沖縄県出身のラッパーRude-αが11月4日、配信シングル「マリーミー」をリリース。Rude-αは高校2年生の時に始めたラップをきっかけに音楽活動をスタート。2014年におこなわれた第6回全国高校生ラップ選手権に出場し準優勝。2019年5月にEP『22』でメジャーデビューした。今年2月にはシングル「アイスクリーム」、3月に1stアルバム『23』、8月にシングル「真夏の女神」とコンスタントに楽曲をリリース。さらに8月に自身初の書下ろしエッセイ『何者でもない僕たちに光を』(KADOKAWA)を発売するなどマルチに活躍。「マリーミー」は、ABCテレビ・テレビ朝日ドラマ『マリーミー!』主題歌でメロディアスな曲調でRude-αの新たな一面が見られる。本作の話題とともにRude-αの人物像に迫った。【取材=平吉賢治】
どこにいても歌える
――最近よく聴く音楽はありますか?
トランスとオルゴールの音楽をよく聴いています。この間初めて行ったトランスのイベントが楽しくて! ああいう音楽は自分自身と向き合えるというか、HIP HOPとはまた別の感じで各々好きに自由に踊っているからそれぞれの世界観があって、その中で色んなことを考えられるんです。
――他にもいろいろなジャンルを聴く?
シチュエーションによるんです。お台場に行く時は山下達郎さんを聴きますし。あとはポルノグラフィティさん、西野カナさんなど最近のJ-POPも好きです。昔はファンクとソウルしか聴いていなかったんですけど、中国などに行くとジャズ、タイに行くとカントリーだったり…。
――かなり幅広いですね。最近の活動についてですが、9月30日の配信ライブの感触はいかがでしたか?
やってみたら楽しかったし、色んな場所の方々が家でゆっくり観てくれるのでめちゃくちゃいいなと思いました! 僕はお客さんがいようがいまいが、例えば道で歩いていても、どこにいても歌えるという気持ちなんです。
――前回のインタビューで自粛期間ついて「人前に出ない生活を2カ月間していてアーティストではない自分に戻れた分、気づきもあった」と仰っていましたが、素はどんな感じなのでしょう。
島袋洋平(本名)です。Rude-αは島袋のいい部分で、島袋はそうでない部分かもしれないです。島袋は後輩に洗濯をやってもらったりしますし(笑)。でも、ちゃんとライブでは後輩にRude-αのいい部分も観てもらっています。島袋はちょっと適当だけどピュアというか。それでRude-αと島袋を仕事とプライベートをわけていたけど全部一緒にして、いい意味で全てを遊ぶという感覚を持つことでRude-αと島袋が合体したんです。今はいい感じでバランスがとれています。
――なにかきっかけがあったのでしょうか。
色々あるんですけど、この間オンラインライブをした時にちょっとトラブルがあって観られなかった人がいて凄く悔しいと思って。、勢いで「今度は無料で」と予定にないことを言ったりして。あの時くらいから仕事としてやっている中でも人の想いというのは伝わるもので「ビジネスだから」と思って音楽をやっていったらそれはバレてしまうと思ったんです。
仕事と割り切ったとしても、その部分をお客さんに見せないという。ちゃんとそこに対しても情熱でやっているという風に見せないとダメだなと凄く思ったんです。そういう意味で、ビジネスではなく遊びに変わりました。
――真摯な姿勢があった上での遊びという、いい意味での感覚なのですね。
「努力する者は楽しむ者に勝てるわけがない」という言葉をある漫画で読んだことがあって、間違いないなと思いました。だから僕も“楽しむ”という心は大切だなと。「真面目にやらなければ、頑張らなければ」という部分も大事だし、楽しむことも大切だと思いました。音楽をしっかり楽しんでやって友達と遊んで、遊んだことも歌にしてという。そういう循環はいいかなと思っています。
――先ほど話にもあった、Rude-αさんと島袋さんがとてもいい具合に合体した感じでしょうか。
“新Rude-α”と言いますか(笑)。
自然から学ぶフロウとは
――本作はドラマ『マリーミー!』主題歌ですが、歌詞はドラマに寄せた部分もある?
台本と原作の漫画からインスパイアを受けて書きました。「ニート保護法」という、ニートの人と結婚しないといけないというような内容があって、それを見て2人の距離が縮まっていく世界観を意識しました。あと、ドラマの世界観と照らし合わせて2人の絵の後ろで鳴っても違和感のないものをという点を意識しました。主役はあくまでドラマなので、観る方々が「ドラマめちゃくちゃ面白かった!」と思って頂けたらと。そういった意味ではそういう世界観にできたかなと思っています。
――曲調はこれまでHIP HOPが多かった中、本作はメロディアスですね。
今までこんなに歌にしたことはなかったというくらいです。
――MVについてですが、撮影風景を見てどんな印象を受けましたか。
出演された2人が絵になりすぎていて、この後に入り込む僕はどうしようかというくらいでした(笑)。『マリーミー!』には色んな想いがありますけど、久間田琳加さんがとにかく可愛いと!
――なるほど(笑)。ところで音楽活動スタートのエピソードで、公園でフリースタイルを仕掛けられたことから始まったと聞きました。もし、それがなかったら?
たぶん、あれがなかったら僕は牛を飼ってたんじゃないかなと…お父さんが牛を戦わせる家系というか、闘牛です。13歳くらいの頃にSNSで「バイトしてお金貯めて牛を買おう」って投稿していたんです(笑)。単純に牛が戦っているのが好きなんです。あとは旅人をやっていたと思います。
今でも一人で海外に行くのが好きなので。なかなか留学などができないと思っている中で「させてください」とは言っているんですけど「ダメだよ。もう少ししてからね」と。僕が海外に行ったら遊ぶことしか考えないという、留学という名目の遊びだということがバレてしまっているんでしょうか(笑)。
――なるほど(笑)。こういうコロナ禍の中ですが、大切にしているマインドはありますか?
僕は他人と争うことや他人と自分を比べることは意味がないんだなと、10代の頃に考えたんです。感情で「自分が違うと思ったことは違う」と言えるのは素晴らしいと思うけど、SNSなどを見ていると自分の固定観念で、自分と違う価値観に対して「それは間違っているよ」と言うのが多いなとちょっと思うんです。僕は常に受け入れてもらうことより受け入れること、愛されることより愛することというのは常に自分のテーマとして掲げていて、そういうマインドです。あと、最近思ったのは「亀のように生きる」と。
――その心は?
後輩と車で奥多摩に行った時の話なんですけど、川の流れが凄く速かったんです。水が勢いよく流れている中で、木が生い茂っている場所だけ唯一静かに流れていたんです。それを見て、ラッパーがどれだけスキルを磨いても「自然のフロウにはかなわない」と思いました。濁流の中で流れる一枚の葉っぱを見た時もそう思ったし、フロウは自然から学んでいます。
あと、公園の亀がいる場所で僕が亀を見ていたら知らないおじいちゃんから「最近どうなの?」っていきなり聞かれたんです。「最近? いい感じだよ!」って答えたら「今はいいよね。こうしてゆっくり亀を眺められる時代だから。俺の時代はね…」と、平和ではなかった昔の話をしてくれたんです。その話があまりにも生々しくて凄いなって思いました。そのおじいちゃんは「最近の若い者は遊びが足らんよ。全ては遊びが大事だから、お前は自分の人生を遊べよ」とも言っていて。めちゃめちゃ深かったんです!
――なるほど。お話の最初の「遊び」という部分の大切さに繋がりますね。では、今後の展望について教えてください。
僕は夢を見せられて今音楽をやっているので、しっかり夢を見てもらえるアーティストになれればいいなと思っています。色んな感情があると思いますけど、音楽になっていつでもそばにいるということは色んな方々に伝えたいなと思います。
(おわり)
ABCテレビ ドラマL 「マリーミー!」
https://www.asahi.co.jp/marryme/