Rude-α「試されている時期」新世代ラッパーが想う未来とは
INTERVIEW

Rude-α

「試されている時期」新世代ラッパーが想う未来とは


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年08月12日

読了時間:約9分

 沖縄出身新世代ラッパーRude-αが8月12日に、配信シングル「真夏の女神」をリリース。高校2年生の時にはじめたラップをきっかけに音楽活動をスタート。翌年、第6回全国高校生ラップ選手権に出場し準優勝を獲得。2018年には米・オースティンで行われている音楽フェス『SXSW』や全米7都市を廻る『Japan Nite US tour 2018』に参加し、初の海外ライブを経験。2019年5月にEP「22」でメジャーデビュー。インタビューでは、Rude-αらしさが光る夏のラブソング「真夏の女神」の制作背景に迫るとともに、「Rude-αと言えば夏のラブソング」と語る彼のスタンスに迫った。【取材=村上順一】

アーティストではない自分に戻れた分、気づきもあった

「真夏の女神」ジャケ写

――デビューから1年が経ちましたが、この1年間を振り返るとどんな1年間でしたか。

 『オオカミちゃんには騙されない』という番組に昨年は出演させていただいて、そこで僕のことを知ってくれた方が増えました。そこからデビューした時の2倍くらい忙しくなって、去年の夏は地元にも帰れないくらい、ありがたいことに休みもほとんどなかった。自分の作った曲をいろんな人が聴いてくれたおかげで、すごく充実した1年だったと感じています。今年は3月からコロナの影響でスケジュールが徐々になくなっていって、4月に入った時には夏休みみたいな感じでした。

――自粛期間はどんなことをされていたんですか。

 人前に出ない生活を2カ月間していて、アーティストではない自分に戻れた分、気づきもありました。これまではいろんな場所に仕事に行っていたので、家にいないことの方が多かったんですけど、ベランダでコーヒーを飲む時間もすごく良い時間だなと感じたり。あと、料理もするようになって、これまでは作ったとしてもそんなに時間をかけなかったのに、パエリヤとかちょっと手の込んだものを作り始めたりもして。

――アーティストだということを忘れてしまうと、Rude-αとしての活動が大好きなお母さんが悲しまないですか(笑)。

 母はRude-αの自分が好きなこともあって、それはありえますね(笑)。でも、僕の人生の最終目標はタイとか異国の地でひっそり農業でもしながら暮らしたいんです。自粛期間はそれに近い感覚がありました。今回、人前に出ず音楽から少し離れるような日々を体感してみて、まだ自分にはそういう生活をするのは早いなと思いました。

――擬似体験してみて気づいたことだったんですね。日本武道館という目標を掲げていますし、まだまだ隠居してもらっては困りますけど。

 はは(笑)。最初は何で武道館にいきたいと思っているのか、自分でもよくわからなかったんです。自然と武道館に行くということを言い続けていたら、それは達成しなければいけない目標になりました。もうこれはみんなとの約束なんです。それをやめてしまうというのは簡単なことなんですけど、達成した時に楽しいのは自分だけではなく、応援してくれているファンのみんなも、喜んでもらえるんじゃないかなと思いました。みんなが自慢できる存在になりたいし、自分がすごいというよりも、応援してくれているみんながすごいと思ってもらいたくて。それがあるから、武道館に行ってそれを証明したいんです。

――約束でもあるんですね。ちなみにRude-αさんは、幼少期から約束はきっちり守る方でした?

 いや、そうでもないです(笑)。昔の自分は何をやっても中途半端でした。ちょっとやってできてしまうとやめてしまうことも多くて…。こんなに長く続いているのは音楽だけです。人は誰しも天職と呼ばれるものがあると思っていて、こんなに長く続いて、初めて人から求められたものでもあるので、自分は音楽が天職だったんだなと思っています。

――沖縄でRude-αさんにラッパーを勧めてくれた方には感謝しかないですね。

 そうですね。でも、感謝半分、「(人生)狂わされた!」と思うこと半分、「こんな大変な世界に連れてきて」と思う瞬間もあります(笑)。みんなそうだと思うんですけど、人生楽しいことばかりではないですから。

――現在もその方に会った時はそう言ったお話もされるんですか。

 地元に帰った時に会ったりするんですけど、音楽の話とかほとんどしなくて、些細な世間話ししか僕はしないんです。というのも、プライベートで音楽の話をするのがそんなに好きではなくて…。僕の中で音楽というのは語ったりするものではなくて、音楽が自然に流れてきた時に青春が蘇ったりするものであってほしくて。やっぱり音楽の話をする時は一緒に音楽を作っている人、僕の音楽を聴いてくれている人たちに向けてでいいのかなと思っています。たまに「どんなスタンスで音楽をやっているの?」と聞かれることがあるんですけど、プライベートではあまり答えないです(笑)。

――その答えはこういうインタビュー記事でも見れますしね(笑)。

 そうなんです。インタビュー記事ってすごくコアだと思うんです。僕はたまに全然知らない人の記事とか見ていて、すごくカッコいいこと言っているな、と思う時もあるんです。インタビュー記事ってクリックしないと見れないじゃないですか。SNSのように誰かに気づいてほしくてやっているわけではなくて、見たい人が見ているところで発言しているのが、すごくいいなって。普段語らない人が実はこんなこと考えていたんだ、みたいな。だから僕はSNSで音楽の話はほとんどしないんです。

――Rude-αさんは知らない方のインタビューとか読むんですね。

 はい、読んでます。その時に共感できることがけっこうあるんです。それが、普通の言葉、言い方は悪いですけどベタな発言の方が刺さることが多くて。そういうよくある発言は面白いことを言おうとしているわけでもなく、爪痕を残そうとしているわけでもない、そんな言葉が逆に良いなと思えて。そこに余裕を感じるんです。僕は割とオタク気質だと思っていて、アイドルの方のインタビューからそういうのを感じることも多いです。

――オタク気質の方がよりリスナーの気持ちに寄り添えた作品を作れるのでは、と思います。

 確かに、自分の音楽はこうだ、ポリシーはこうだというよりも、聴いてくれた方がどう思うか、常に聴き手の気持ちに寄り添って制作しています。

「夏の男の子」と呼ばれたい

――今作「真夏の女神」は、昨年リリースされた「It's only love」の続編という位置付けですが、構想はあったのでしょうか。

 それが、構想は特になかったんです。夏ということもあり「It's only love」の続編という位置づけで作ると、曲を聴いた人がいろいろイメージが膨らんで楽しんでもらえるかなと思って。なので、物語が繋がっているとかではなくて、Rude-αといえば夏のラブソング、というイメージを持ってもらいたいと思ったんです。広瀬香美さんが「冬の女王」と呼ばれていますが、僕は「夏の男の子」と呼ばれたい(笑)。

――沖縄出身ということもあり、すでに夏のイメージはありますよね。

 そうなんですけど、この「真夏の女神」のMV撮影でプールに入るシーンがあるんですけど、実はそのプールで溺れてしまって(笑)。それで改めて考えてみたら、沖縄でも海やプールにはあまり入ったことがなかったなって。

――そのMV、早く観たいですね。さて、作曲作業は今回いかがでしたか。

 自分だけではなくて、いつも一緒に制作しているSUNHEEさんが曲の叩き台を作ってくれました。SUNHEEさんは僕にはないメロディのアイデアをいつも作り出してくれるので、常に発見もあって、今作もすごく新鮮でした。

――歌詞はどのように進めていかれたんですか。

 宇宙語と呼ばれる、日本語でも英語でもない仮歌があるんですけど、そのグルーヴを活かしたいので、その宇宙語を一回ノートに書き出して、それを歌っていくのがグルーヴを合わせやすくて、掴みやすいとうことに気づいたんです。今回はそのスタイルでそこから言葉を当てはめていきました。

――サビから始まりますが、タイトルにもなっている<真夏の女神>という言葉はどこから生まれたんですか。

 実は出だしの歌詞は最初、英語始まりだったんです。でも、それで聴いてみたら普通にカッコいいだけの曲になってしまって…。これは違うなと感じて、分かりやすくて印象の強い日本語を乗せたいと思いました。最初<I Just For Love You More>と歌っていたグルーヴに近い<真夏の女神>という言葉を持ってきました。これを聴いてくれた皆さんが「何この言葉」と思ってくれたらいいなと思ったんです。例えばこれが「真夏のビーナス」だとダメなんです。

――ポップさを求めたんですね。それはジャケ写にも表れていますか。

 例えば、僕は自分の顔がアップのジャケ写が多いんですけど、照れ臭い部分もあるんです。でも、改めてそういったジャケットを見た時に、わかりやすくていいなと思いました。それで曲もジャケ写もこういう感じになりました。あと、 化粧品メーカーさんのCMタイアップがついたら嬉しいなって(笑)。

――イメージに合いますね。

 僕が勝手に思っていることなんですけど、2000年代のJ-POPはカッコいい路線で、2010年代はJ-POPの良さが失われたJ-POPになっていったと感じていて。2015年頃にSuchmosが登場して、おしゃれでアーバンな人たちがメジャーシーンに出てきました。そして今また、2000年代に見られたようなブラックミュージックに傾倒したJ-POPのスタイルになってきたと感じています。僕は分かりやすくてカッコいいJ-POPで攻めたい、またそっちの方に時代を戻したいと思っていて。僕はおしゃれな方向性では生きにくいんです(笑)。

――敢えて逆行していくと。さて、歌詞の響きとして特にバッチリハマったなと感じている箇所はありますか。

 いっぱいあるんですけど、<裸足で駆ける マーメイド 二人きりの サンセット>という歌詞のところは、リズムが難しい譜割りになっているんですけど、ここは上手くハメることができたなと思います。普通では区切らないところで言葉を切っているんですけど、そこがすごく気持ちよくできたと感じています。あと、<風に揺られるスカート 僕を通り過ぎ She's gone 煌き放つ 焼けた素肌 飛沫は空へと Far away>のところも、日本語でうまくできたなと思っています。もう、他の言葉を探すのが難しいくらい。そして、<彩る 夏のアバンチュールAll night I'm thinking about you>は小節をまたいでいるんですけど、このまたぎ方が個人的にすごく気に入っています。

――ちなみにご自身の中で言葉の音の響きと、ストーリー性との対比はどんな感じなんですか。

 曲や立場によって変わるんですけど、「真夏の女神」は響き7のストーリーは3という対比になると思います。

――確かに「真夏の女神」は、言葉の響きが耳馴染み良いんですよね。

 ありがとうございます。この曲は10年後くらいに、「あの曲ダサカッコいいけど、先に行ってたんだ」みたいな曲になるんじゃないかなと、勝手に思っているんですけど(笑)。 

――未来が楽しみな曲でもあるんですね。さて、8月26日にはエッセイ『何者でもない僕たちに光を』も出されますが、ご自身のことを振り返ってみていかがでしたか。

 自分がどういう人間なのか、というのを再確認できました。自分の周りにこんな奴がいたら面倒臭くて友達になりたくないなと思いました(笑)。自分みたいな人間が隣にいたら、同族嫌悪になると思うんですけど、でも離れてみたらすごく同士といいますか、「こんな考え方の奴もいるんだ」、と面白いと思うんじゃないかなって。僕はひねくれた感性は必要だと思っていて、それが反骨精神になって自分を奮い立たせる一つになっているんです。それがわかって、つくづく自分はひねくれた人間だなと思いました。でも、そんな感性を持っている人生で良かったと改めて思いました。

――エッセイを皆さんに読んでもらえるのが楽しみですね。最後にファンの方にメッセージをお願いします。

 コロナ禍で色んなアーティストのライブが中止になったり、甲子園も中止になってしまい胸が痛かったです。それは僕自身もツアーが中止になってしまって同じ気持ちです。アーティストとして僕も試されている時期だと感じています。でも、みんなはこの時期を悲観的にならないで欲しいなと思います。逆にこの期間だからこそ出来ること、考えられることもあると思うので、もっと想像する時間が増えたらいいなと思っています。僕もライブの他にも用意していて、みんなにワクワクしてもらえることが増えていくと思うので、応援宜しくお願いします。

(おわり)

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