FAKYのAKINAが2020年12月18日、配信シングル「Gravity」をリリース。アメリカと日本のハーフで幼少期を沖縄ですごし、再びアメリカへ渡り、各地を転々として育ちながらFAKYに加入するため、カルフォルニアから東京に来日。バレエ、コンテンポラリー、ヒップホップ等幅広いジャンルを操るメンバー1のパフォーマーで、2020年11月に「Touch」を配信リリースしソロデビューした。2曲目のリリースとなる「Gravity」は自身で作詞作曲を行い、柴咲コウやiriなど多くのアーティストを手がけるプロデューサーのYaffleがトラックを制作。AKINAの姉の恋愛体験を歌詞に落とし込み、引力のように惹かれてしまうイケない恋模様を描いた1曲。インタビューでは日本で活動する事で自分のアイデンティティを模索し続けた日々のことや、ソロアーティストとしての理想像についてなど、AKINAに話を聞いた。【取材=村上順一】
リアルで共感できる歌詞が好き
――ソロデビューされて、今どのような気持ちですか。
自分がいま伝えたいサウンドだったり、好きなアーティストをカバーさせていただける機会が出来たことを嬉しく思っています。そして、私がアメリカ出身という意識が強いので「日本から頑張っているよ」と伝えられる幸せを感じています。
――デビュー曲としてシャウラの「Touch」をカバーされましたが、 なぜこの曲を選ばれたんですか。
私はリリックからその曲が好きになることが多いんですけど、この曲はすごく深いことを歌っていて、初めて聴いた瞬間から大好きになった曲なんです。メロディがシンプルなので、自分らしさを出しやすい、すごく自由度が高いと感じたので、この曲を選ばせていただきました。よりギャップを作りたい、自分らしいサウンドにも挑戦したいと思ったんです。
――ちなみに、「Touch」はどのような内容を歌われている曲なんですか。
彼女への想いを歌っている歌詞なんですけど、すごくグッときました。自分の事を曝け出したかのような歌詞で「こんなことまで書いちゃっていいの?」みたいな。パーソナルなリリックですごく面白いなと思いました。私はリアルで共感できる歌詞が好きなんです。
――この曲をリリースして、ファンの方からの反応はいかがでした?
思っていた以上に皆さんの反応が良かったので嬉しいです。FAKYのイメージがあるから、ソロ活動もポップで踊れる曲で来るんじゃないかと、みなさん思っていたと思うんです。でも、良い意味で裏切れた、ギャップみたいなものを見せられたかなって。少し不安はあったんですけど。
――このタイミングでTwitterにカムバックされましたが、なぜ休止されていたんですか。
SNSの使い方が下手だったんです(笑)。でも、ソロデビューさせていただいたので、ここから私のアーティスティックな面を出していきたいなと思って、Twitterにカムバックしました。これから色々レコメンドしていきたいと思っています。
――AKINAさんが日本に来てから悩まれていた、アイデンティティというのは解決されました?
それは答えが出ないクエスチョンだと思っていて...。アメリカに住んでいた時は自分が完全なアメリカ人だと思っていたんです。でも、日本に来てから時間はかかりましたけど、その気持ちはどんどん薄まって行きました。 もちろんアメリカの生活が長かったので英語の方が話しやすいんですけど、日本の文化も少しずつわかってきて、すごく今過ごしやすい環境にいます。 アメリカに両親に会いに行く時とか逆にちょっと不安になる時もあったりして。アメリカにいる私がちょっと浮いてしまうかも、というような感覚があるんです。
――すごいバランスの中で生きているんですね。ところで日本に来る前はどんな音楽を聴いていました?
日本に来る前は洋楽しか聞いていなかったです。日本に来てから清水翔太さん、倖田來未さんとかの曲を聴くようになりました。 日本に来た時は知り合いもいなくて、FAKYのメンバーがおすすめしてくれたものなんです。 なので、日本のエッセンスはLil' FangとMikakoの影響がめちゃくちゃ大きいです。
――お2人が日本でのキーマンなんですね。アイデンティティを探す旅はまだまだ続いていくとは思うんですけど、ソロ活動ではどんな一面を見せていきたいと思っていますか。
FAKYでは見せることができない部分をソロ活動では見せたいいです。その中でも特に歌詞を大切にしたいと思っています。みんなが共感できるリアルな歌詞を書いていきたいと思っていて、 良いことも悪いことも自分が思っていることを素直に出したいと思っています。
体を通り越して骨にまで響いてくるような強さを
――「Gravity」では作詞と作曲も担当されていますが、作詞、作曲はいつ頃からやられていたんですか。
作曲は日本に来てから始めたので6年前、15歳ぐらいからです。 日本に慣れていかなければいけなかったので、大変な時期でした。いろんな気持ちが湧いてきて、それを「どこで表現したらいいんだろう?」と考えた時に、日記のようにその時に思ったことを書いていきました。でも、それだけではもったいないなと、曲にしようと思ったのが作曲するきっかけでした。
――日記に書いていた内容とはどんなものだったんですか。
とにかく日本でのカルチャーショックがすごかったんです。 もう自分が宇宙人みたいな感じで。日記は本当に私がここにいてもいいんだろうか、と自分の居場所を探すかのような内容で、日本に来た時はそればかり考えていました。
――一人暮らしされていたんですか。
母と一緒に住んでいたんですけど、母は日本人なので私の気持ちは完全には理解できないんです。 誰に相談することもできなかったので、それを日記として書くことしか出来なくて...。
――当時の曲を今、聴いたりしますか。
たまに聴きます(笑)。 その時の曲を聴くと、ここまですごく頑張ってきたなと思えるんです。 今の自分自身をすごく誇りに思います。
――どんな感じだったのか、いずれ当時の曲も聴いてみたいですね。
15歳の時の曲だけでアルバムが作れるぐらいたくさんあるので、それちょっと面白いかも(笑)。
――楽しみにしています。さて、「Gravity」の歌詞はAKINAさんのお姉さんの恋愛体験を落とし込んだんですよね。
そうなんです。姉からいろんな恋愛話を聞いて、そこからインスパイアされて姉の気持ちを書いてみました。姉はヒートアップして言うだけ言う、といった感じなんですけど、そこで私が話を挟んでも聞いてくれないと思うんです。なのでぜひ姉にはこの歌詞を読んでもらって、その時の自分の状態を知ってもらいたいなと思って(笑)。あと、私の姉だけに限らず、みんなにも似たような体験はあると思うので、共感してもらえるんじゃないかなと思いました。姉にはもしかしたら怒られるかもしれないんですけど(笑)。
――歌詞に登場する<bones>という言葉が印象的なんですけど、なぜこの表現にされたんですか。
bones(骨)というのは体に絶対に必要なものじゃないですか。 「絶対に離れない」といったメタファーをこの言葉で伝えたかったんです。 体を通り越して骨にまで響いてくるような強さを表現したくて。
――歌詞はスラスラと?
「これだ!」というものになるまでは時間がかかりました。楽曲の構成がバラバラで、本当は2サビで終わらせる予定だったんですけど、もう一展開ある流れになっているんです。なぜ増えたかというと、姉の色んな話を聞いているうちに「これでは足りないな」と思ってセクションを追加したら、この長さになりました。
――好きな映画など、その人の歌詞の世界観を表す一つのファクターになっているんじゃないかと私は思っていまして、AKINAさんはどんな映画が好きですか。
レオナルド・ディカプリオが主演の映画『華麗なるギャツビー』です。すごくゴージャスなイメージの作品なんですけど、実は恋愛がうまくいかなかったり、 キラキラしているけれども内面は違う、といったようなギャップを感じさせてもらえる映画で、それが気に入っています。
――どこかリアルなんですよね。そのお話を聞いてそういったところが歌詞やソロ活動のスタンスとリンクしているのではと感じました。ところでYaffleさんにはアレンジのリクエストをしたり?
Yaffleさんに直接お会いする前に一度オンラインでのミーティングがあって、そこでいろんなアイデアをお話ししました。音を重ねて重層的なサウンド作りをしたいといった方向性をすり合わせたり。
――ベースがそれこそ「骨」に来ますよね。まさに「Gravity」といった趣があって、この曲の情景、心情が思い浮かぶアレンジだなと思いました。逆にAKINAさんの作ったデモも聴いてみたいなと思いました。
本当にベーシックなところだけなんですけど、MIDIで大まかなイメージは自分で打ち込んでいます。ピアノを弾いて作って、そこにドラムも入れて声を乗せているぐらいのデモなんです。Yaffleさんのアレンジしたものを聴いてから、私のデモを聴いたらみんなびっくりすると思います(笑)。
10時間掛かった「Gravity」のレコーディング
――そして、ミュージックビデオ(MV)もこの曲の世界観を後押ししている感じがあります。 11月の寒い時期に海に入られたんですよね?
そうなんです! 監督さんがこの曲を聴いた時に水をイメージされたみたいで、それで海に入ることになりました。本当に寒かったんですけど、めちゃくちゃ我慢しました(笑)。ソロになって初めてのMVだし、身体がしんどくなっても頑張りたいと思って。
――しかもすっぴんなんですよね?
海のシーンは深いイメージで、自分が辛い、苦しいと思う表現をしたいと思いました。ほぼすっぴんで、本当に寒かったんですけど、その辛さを我慢するというところとすごくリンクしていて、そういった表情は撮れたんじゃないかなと思います。
――街を歩いているシーンも印象的でした。
ありがとうございます。素の自分を出したかったんです。なので撮影中もあまり深く考えずに普段の自分らしく振る舞いました。このシーンは渋谷と新宿で撮影したんですけど、普段私がいつも通っているところなので、その辺もリアルで。
――MVが完成してみて今どのような手応えを感じていますか。
FAKYとのギャップは自分から見ていても面白いと感じました。 FAKYのキラキラしたMVとはまた違って、本当の私はこんな感じなんだろうなと思ってもらえるような映像になったと思っています。
――レコーディングは、10時間掛かったとお聞きしています。なぜそんなにかかったんですか。
1日で2曲録ったんですけど、「Gravity」は10時間くらいかかってしまいました。「Touch」は1時間ぐらいで録れちゃったんですけど(笑)。 私がYaffleさんにデモを送った時に大雑把にコーラスとかハモリを入れていたんですけど、それを聴いてYaffleさんが「このコーラス一つ一つにしっかり意味があるからちゃんと録ろう」となって。そこから私が最初に入れていたコーラスを一つひとつ録っていったら10時間かかってしまって...。メインのボーカルに加えて、そこに重ねるダブル、トリプル、コーラス、さらに裏でなっているウィスパー系のエアリーな声もあったので、すごい数のトラック数を録りました。 エンジニアさんもこんなにトラックが多いのは見たことない、と話していました。自分でもレコーディングしながらすごい大変なことをしているな、と思いましたから(笑)。
――でも、それがこの曲の世界観を大きく担っていますから、すごく重要なパートだった事が伝わってきます。さて、これからどのような曲にチャレンジしていきたいですか。
先のことはまだそこまで考えていなくて、フォーク、R & B、ヒップホップなど色んなジャンル聴いてきました。なのでその時にはまっているサウンドやジャンルをやっていきたいと思っています。その方が私も伸び伸びと曲を作れるんです。ただ、絶対にぶれたくないところがリリックで、リアルなところを描いていきたいなと思っています。
――目標としているアーティスト像はありますか。
ジェネイ・アイコさんがめちゃくちゃ好きなんです。彼女がいなかったら今の私はいなかったをじゃないかなと思えるくらい影響されていて、重要な存在なんです。辛いことがあっても彼女の歌詞から背中を押してもらえるような感覚があるんです。私がジェネイ・アイコさんの歌詞をすごいと思うように、自分もそう思ってもらえるような存在になれたらと思っています。
――最後にファンのかたへメッセージをお願いします。
ソロ活動では、FAKYでは見たことがない私を出していきたいと思っているので、みんなもそれを楽しみにしていて欲しいです。私ももっと自分のことを学んでいきたいですし、皆さんの中でも自分自身のことがよくわからないという方もいると思うのですが、自分探しをしている方達に、私の歌詞で背中を押すことができたら嬉しいです。これから頑張っていくので皆さん応援よろしくお願いします。
(おわり)
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