DEEN「一歩引いて見ることが長続きの秘訣」常に期待に応えるグループの矜持
INTERVIEW

DEEN

「一歩引いて見ることが長続きの秘訣」常に期待に応えるグループの矜持


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:21年01月20日

読了時間:約10分

 DEENが20日、カバーアルバム『POP IN CITY ~for covers only~』をリリース。本作は幅広い世代や世界の音楽ファンやアーティストからの再評価が進むジャパニーズシティポップの名曲の数々をカバー。デビューから28年間コンスタントに作品を発信し続け、精力的な活動で飛躍し続ける彼ら。インタビューでは今作でフォーカスしたシティポップという音楽の背景や現在のスタンス、そして現代の音楽シーンとシティポップ黎明期との違いを聞いた。また「寝かせてある」というオリジナルアルバムの話題についても池森秀一(Vo)と山根公路(Key)に語ってもらった。【取材=平吉賢治】

28年間走り続ける秘訣とは

『POP IN CITY ~for covers only~』通常盤ジャケ写

――DEENはルーツとしてシティポップがあるのでしょうか。

池森秀一 シティポップを作ってきた先人達もブラックミュージックなどを通っていると思うので、繋がると思います。僕らも根本的にブラックミュージックやジャズ、フュージョンなどは大好きです。AOR(アダルト・オリエント・ロック)などのルーツはソウルやR&Bにもあると言われているので、そこからだんだん先鋭的な当時の日本のミュージシャンの方達がファンキーで素敵なグルーヴ感を表現していったという経過があると思うんです。

――シティポップを音楽的にどう捉えていますか。

山根公路 当時はアイドルがメインストリームだとすると、シティポップは大人のおしゃれな音楽のイメージというのがあります。

池森秀一 フォークがブレイクした1970年代から「おしゃれな人達が出てきた」というところじゃないでしょうかね。当時、フォークは「叫び」というか、音楽はフォークだけど歌っていることは社会的なメッセージだったり。そこからだんだん世の中の志向性も変化して、おしゃれな音楽を作るアーティスト達が出てきたというか。

山根公路 時代の流行りというようなものがありましたよね。

――時代背景も音楽に関係しているのですね。

池森秀一 それは絶対あると思います。だから今はどんなジャンルでも出るんですよね。僕は今の音楽は凄いと思います。1曲の中で難しいパートを入れても、それぞれが得意なことをやるから成立するのかなと。今はボーカルグループも多い時代だから、1曲の中でジャズからロックからブラックミュージックと色々入っていて、それが1曲として成立しているから凄いと思います。

山根公路 そうですね。昔はレコードに2500円くらい出さないと買えなかったんです。ということは、やはり聴きたい音楽を選んで聴いていたと思います。今は何でもサブスクリプションサービスなどですぐ聴けてしまうので「俺はロックだ」「俺はジャズしか聴かない」というのがない世代だと思います。そういう意味では今の多様性は凄いです。

――デビューから現在まで28年間、コンスタントに作品を発表されていますが何かコツがあるのでしょうか。

池森秀一 チームの力です。これは誇るべきかと思います。やはりみなさんがいなければ。

――継続により生まれる矜持としては?

池森秀一 長くつづけてきたからこういう音楽をやっても重みがあったり、若いミュージシャンとやる時にアプローチの仕方を的確に言えたり。世代が違ってもそこで信頼が生まれます。「こんな曲あったんですね!」とか。そういうことがやれる環境がある気がします。

山根公路 自分達も周りの方々から教えられたことはその人達の経験だったろうし。自分達もそういう経験があって、下の世代の方々と一緒にやると色んな引き出しを伝えることができます。そうやって必然とできるコミュニケーションは財産で、自分達の引き出しなのかなと思います。

――28年間で、へこたれそうになったりすることもあった?

池森秀一 しょっちゅうありますよ(笑)。例えば、20代の頃に全国をホールツアーで回って毎日ライヴと移動を繰り返していた時。その頃は多分、忙しすぎて音楽が好きじゃなくなったりする時もあるよね。そういうのにぶつかると、「忙しすぎるのも駄目だな」というのもあるよね?

山根公路 うん。

池森秀一 それを学んで次に活かしてきた感じはあります。ストレスがピークになる前に「次はもう少しこうしよう」と。DEENという象徴を一歩引いて見られるのが多分上手くいった秘訣かなと。DEENに対して期待していることをやるというね。多分それが必然的に磨かれていったというのはあるかもしれないです。プロデューサーの恩恵も感じながら「期待を裏切らないようにやろうね」みたいな。そういうのがDEENの良さなのかなという気がしているんですよね。それで「期待に応えられてないな」など、そういう落ち込みというのを繰り返しながらまた学んでやってきたのかもしれないですね。

シティポップ、AORというテーマで生まれた秘蔵のアルバム

――本作の選曲はどのように進んだのでしょう。

池森秀一 メンバー、スタッフで今のDEENが表現すべき楽曲をチョイスして行きました。

――思い入れの深い収録曲などは?

山根公路 「プラスティック・ラブ」かな!

池森秀一 この曲を外国の方がリミックスをしたのが注目されてシティポップのブームが起きたというか。

山根公路 この曲はいい意味でマイナー感がありつつその時代のおしゃれな雰囲気、車でラジカセで夜聴きながら走るみたいなイメージがシティポップ感なのではないかと。自分の中ではシティポップはそういうのと本作ジャケットのこのイメージですよね。

――「プラスティック・ラブ」の原曲のアレンジとはかなり異なる?

池森秀一 違いますね! これは思い切りR&Bのアプローチで。

山根公路 原曲はもう少しフュージョンっぽい感じで、聴くとかなり違うと思います。

――今回のDEENのバージョンは現代の最新のアレンジ、サウンドと感じました。「RIDE ON TIME」も素敵なアレンジです。

池森秀一 リードボーカルが山根公路だからね!

山根公路 以前ビルボードとブルーノートでやったツアーで1曲、自分のソロコーナーで演奏した曲が「RIDE ON TIME」だったんです。それでシティポップをやろうというアルバムのコンセプトが出た時に「山根ヴォーカルで入れよう!」と。そういう経緯ですね(笑)。

――なるほど(笑)。今作はシティポップのカバーアルバムですが、DEENがシティポップに注目していたというのもあるのでしょうか。

池森秀一 実は、去年の緊急事態宣言の頃にオリジナルアルバムを制作していて、テーマがシティポップだったんです。それをワインのように寝かせています。東京オリンピックも予定されていたのであらためて“TOKYO CITY”をテーマに大人が聴けるJ-POPを作ろうということで1枚制作しました。

 ツアー等スケジュールがいろいろ変化する中で制作に没頭できる期間が長くなりもう1枚カバーアルバムはどうかなという企画が持ち上がりました。このシティポップを代表するアーティストの楽曲をやった方が、より次のオリジナルアルバムへの流れ的にもいいかなと。だからそういう意味では良かったですよ。シティポップというテーマでオリジナルアルバムを作らなかったらここにはたどり着いていないので。これが最高傑作のアルバムだと思っていまして。今作のカバーアルバムも音楽的な観点で相当いいですよ!

山根公路 元があるもの、みなさんが知っているヒット曲をどういう風にするかというのは凄く難しいんです。みなさん原曲のイメージを持っていらっしゃいますので、そこに「いいね」と思って頂くにはかなり難しいというか。そういう部分も、もちろん挑戦的な部分も含んでいるので、自分達では納得したところなので是非みなさんに聴いて頂きたいなと思います。

――カバーならではの難しさもあると。

山根公路 思い切り変えちゃうのも変な話だし、全然伝わらないし、かといって同じようなものだと「同じじゃない?」みたいな感じになったり(笑)。そのバランスというか。歌は池森の力があるし、そういう部分ではアレンジなど助かっているところがあったりと。

――本作ではソウルフル、ジャジー、ラテン調、ロックテイストと様々なアレンジが聴けますね。

池森秀一 「この曲にはこういうアレンジしよう」と、アレンジャーにちゃんと全部明確に提示したんです。「埠頭を渡る風」はもともとラテン調じゃないですか? これは絶対4ビートが合うなと思って。「埠頭を渡る風」は曲が強すぎて、どんなアプローチしても大丈夫だと思って「4ビートにしてみて」と言いました。

――「君は 1000%」はラテン調アレンジですね。

池森秀一 これは絶対ラテンだと思いまして。「真夜中のドア/Stay With Me」はちょっとファンクなアプローチで。編曲の大平勉さんは「プラスティック・ラブ」もそうだし、ファンクの土台を作るのが凄く上手くて。その他の収録曲も全曲明確なアレンジを提示しました。

――なるほど。ところで本作の初回生産限定盤の特典 Blu-rayの全曲完全ノーカット収録『2020年 Summer Resort Live』の公演の感触はいかがでしたか。

池森秀一 コロナ禍のツアーでガイドラインに沿って初めてやったので緊張感はありました。その中でできることをということで、とにかく聴き入ってもらおうと。バラードの世界にたっぷりみんなをお連れしたいというテーマでやったツアーなので、それはそれでひとつの作品になったと思っています。

――コロナ禍という状況下でのライブについてのビジョンはありますか。

池森秀一 この状況はずっとではないと思いますから、自分達がやりづらくなったなと感じさせないようにしたいなと思っています。

山根公路 発信としてはライブも、制作してCDを出すというのもあるし、そういった意味では時間がある中で制作をしたり新しい機材で色々やったりなど、勉強する時間という意味もあると思います。

池森秀一 お家時間でジャケットを見ながらじっくり音楽を聴くなど、そういう豊かな音楽の聴き方が見直されるといいなという願いもあります。ライブとは違う自分の空間で、好きなオーディオやスピーカーを見つけて、CDやレコードをしっかり聴くという時間をつくるチャンスでもありますよね。アナログレコードは周波数的にCDより上だから、人間がリラックスできる周波数が出ているんですよね。

――ハイレゾ音源でもその周波数は出る?

池森秀一 ハイレゾでも出ます。今作もハイレゾでダウンロードできますので。ハイレゾで聴くと、よりリラックスできます。周波数の44.1kHzと96kHzとでは全然違いますから!

30周年目前の展望と「池森そば」の魅力

『POP IN CITY ~for covers only~』初回盤ジャケ写

――ところで、池森さんは蕎麦にかなり精通されているようですが、そもそもなぜ追求しようと?

池森秀一 以前「武道館公演をやるなら鍛えようよ」と、パーソナルトレーナーに言われ、そこから鍛えて食べ物も気をつかっていたら筋肉が6kgくらい増えたんです。でも、ある時「自分はどこに向かっているんだろう?」と思って(笑)。それで落とすにはと思っていたら1冊の本に出会い、そこに「朝食を抜きなさい」と。だから朝は野菜ジュースなど、昼は蕎麦、夜は好きなものを食べる食生活にしら約1カ月半で6kg落ちたので自分には合っているんだなと。「そんな生活をしているよ」と、『マツコの知らない世界』(TBS系)の方に話が伝わって、それを切り取られたら“蕎麦森”になっちゃったという(笑)。

――すると相当蕎麦がお好き?

池森秀一 大好きです! 全国ツアー行っても蕎麦屋ばかり行くからね。

――おすすめの蕎麦の食べ方などは?

池森秀一 乾麺は池森ブランドの蕎麦を食べてみてください。オンラインショップも出来ましたので。 めちゃくちゃ美味いですよ!

――つゆはどうしましょう?

池森秀一 「池森そばつゆ」です! 甘口と辛口があってこれがとても美味しいんです。鹿児島の枕崎市のだし屋さんとコラボしてリクエスト以上のものが出来まして。乾麺に関しては5000食くらい食べていますから! うちの乾麺もつゆも間違いないです。

――山根さんが音楽以外で注目していることは?

山根公路 もう今の蕎麦熱に押されちゃって(笑)。Netflixなどで韓流ドラマを観たりしています。最近はそれくらいの刺激ですかね。

池森秀一 十分じゃん(笑)。

――充実なされているのですね(笑)。さて、今後の展望は?

池森秀一 30周年が目の前なので、15周年のタイミングからやり続けている、周年の節目前の47都道府県ツアーを来年もやりたいです。多分また武道館でやらせて頂くと思うので、そこに向かってみんなで「やってきてよかったな」と思えるようなものにしたいです。そのためにどうしたら、という風にこれから過ごしていきたいです。今は世界規模の大変な状況なので、お互いしっかり励まし合って生きていく時代だと思います。

(おわり)

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