ちあきなおみの作品80曲が収録された5枚組BOXセット『The Anthology of NAOMI CHIAKI ちあきなおみ大全集』が17日、1000セット限定で20年ぶりに復刻盤として再発売された。

 今年に入って、昭和の歌謡界を駆け抜けた歌姫たちの話題がたびたびメディアを賑わせている。まずは山口百恵。1月30日にNHKで放送された引退コンサート(1980年)の特番は夕方の時間帯だったにも関わらず、8.6%の高視聴率を獲得。放送後には、同じ内容を収録したDVDが2009年の発売以来、初めてトップ10入りを果たすなど、再ブームを巻き起こしている。一方、1985年に引退した高田みづえは、1月20日に全183曲がサブスクで一挙解禁。そのニュースが報じられると、Twitterで「#高田みづえ」がトレンド入りするなど、今なお根強い人気を誇ることを実証した。

 現在は活動していない彼女たちが注目を浴びる背景には、長引くコロナ禍の影響も挙げられよう。有観客のコンサートや音楽番組が激減し、代わって過去の映像を流す番組が増えているからだ。CSでは昭和の歌番組『ザ・ベストテン』や『夜のヒットスタジオ』の再放送が人気を集めており、BSでは歌手や作家にスポットを当てた歌謡番組が数多く放送されている。最近は地上波でも、平成生まれのタレントや一般人が昭和歌謡の魅力を熱く語る特集が目に付くようになった。

 そうした機会を通じて、バンドの演奏で生歌を披露するソロ歌手の実力や魅力が改めてクローズアップされているわけだが、その筆頭といえる存在がちあきなおみだ。幼少期から米軍基地のステージでジャズを歌い、実力に磨きをかけた彼女は1969年にデビュー。72年には「喝采」で日本レコード大賞を受賞し、歌謡界の頂点に立つ。その後もジャンルを問わない比類なき歌唱力で大衆を魅了し続けるが、92年に活動を休止。以来29年間、一度も表舞台に姿を見せることなく現在に至る。

 だが世間はちあきを忘れなかった。その間、幾度となく特集が組まれ、CD化されたアルバムや各種ベスト盤、BOXセットはいずれもヒット。2019年に発売されたコンセプトアルバム『微吟(びぎん)』は本人不在にも関わらず、現在までに35,000枚を超える異例のセールスを記録している。近年はBSで制作された「ちあき特番」が視聴者の要望で繰り返し再放送されているが、そのたびにチャートを上昇し、ロングセラーとなっているのは彼女の歌が時代に左右されない普遍的魅力を備えている証しだろう。

 銀座・山野楽器本店の担当者も「特番の放送後は必ず反響があります。多い時は銀座本店だけで700枚以上。誰にも真似できない、語りかけるような魂の歌声を持つちあきさんは存在自体が昭和の空気感そのもので、当時を知る聴き手にとっては自分の人生と重ねられるところも魅力なのだと思います」と証言しているが、そんなちあきのすべてが詰まっていると言っても過言ではないBOXセット『The Anthology of NAOMI CHIAKI ちあきなおみ大全集』がアンコールの声に応えて、このたび20年ぶりに再プレスされることになった。

『The Anthology of NAOMI CHIAKI ちあきなおみ大全集』

 1000セット限定で復刻発売される同BOXは、5枚のCDにオリジナル曲はもちろん、演歌やムード歌謡、昭和の名曲、叙情歌など、全80曲を収録。彼女の現役時代を知らない若い世代も「伝説の歌姫」の多彩なボーカルと圧倒的な表現力が堪能できる内容だ。

 来たる3月26日(金)にはBS-TBSで『魂の歌!ちあきなおみ 秘蔵映像と不滅の輝き』(初回放送:2020年10月)が再放送される。【濱口英樹】

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