ガンダムシリーズ最新作『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』が6月11日に全国公開される。アムロとシャアの最後の決戦を描いた『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』から33年。その世界観を色濃く引き継ぐ富野由悠季氏による同名小説を映画化。『閃光のハサウェイ』は反地球連邦政府運動マフティーが挑む新たな戦いを縦軸に、そのリーダーであるハサウェイ・ノア、謎の美少女ギギ・アンダルシア、連邦軍大佐ケネス・スレッグの交差する運命を横軸に描くストーリー。インタビューでは今作の主人公であるハサウェイ・ノアの声を演じた小野賢章と、主題歌「閃光」を担当した[Alexandros]の川上洋平(Vo/Gt)、磯部寛之(Ba/Cho)、白井眞輝(Gt)、4月に新メンバーとして加入したリアド偉武(Dr)に、どのような気持ちでこの作品と向き合ったのか、そして何を感じたのかを聞いた。【取材=村上順一/撮影=木村武雄】
『閃光のハサウェイ』は考える余白を与えてくれる作品
――完成した映像を観てどのように感じましたか。
小野賢章 これまで関わらせていただいた作品の中でも一番と言っても過言ではないくらい、芝居のプランなど事前に色々話し合いました。アフレコでもセリフの一つひとつにこだわって何パターンも録りました。なので、どのセリフが採用されたのかは完成したものを見ないとわからなかったので、観た時にホッとしたというのが正直なところです。あと、観ている人に考える余白を与えてくれる作品だなと思いました。それは、この作品が細かな説明があまりなく会話だけで進んでいくんですけど、それぞれのキャラクターの考え方もあり、それが正解とも描かれてはいないので、考察する余白があると思いました。そして、沢山取材も受けさせていただいたり、対談もさせていただいて、この作品の大きさというものを実感しています。
――小野さんは今回ハサウェイ・ノアを演じるにあたって、喜怒哀楽のどれにフォーカスされましたか。
小野賢章 ハサウェイには表の顔と裏の顔があって、普段は好青年という表の顔で話しているけど、心の中はずっと反地球連邦政府運動「マフティー」としてテロを行う計画を考えていたりするんです。なので、僕はハサウェイに声と表情、身体と気持ちが全てバラバラな印象がありました。そのバラバラな各パーツに喜怒哀楽の全てがあるみたいな感覚なんです。
――川上さんはこの作品を観ていかがでしたか。
川上洋平 僕はまだ完成したものは観られていないんです(※取材時)。絵コンテの状態で『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』を見させていただいてはいるんですけど、その段階からすごく面白かったので、早く完成したものを見たいです。
――白井さんはいかがですか。
白井眞輝 ガンダムの長編を観るのは初めてでした。そこで感じたのは世界観の作り込み、設定の緻密さ、本当に存在する団体が戦っているんじゃないか、と思えるくらい作り上げられていて凄いなと思いました。モビルスーツ同士の戦いがメインだと思っていたんですけど、人間の憎悪や信念でそれぞれが動いていて、どちらが正義か悪かという境界線もないのは、すごいリアリズムだと思いました。僕の中でこんなにもシリアスなのか、とガンダムのイメージが変わりました。
――磯部さんは今作に携わってみていかがでしたか。
磯部寛之 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』に参加させていただいた事が光栄で、すごく嬉しかったです。今回曲を制作するにあたってストーリーを伺ったり、お話をして曲の方向性を詰めていったんですけど、実際制作に入るにあたってガンダムという枠を一回取っ払ってみたり、自分たちの表現を大切にしながら作っていきました。ガンダムと[Alexandros]のお互いの魅力がぶつかって化学反応が起きるのが一番だと思いながら作った楽曲なんです。作品のエンドロールで「閃光」のイントロが流れた時に、何十年も続いているガンダムワールドに僕らの感性が入ったんだと実感が湧いて、なんとも言えない充足感、今後の僕らにとっても糧になる経験になりました。
リアド偉武 僕はまだ完成した作品は観ていないんですけど、台本など観させていただいて、色んな正義感や考え方というものに、きっと皆さんは共感を得るんだなというのがわかりました。なので、早く劇場のスクリーンで観て、僕も感動したいです。
――劇場で流れる「閃光」はまた良さそうですね。
リアド偉武 そうなんです。劇場で自分のドラムが流れるというのは初めてで、その感動を味わいたくて公開されるまで取っておいているんです。
――楽しみですね! さて、[Alexandros]のバンド名は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の作中で出てくる看板がモチーフになっているという情報を聞いたのですが、本当ですか。
川上洋平 『逆襲のシャア』でハサウェイが出てくるところで、書店の看板がALEXANDERS(アレクサンダース)なんですよ。それも僕らのバンド名の候補にあったので運命的なものを感じています。
――さて、川上さんが楽曲の大枠を作られているとのことなのですが、「閃光」はどのような気持ちで楽曲制作に臨んだのでしょうか。
川上洋平 僕らは彩を添えるというイメージで、作品を観終わった時のカタルシスを彩ってあげたい、という意識で作りました。思う存分自分たちのやりたい事を詰め込んだんです。
――小野さんは「閃光」を聴いてどんな気持ちになりましたか。
小野賢章 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の最後にこの「閃光」が流れてきて泣きそうになりました。例えばラグビーの試合で戦う前に気持ちが高まり過ぎて涙が出てきてしまうといったような、それに近い感覚があったんです。特に歌詞にある「もう一度」という言葉は、僕が『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』という作品に向き合って来たこともあり、すごく刺さるものがありました。歌を聴いているだけでもグッとくるんですけど、ちゃんと歌詞を見て聴くとよりエモーショナルで心に刺さりました。僕にとっても思い入れのある曲になりました。
運命めいたものを感じている
――今回、川上さん、白井さん、磯部さんはハサウェイとニアミスするダバオの市民としてアフレコに初挑戦とのことですが、体験してみていかがでしたか。
川上洋平 すごく楽しかったんですけど、プレッシャーでしたし、改めて声優さんのお仕事は凄いなと思いました。普通のお芝居とは違うと思いますし、ガンダムという歴史のある作品の一部になれるという嬉しさもあり、その中でこの作品を汚してはいけないなと。汚してしまったかもしれないですけど(笑)。
一同(笑)。
磯部寛之 素直にお話しするとアフレコで失うものはないので、吹っ切れた状態でスタジオに入りました。ただ実際にやってみたら一言二言のセリフなんですけど、表情が見えないというのはこんなにも大変なのかと痛感しました。次があるかはわからないんですけど、今回やってみて悔しい部分もあったので、もし次回アフレコの機会があったらもう少し上手くやりたいなと思っています。
白井眞輝 僕はアニメが好きなので声優という仕事に興味がありました。田中真弓さんや横山智佐さんとか好きな声優さんも何人もいます。それで今回アフレコに臨むにあたって、こうしたらアニメに馴染むんじゃないかというのを、自分なりに研究して臨んだんです。セリフは棒読みではダメだし、逆に変に寄せ過ぎてもダメだなとか、家でいろんなパターンを考えました。
川上洋平 一番上手かったんですよ。こんな声出るのかみたいな。
――小野さんのハサウェイの声はいかがでした?
白井眞輝 褒め言葉になるのかわからないですけど、小野さんの顔が思い浮かばないくらいキャラと声が重なっていて、作品に惹き込まれる声でした。
――リアドさんはアフレコの現場には同行されたんですか。
リアド偉武 いえ、僕はスタジオには行けていなくて、動画で3人がアフレコに挑戦している姿を見たんですけど、すごく楽しそうでした。
川上洋平 それはめちゃくちゃ恥ずかしい動画だ(笑)。
――貴重な初めてのアフレコ動画見てみたいですね。最後に『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は自身にとってどのような想いが生まれた作品になりましたか。
川上洋平 僕たちは「RX-RECORDS」というレーベルに所属しているんですけど、そのRXというのはガンダムの型式番号の「RX-78-2」から来ています。マネージャーがガンダムの大ファンで「いつかガンダムの仕事が来たら良いね」と話していて、10年ほどを経て今回このお話をいただいて、「こんな事もあるんだ!」とすごく嬉しい気持ちでいっぱいです。しかもリアドをメンバーとして迎えて、[Alexandros] 11年目一発目の作品なので、自分たちも運命めいたものを感じていますし、背中を押してもらっているような、次の章へのページを開いた感覚があります。
小野賢章 まさか自分がガンダムのパイロットになれるとは思っていませんでした。こんなに光栄なことはないですし、作品と向き合う時間を沢山いただけましたし、役者人生の中で良い経験をさせていただいた期間だったと思います。今後色んな作品を掘り下げていく中で、この『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』経験が活きていけばいいなと思っています。
(おわり)
▽小野賢章
ヘアメイク:齋藤将志
スタイリスト:DAN
▽[Alexandros]
ヘアメイク:Maki Sakate [vicca]