼みたいなところはあると思います。これまで僕はダンスロックっぽい曲を作っていたんですけど、今回はマスロックの要素を持ったギターを楽曲に取り入れています。こういったトラックにマスロックのギターが入っているというのは、まだやっている方も少ないんじゃないかなと思います。
――どんなところをこだわりましたか。
LIN 今回僕は4つ打ちに初挑戦したんですけど、いろんな曲を聴いてキックが4つ鳴っている隙間をどうしようか、というのがありました。そこでポイントになったのがギターです。昨年リリースしたシングル「来・来・来」のカップリングの「Vernal Breeze」という曲で参加してもらったTeppe君に今回、ギター弾いてもらえたことが、ポイントの一つになっています。僕は彼にマスロックっぽい音が欲しいとだけ伝えたのみで、リファレンスを出さなかったんですけど、お願いした3日後くらいに今入っているギターが送られてきて、バッチリでした。このギターが入ったことによってギュっと曲が締まったと思います。
――確かにギターは印象的でした。SHINさんが思う注目ポイントは?
SHIN キャッチーだしみんなで歌えて、すごく楽しい気持ちになれる。そして乗れるサビです。背中を押してくれるようなポジティブな歌詞になっているので、注目して是非聴いてもらいたいです。特に<くだらない事全て投げ捨てよう>という歌詞が僕はすごくストレートで良い言葉だなと胸に響きました。。ここまでストレートに言い切ったのはMADKIDではあまりなかったんじゃないかなと。
YUKI そういえば、SHINちゃん、<We crushed 'em 打っ千切って>の“打っ千切って”をレコーディング当日まで“うっちぎって”と歌ってたよね。
SHIN そうでした! そのエピソード忘れてた(笑)。
KAZUKI “うっちぎって”で一度レコーディングOKが出て終わってましたから。
SHIN 他のメンバーが“ぶっちぎって”と歌っているのを聴いて自分が読み間違えていることに気づきました…。
――読み間違いですね(笑)。KAZUKIさんのお気に入りポイントは?
KAZUKI みんなで作詞をしたんですけど、僕が考えたメロディのところにどんな歌詞が入るんだろうと楽しみにしていました。<Yeah, I'm No.1>というサビの最後がそうなんですけど、この言葉が入った時にすごくハマったなと。ピアノでこのメロディを考えていたところにLINがここは<Yeah, I'm No.1>がいいんじゃないかと言ってくれて、そのまま音数も変えずにハマったので嬉しかったですし、「Gold Medal」というタイトルにもぴったりで制作しているなかで一番衝撃ありました。
――YOU-TAさんの注目ポイントは?
YOU-TA YUKIのラップで<曖昧な Feedback なんて 音のドーピングで消し Another level へ go>です。僕は自分以外のパートも覚えて歌えるんですけど、最初このラップを音だけで聴いた時は何て言っているのかわからなかったんです。でも、歌詞を見たらすごく良いことを歌っていることがわかって。<消し>と<Another>が繋がっているんですけど、そこがまた良くて。
――ラップまで覚えているのはすごいですね。
YOU-TA ライブでトラブルがあった時にも歌えるようにしていて。実際、LINが熱を出してしまってライブに出れなかった時は僕がラップを代わりに歌ったこともありました。あと、ラップを練習することでリズム感が良くなると思っているところもあって。余談ですけど、知り合いとカラオケに行くとMADKIDの曲を歌ってほしいとリクエストをされることがあるので歌えた方がいいというのもあります(笑)。
――なるほど。特にラップって早くて聞き取りづらいこともあるので、歌詞を読んだ時に初めてわかることもありますよね。
YOU-TA それで面白いことがあって、「Puzzle」という曲の、LINのバースで<ピッタリ合わさったピース>という歌詞があるんですけど、僕の友達は「ベッドではそっとキス」だと勘違いして覚えていて。
一同 (笑)。
LIN 今度それで歌ってみようかな(笑)。
――YUKIさんはどんなラップにしようと制作しましたか?
YUKI 僕は言葉を結構詰め込んでしまうタイプなので、2番でラップを入れることが多いんですけど、今回は最初のバースを担当することになりました。曲の入りはすごく大事だと思っていて、そこでこの曲を聴くか聴かないか、皆さんが決めるところだと思うんです。なので、爪痕を残そうというよりは聴く人を惹きつけながらも、次のメンバーにパスすることが大事だと思いました。それもあっていつもとは違う作り方になったんじゃないかなと思います。間を作る、韻をわかりやすく踏むことだったり。
LIN 僕とYUKIはどちらかというと内側に向かっていく感じで、SHINがすごく前向きな性格なんです。なので、SHINにアイデアノートみたいな感じで言葉を書いてもらいました。ニュアンスは変わっているんですけど、そのノートの言葉が随所に入っています。それがこの「Gold Medal」をより明るくしてくれているんじゃないかなと。
――そのアイデアノート、どんなふうに書かれているんですか。
YOU-TA SHINは思想系の言葉を書くんです。
LIN この言葉の続きかなと思ったら、読んでいた小説の感想が出てきたり(笑)。それが「悪いことはいつか終わる」という感想で。
SHIN 間違えてみんなに渡すノートに感想を書いてしまって…。
KAZUKI “Gold Medal”をあげようと書いてあった次に脈絡もなく“大地を揺らそう”と書いてあったんですけど、関係のなかったその“大地を揺らそう”が採用されたり(笑)。
僕なりの気持ちを伝えたかった
――カップリングの「グッバイ・ティーンエイジャー」はLACCO TOWERの真一ジェットさんが作曲と編曲を担当されていますが、どのような経緯があったのでしょうか。
YOU-TA レーベルの大先輩というところで僕らもぜひご一緒したいと思い、今回楽曲を作っていただくことになりました。リモートで打ち合わせをして、どんな曲でどんなテーマにするのかお話しました。その中で真一ジェットさんも僕らの楽曲を聴いてくださったり、YouTubeを観て僕らの人間性、個性を把握して制作していただきました。
――ティーンエイジャーというテーマが生まれた経緯は?
LIN 若者たちへというテーマが出て、それはLACCO TOWERさんからみたら僕らは若者というところからでした。それを僕たちの目線で書いたのがこの曲なんです。
YUKI 僕らの成長した部分を歌詞に反映させられたらいいなと思いました。数年前の自分達への感情だったり、わかりやすいメッセージ性のある曲にしたかったんです。歌詞の出だしの4行はLINが書いて、その言葉をきっかけに紡いでいきました。
――アレンジなんですけど、MADKIDでバンド演奏することも想定されているんですか。
YOU-TA もちろん自分達で演奏してみたい気持ちはありますけど、現状では難しすぎて…。でも、この曲をいただいた時に真一さんに「僕たちもこの曲が弾けるように頑張ります」と伝えさせていただいたので、挑戦したい1曲です。
――楽しみにしています! KAZUKIさんは注目してもらいたいポイントはありますか。
KAZUKI 僕はLACCO TOWERさんの好きな曲に「遥」という曲があります。まさか一緒に音楽ができるとは思っていなかったのですが、こんなチャンスは滅多にないと思い僕なりの気持ちを伝えたいなと思いました。制作段階でこの曲調なら入れられそうだと思い、自分でも試みたんですけどどうしても前後の言葉とうまく噛み合わなくて断念しました...。それでYUKIに2番のサビで“遥”というワードを入れられないか相談しました。そうしたらYUKIがその思いを汲み取ってくれて歌詞に<さぁ 遥かその未来へ>と入れてくれて。
YUKI KAZUKIからそういう風に頼まれたのも初めてでしたし、すごく真剣な顔でお願いされたので頑張りました。
――ちなみにSHINさんは“ティーンエイジャー”の頃は、どんな思い出がありますか。
SHIN 小学生の時は学校が終わってからは山に行ったり秘密基地を作ったりしてよく遊んでいたのを覚えています。高校に進学する頃には、歌とダンスをやるために上京したかったんですけど、両親に反対されまして。中学の先生からは「将来のために資格を取った方が良い」とアドバイスをいただいたので、商業高校に進学しました。最初の1年で高校で取れる資格を全部取りました。
――すごいですね!
SHIN それは全て取ってしまえば勉強はしなくても良いだろうと思ったからなんです。なので、高校2〜3年は早く東京に行ってチャンスを掴みたいと妄想して過ごしていました。
LIN SHINは同世代のはずなのにアニメとか全然話が合わないんです。
SHIN みんなと同じ時代を生きていたんですけど、なぜかみんなが話していることが全然わからなくて(笑)。
――全く違うところに意識が入っていたんですね。最後に今のMADKIDのモードを一言で表すとしたら、どんな言葉が合うと思いますか。
SHIN 「進む」です。一歩一歩着実に踏み出していくことが大事なのかなと思っています。そして、いろんな人たちに自分達から会いに行ける機会を増やしていきたいです。
(おわり)