沖縄県出身のラッパー Rude-α(ルードアルファ)が23日、シングル「情熱の詩」を配信リリースした。2021年は1月に「Paradise」、4月に「Beautiful Day」と精力的にリリースを重ね、新たに「情熱の詩」を発表。同曲は「第103回全国高等学校野球選手権沖縄大会 実況生中継」のテーマソングで、目標に向かって頑張る人々に向けた一曲に仕上がった。インタビューでは、楽曲に込めた想いから、Rude-αとしてのモットー、さらに夢はなくても大丈夫と話すその真意に迫った。【取材=村上順一】
どんなやり方でも幸せにはなれると思っていた学生時代
――上半期の活動で印象的だったことはありますか。
1月に「Paradise」をリリースして、その曲がアニメ『SK∞ エスケーエイト』の主題歌だったので、アニメの影響もあってブラジルなど海外の方々に聴いてもらえる機会が増えました。日本とは違う文化の中で僕の音楽が鳴っているというのは、今までになかった体験で印象に残っています。
――5月はワンマンライブも行われる予定でしたが、残念ながら延期になってしまいましたね。
もう、こればっかりはしょうがないです。有観客では1年半くらいワンマンは出来ていないんですけど、僕だけではなくみんなも戦っているんだ、と言い聞かせながら我慢しています。どこからか光は差し込むものだと僕はいつも思っているので、不自由な時だからこそ、諦めずに音楽をやっていくべきなんじゃないかと強く思っています。
――とはいってもライブが思うようにできないというのは辛いですよね。
僕は音楽をするためにここにいるので、こんなにもライブができていないのは心苦しいです。ただ僕はオンラインライブもけっこういいなと思えている部分もあります。何か理由があって会場に来れなかった人もいる中で、全国どこからでもライブが観れるというのは大きなメリットだと感じています。あと僕個人としてもお客さんが見えないことで緊張せずにできるというのもあって、安定したパフォーマンスはオンラインの方ができる感じがしていて。今後、普通にライブができるようになってもオンラインは続けていきたいと思っています。
――安定したパフォーマンスができるとは、過去に何かあったんですか?
以前地元沖縄でライブをやった時に、親戚が僕の顔入り団扇を勝手に周りのお客さんへ配っていて、突然ライブ中にフロアから沢山の自分の顔が出てきたことあったんです...。それに驚いて歌詞を飛ばしてしまいました(笑)。ライブならではの楽しいサプライズなので好きなんですけど、生とオンラインでそれぞれメリットがあるのは確かです。
――この半年で始めたことはありますか?
DTM(デスクトップミュージック)を始めました。こういう時だからこそ自分で何か作ってみるのも面白いかなと思って。まだリリースできるようなレベルではないんですけどトラックを作るようになって、そこにラップを乗せて遊んでいます。今までは集中する1番の場所がライブだったので、それが今はあまりできていないから、新たに集中できる場所を探した結果だったのかもしれないです。
――さて、「情熱の詩」のジャケ写は景色のお写真なのですが、前作「Beautiful Day」からご自身が登場しなくなりましたね。
確かにこれまでは自分が登場するアートワークが多かったです。それは自分が出ている方がわかりやすいかなと思っていたところもあったんですけど、シングルだとジャケットを見ただけでも楽曲の雰囲気やテーマが伝わるものもいいなと思いました。
――楽曲は「第103回全国高等学校野球選手権沖縄大会 実況生中継」のテーマソングですが、どのような経緯で制作していったのでしょうか。
テーマソングとして流れることは決まっていたので、高校野球をイメージして歌詞を書きました。スポーツとして見た時に、観戦している側よりやっている側の感情、マウンドに立っている球児をイメージしました。そして、高校生活の3年間、一つのことに打ち込んだ時間が懐かしさに変わっていったらいいなと思いました。僕らは戻れない時間を過ごしているから、思う存分燃やし尽くして後悔のないものにしてほしい、生きている時間に何か熱いものが生まれてほしい、という願いを込めました。
――その中で軸になった言葉は?
<遠くに響く 君の声を 夢の果てへと 連れていく>という歌詞の部分です。スタンドから応援してくれる人を甲子園に連れていく、優勝した姿を見せることをイメージした部分なんです。音楽もそのひとつになれたらいいなと思いました。
――<走る汗>という表現も情景がすごく浮かびます。
ありがとうございます。この言葉はプリプロ(レコーディング前の下準備)で自宅から西麻布のスタジオへ向かう途中に出てきました。最初のデモで宇宙語のような意味がない言葉で歌っていたものからインスパイアを受けて、この言葉が出てきたのを覚えています。
――歌詞に<教科書に夢のラクガキ>とありますが、Rude-αさんも書いたりしてました?
教科書に書いたことはなかったんですけど、高校の時はラップを始めた時期だったこともあって、勉強もほとんどせずノートの隅にラップのリリックを書いたことはありました。
――その時から夢がラッパーに?
まだその時は夢ではなかったです。
――夢や目標がないと焦ったりしませんでした?
夢がないからといって焦る必要はないと僕は思います。特に今の若い子達は夢がないとダメだと焦っている子もいるかもしれないんですけど、僕は周りが就職したり夢に向かっている姿を見ても、焦りはなかったです。それは、どんなやり方でも幸せにはなれると思っていたからなんです。
――自信があったんですね。
夢が逆になかったからこそ、音楽の道にも迷うことなく飛び込めた感じも僕にはあったので。とにかく、友達や家族と笑って過ごせるだけでも正解だと思っていて。例えば大学に行く人の多くは目的がまだ決まっていない人もいると思います。そこで見つかれば良いなと言いますか、僕も1年間だけ大学に行ったんですけど、やりたいことが何も見つからなかったので大学を退学して、ラップで頑張ろうと東京に出てきました。
――高校時代は勉強していなかったと先程お話ししてましたけど、大学に入れたのはすごいですね。
AO入試で受かりました。自分のアピールポイントを面接で話したら、自分でもびっくりなんですけど受かってしまって。僕の高校からも何人かその大学は受けていたんですけど、勉強もしていなかった僕だけ受かってしまったので、「なんであいつが?」みたいな変な空気になったのを覚えています(笑)。
モットーにしていることとは?
――プレゼンが素晴らしかったんですね。ところで、タイトルの「情熱の詩」という言葉に込めた意図は?
いつも仮タイトルをつけているんですけど、今作は「情熱」にしていました。後で変えようとも考えていたんですけど、この言葉以上にハマるものが結果的に出てこなかったんです。僕はUAさんの「情熱」という曲が好きなんですけど、同じタイトルというのも恐れ多くて「詩」を足したという経緯もあります。
――ちなみにRude-αさんが情熱的だなと思う人はいますか。
UVERworldのTAKUYA∞さんです。お会いしてお話しさせていただいて、本当に情熱的な方で、周りを巻き込む力が本当にすごい人だと感じました。僕があまり学校が好きではなかった理由の一つに、周りから熱をあまり感じられなかった、どこか全てがルーティンになってしまっているような感覚があったからなんです。
――経験が情熱の妨げになっているパターンもあると思うんです。ある程度予測できてしまうことの弊害と言いますか、純粋に熱くなれなくなってる感じもありますから。
世の中、我慢しなければいけないことの方が多いから、なかなか熱くなれないというのも確かにあると思います。大人は特に自分の立場や世間体を気にしてしまいますし、これはこうだろと声を上げられる人も少ないと思っていて。でも、自分は声を上げられる、主張できる大人でいたいと思っています。
――素晴らしいです。さて、歌詞で<現在、過去、未来 感情を燃やせ>とあるんですけど、Rude-αさんはどれを一番意識して活動していますか。
間違いなく未来です。東京で活動している中で楽しいこと、辛いこと、喜怒哀楽色んなことがあります。何かを選択しなければいけない時、さっきの話に通じるところもあるんですけど、言いづらいことを言わなければいけない時もあって、例えば仕事で取引先や上司に言いにくいこともあると思うんです。でも僕は相手が誰であっても思ったことはちゃんと言いたい。それがこれから未来で出会う人たちに繋がっていくものだと思っていて、自分の子供や孫に教えられることも生まれると感じていて。
――すべては未来のためなんですね。
そうするには人の痛みも知らなければいけないと思うんです。知ることによって同じ境遇の人を抱きしめてあげることが出来ると感じていて、今やっていることはいつか出会う誰かのためになると信じています。言いづらいことも言えるのは未来に絶対楽しいことが待っていると思えているからなんです。
――そう思えるようになったのはなぜですか。
好きな言葉があって、「人生を変えるのに必要なのは20秒の勇気なんだ」という言葉なんです。『幸せへのキセキ』という映画のセリフなんですけど、すごく心に刺さりました。それが出来れば良い未来が手に入ると僕も信じて、モットーにしているんです。今年も既に何回も20秒間勇気を出しましたから。もし、自分の意見を素直に言ったことで、悪い方向に向かってしまったとしても、僕は間違いではなかったと思いたいなって。20秒間だけ勇気を出せれば未来は変わって行くんです。
(おわり)
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