絢香が13日、カバー・アルバム『遊音倶楽部〜2nd grade〜』をリリースした。カバー・アルバム『遊音倶楽部〜1st grade〜』がリリ―スされたのは、2013年のこと。あれから約7年。続編となる『遊音倶楽部〜2nd grade〜』が完成した。まさにファン待望の第二弾であり、J-POPを愛する人達にとっては、絢香がどう名曲達が蘇らせたかに注目だろう。【文=小貫信昭】
名曲と向き合う時間は学びと発見の連続
「制作を始めたのは昨年の夏あたりですね。そろそろまたインプットしたい!と思ったタイミングだったんです。前作の〜1st grade〜を制作して得たものは、その後の自分の楽曲制作にも良い影響を沢山与えてくれました。そして何より、創っていて楽しい。だから今回もスタートからワクワクしっぱなしでした!」
プロのアーティストの根幹を成すものは、言うまでもなくオリジナリティだ。でもそれは、大好きだった曲、興味があった曲から受け取った、インスピレーションの賜物といえる。彼女が言うように、カバーは“インプット”の作業であり、得るものは大きい。
しかし、“自分に似合いそうなシャツ”にだけ袖を通していたら、真のインプットとはならないだろう。時には大胆に、“新たな柄やデザイン”に挑戦してみるのも大切なこと。今回、リストにあがった10曲をみて、時代的にもジャンル的にも幅広い選曲であることを頼もしく思った。
「10曲の名曲と向き合う時間は、今回もまた学びと発見の連続でした。カバーは、オリジナル曲へのリスペクトを前提に、元のアレンジから外せないところと、新しい要素を入れるところのバランスを考えながら創っていくいつもとは全く違う制作です。きっと、幅広い方々に楽しんでいただけるものになったんじゃないかな。普段、あまり私の歌に触れたことのない方にも、ぜひ聴いてみて欲しいです」
結果として本作は、彼女のボ−カルが普段のオリジナル・アルバムとはまた別の輝きを放つエンタテインメント作品に仕上がっている。いや、けしてボ−カルだけではない。それをどうアレンジするかにも、立派に“オリジナリティ”は宿るのだ。
収められた10曲は、それぞれに確かな色彩を放つものばかりだが、ここでは3曲ほど紹介したい。
場面場面を変化させていくアレンジ
まずは「フレンズ」。1985年10月にリリースされたレベッカの代表作である。絢香は今回、河野圭をサウンド・プロデュ−スに迎え、新たな息吹を与えている。彼女自身、まず頭に浮かんだのは、「ストリングスが中心にあって、場面場面を変化させていくアレンジ」だったという。伴奏がボ−カルを支える、というのが通常のポップ・ソングのバランスだとしたら、この曲の場合、場面により、そのバランスが逆転するかのようなマジカルかつミラクルな展開をみせている。しかもそれが、大胆なほどに。
つぎに紹介したい「糸」は、1998年2月にリリースされた中島みゆきのシングル曲で、その後、多くのシンガーがカバーしている。この曲に関しては、絢香が昨年夏に行ったディナーライブ「Premium Dinner Live」でも取り上げられ、集まったファンを魅了した。ここではその際のギター一本のアレンジを踏襲している。サウンド・プロデュ−スは古川昌義で、彼のギターの名演も聞ける。この歌の場合、独自に解釈する、というより、どれだけ素直に歌の世界観を示せるか、というのがポイントであり、しかし見事に、彼女は“縦と糸と横の糸”が綺麗に交わる歌唱を生み出した。
さて最後に「Love Love Love」である。1998年5月リリースされた平井堅の代表作のひとつだ。彼女の思い出の曲でもあり、「中学2年生の時、初めて人前で歌った作品」だ。
サウンド・プロデュ−サ−に塩谷哲を迎え、ボーカルを含め、スタジオで一発録りされている。それもあり、メロディとリズムを最高の状態で化合させる彼女の歌を堪能できる。
以上、10曲のなかから紹介したが、他にもまだまだ注目の選曲ばかりである。個人的に付け加えるなら、ボーカリストにとって難曲といえる「恋人よ」(五輪真弓)をドラマ性豊かに歌いあげる姿や、「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」(サカナクション)において、静と動を自在に操る表現力にも感心した。ユ−ミンや桑田佳祐やミスチルへの溢れんばかりのリスペクトは、前作に続くものである。
さらに、このアルバムで果たしたインプットが、近い将来彼女のオリジナル・ソングとしてアウトプットを果たし、大きく花開くことも期待したいと思う。







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