INTERVIEW

平田広明×稲垣来泉

明るく元気「プリキュア」アフレコ秘話


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:20年11月09日

読了時間:約7分

 声優の平田広明(57)と女優の稲垣来泉(9)が『映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』(10月31日(土)公開)でゲスト声優を務める。「永遠に明日が来ない世界」に変えようともくろむリフレインから、「明日」をつかさどるミラクルンを守り、明日に進むためにプリキュアが奮闘する姿を描く。人気アニメ『ONE PIECE』のサンジ役などで知られる平田はリフレイン役で出演。『ONE PIECE』のシリーズディレクターを務め、本作の監督を務める深澤敏則と再びタッグを組む。そしてNHK連続テレビ小説『スカーレット』などに出演してきた稲垣はミラクルン役で声優に初挑戦する。そんな2人にインタビューを実施。終始にこやかなに取材を受ける稲垣はミラクルンそのもの。一方、レジェンド・平田には声優としてのポリシーを聞いた。【取材・撮影=木村武雄】

とても明るい元気なミラクルン、稲垣来泉

――声優が決まった時、どういう気持ちでしたか。

稲垣来泉 プリキュアがずっと好きだったので、オファーを頂いた時、びっくりして、お母さんに「本当に? 本当に?」と何度も聞いてしまいました(笑)。台本を見ていないのにミラクルンを想像して練習していました!

――来泉ちゃんは声優初挑戦で、アフレコを見学したそうですね。その場の雰囲気に緊張した?

稲垣来泉 楽しみにしていたので緊張しませんでした!

平田広明 すごいね。あんなにたくさんの人がいたのに。

稲垣来泉 みんな優しかったので(笑)。

――平田さんのアフレコを見学されてどうだった?

稲垣来泉 平田さんは声がかっこよくて! 監督さんに言われたことを、(モノマネをしながら)「えーできないよ、そんなの」と言っていたのに、本番になったら、一発OK! すごいなと思いました!

――そんな来泉ちゃんの印象は?

平田広明 リフレインは最初から出てこないので収録初日はスタジオの入り時間を午後にして下さったのですが、来泉ちゃんは玄関で出迎えてくれました。とっても寒い日だったのに。開口一番に、「稲垣来泉です。宜しくお願いします!」って元気に挨拶してくれて、リフレインとミラクルンの絵が描いてあるお手紙もくれました。僕は少し人見知りなんですが、おかげですっかり打ち解けちゃって。ロビーでお話していたら、ちょうど収録の合間に出てきた監督に「何、仲良くしてるんだよ」とヤキモチを焼かれちゃうくらい。すごく仲良くなれました。

――平田さんは人見知りなんですか。

平田広明 初対面の人と話すのは得意ではないですけど、来泉ちゃんはその壁を越えさせるくらい、明るくて元気で、可愛らしい子!

――来泉ちゃんの声の印象はどうでしたか。

平田広明 しっかりハキハキと喋るし、口跡がとても良くて、発声もすごく良い。とても明るい元気なミラクルンが演じられるんだろうなと思いました。

――来泉ちゃんはすごく練習をしていると言っていたけど、どんなふうに練習をした?

稲垣来泉 台本を読む前から「ミラミラ~」と言っていました。台本にはミラクルンが踊るシーンがあったので、踊りを想像しながら「ミラミラ~」って言って練習しました!

――プリキュアが好きだったということだったけどどのあたりが好き?

稲垣来泉 プリキュアは、お友達を応援すること、お友達を信じること、可愛い女の子達が力を合わせたらどんなに強い敵でも倒せることとか、勇気をくれるので好きです!

――お仕事は大変だと思うけど、なにで勇気をもらっている?

稲垣来泉 お友達です! 学校を早退することもあるけど、お仕事って分かっているから、頑張ってねと言ってくれたり、励ましてくれるので、勇気をもらいます。

――お友達から「ドラマ観たよ」という話はある?

稲垣来泉 あります。嬉しいし、もっと頑張ろうと思います。

平田広明 嬉しいよね、僕でも嬉しいもん。声優のお仕事は皆やっているので、言ってこないけど、バラエティとか、ドラマに出た時に、「観たよ」とか言われると、幾つになっても嬉しい。

吹き替えは夢を、アニメはリアルを、平田広明のポリシー

平田広明

――平田さん、役作りはいかがでしたか。

平田広明 ビジュアルを見たときに「とびきりクールでかっこいいな」と結構、ビビってしまいまして。「こりゃかっこいい声を作らないといけないぞ」と、スタジオに着くまでそういう意識に縛られていました。第一声を聞いた監督に「そんなにかっこよくしなくていい。渋すぎる」と言われて少し気持が楽になりました。

 キャラクターとしては、最初は謎めいて「何者なんだ?」と思われる時間が長いので、とにもかくにも、不気味で怖くあればいいと思っていました。彼には彼の事情があって、あまり心情を細かく吐露しないんです。

 演じる方としては、彼が何者であるのかを説明出来るシーンが少ないので難しかったのですが、大事なセリフのところは監督と確認し合いました。監督には「このセリフを平田さんに言ってほしいからお願いしたんです」と言われ、更にリフレインとしてのポイントの考えが監督と一致していた事が分かり、安心しました。

――過去に「最初に出した声の印象を大事にされている」「第一声を出すまで不安だが、出した声の感じで進んでいく」と話していましたが、今回はいかがですか。

平田広明 作った声には説得力はないと思っているので、基本的に声は作るものではないと考えています。キャラクターの心情などを重ね合わせて出てきた音がそのキャラクターにとって説得力のある声になると思っています。でも…その割には、リフレインのビジュアルに最初はビビッりましたが…。「こういう顔からはどういう声が出るんだろう」とか…、ちょっとよそ見した部分はありました。

――そのなかで平田さんの声がリフレインというキャラクターの声になっていくプレッシャーはありませんでしたか?

平田広明 無駄に経験も積んでいますし、リフレインはオリジナルの新しいキャラクターですのでそういうプレッシャーは感じませんでした。ただ、原作があると感じることがあります。キャラクターに対するファンの方のイメージは出来上がっていますから「イメージと違ったら…」と。注目度が高い役になればなる程、プレッシャーになります。でも、リフレインは前例がないので、監督が「良い」と言えば「これがリフレインだ」と、良い意味で開き直れますから。

――これまでに数々の声を演じられていますが、声優としてのポリシーは何でしょうか。

平田広明 実写の吹き替えとアニメのアフレコでは多少違います。アニメに関しては、設定が現実離れして、実在する人物ではない事が多いですし、日常から離れたところにある。それに対する声のお芝居は、逆にリアリティのある演技をしなくてはならないと思っています。アニメを観る方は何かの期待を乗せて、例えば変身願望を持っていたり、自分は弱いけど仲間が一生懸命戦ってくれるとか、そういう期待を乗せて観て下さるものなので、そこは現実的なお芝居できちんと応えられるようにしなくてはいけないなと思っています。

 実写の吹き替えや舞台などは、出来るだけリアルにやろうと考えていますが、それを捨てはしないまでも夢を持てるようなことを考えています。かっこいい役なら、かっこよく見られるために何をしたらい良いのだろうかとか。憎たらしい敵の役のときには、どうやったら憎たらしくなるのか。かっこいい役なら「かっこいい!」と言われたいですし、憎たらしい役ならしっかり嫌われたい。それを形にするために、口先だけの言い回しだけでなく、キャラクターの立ち位置、居方などを考え、しっかり感情を乗せなくてはならないと思っています。

――心情の部分も大きく影響されるのですね。

平田広明 そうだと思います。少なくとも、感情移入が出来ないと。丸っきりそのキャラクターの気持ちにはなれないけど、どれくらい感情を乗せられていて、どれだけ客観的に見る目を持てているかということだと思います。

――難しい作業ですね。

平田広明 難しいですね。僕自身もいまだにその答えは出ていませんから。

来泉ちゃんの奪い合い

稲垣来泉

――さて作品は、みんなで「明日」に飛び出そう!ということがテーマ。将来の夢は?

稲垣来泉 お洋服が好きなので、モデルになってファッションショーでランウェイを歩きたいです! それと駄菓子も好きなので駄菓子屋さんもやりたい! もし、プリキュアになれるとしたら悪い人たちに駄菓子をあげている間に、技を使って倒すというのもやりたいです!

平田広明 駄菓子で釣るんだ。駄菓子でホイホイ釣られちゃう敵やりたいな~(笑)。

稲垣来泉 あと、手作りの駄菓子を作って、ランウェイで見てくれているお客さんにあげたいです!

平田広明 ランウェイに立つ時が決まったら教えて! かごを持って行くから! 全部受け取っちゃう。

――最後に作品の見どころを。

平田広明 大勢のプリキュアが出てくるのでとても華やかで賑やかになりますし、大勢が息を合わせて戦うところが一番のダイナミックなところだと思います。僕は、大勢を敵に回さなきゃいけないので、大変なんですよ。そこは一生懸命頑張りますが、大勢のプリキュアが、今回キーパーソンになります。ミラクルンを皆で助けようと、リフレインはリフレインでミラクルンを大事にしているので「盗られてたまるもんか」と。もうミラクルンの奪い合いです。それを来泉ちゃんが「ミラミラ~」と可愛くやってくれる。来泉ちゃんと、大勢のお姉様たちが、元気良くスクリーンいっぱいに弾け飛んで、暴れてくれるところが見どころになっています。楽しみにしていて下さい。

(おわり)

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木村武雄

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