福山雅治

 普段耳にする音楽では様々な楽器が使用されている。そのなかの一つのパートにフォーカスして聴くのも一興だ。今回は、特に身近な楽器でもあるアコースティックギター(アコギ)を取り上げたい。

 アコギは、ポップスやロック、フォークス、ブルースなど様々なジャンルで使用され、その役割は伴奏だけでなくリードパートも担う。更に、ライブなどではアコースティックバージョンという形にアレンジされることもある。アコギの音色で曲の雰囲気も変わり重要なパートとも言える。その良さが際立つアーティストの一人として福山雅治に注目する。

様々なアコギサウンドが味わえる福山雅治の楽曲

 福山の楽曲は様々なアコギの音色と奏法が楽しめ、比較的アコギに注目しやすい音像であることが多い。例えば、1995年のヒット曲「HELLO」は、冒頭からアコギがメインパートとして使用されている。

【福山雅治 - HELLO(Full ver.)】

 「ジャカジャカ」とアコギを刻むサウンドが印象的な「HELLO」は、疾走感あふれるストレートなナンバー。男らしいコードストローク(和音をかき鳴らすこと)が存分に楽しめる。そして福山の楽曲では、この曲以外でも様々なアコギサウンドの表情をみせてくれるのだ。

 たとえば「桜坂」では、コードを押さえた状態で弦を1本ずつ弾いて音を重ねるアルペジオ奏法の音色が優しく広がる。「milk tea」では、優しいストロークが際立つ。「家族になろうよ」ではアコギのリードフレーズが印象的だ。

【福山雅治 - 家族になろうよ(Full ver.)】

 ふと思いついた代表曲を挙げたが、全ての楽曲でアコギの存在感が強く、アンサンブルを牽引している。そこで、「なぜ福山の声とアコギが合うのか」という素朴な疑問が湧く。

 その点を意識してじっくり聴いてみると「福山のバリトンボイスとアコギの煌びやかな高音が互いをより引き立てている」と、感じられた。あくまで主観だが、福山の声とアコギの音色は周波数帯の相性が極めてよく、音域的に心地よくブレンドされるのだろうと考えられる。

 ちなみに福山は様々なモデルのアコギを愛用している。マーティンの「OM-45」や「D-28」、「OOO-42」、「ギブソンJ-50」など、いずれのモデルもアコギのスタンダードで定評がある。マーティンやギブソンというブランドのアコギは、海外ではボブ・ディラン、ジョン・レノン、エリック・クラプトンなどのビッグネームも愛用していることで有名だ。

 そんなアコギは、楽器に触れる最初の選択肢となる場合が多いと思われる。クラシック音楽だったらピアノやバイオリンなど、そしてポピュラーミュージックならまずアコギというように。身近に感じられるアコギに直に触れて楽しむというのも、音楽の楽しみが深まってワクワクする。

うちで楽しめるアコギ

 アコギには多種多様なモデルがある。極端な話、100万円を超える高額のものもあれば、数千円で買える中古のものもある。

 新型コロナウイルス感染症の影響でうちで過ごすことが多い昨今、アコギを弾いてみるのも一興かもしれない。アコギは、和音を鳴らす「コード」のフォームをいくつか覚えるだけでもある程度は演奏できる。例えば福山の「HELLO」のイントロは、3つのコードを覚えてスムーズに和音を鳴らせば弾けるのだ。

 アコギを弾くと最初は驚くほど指先が痛くなるかもしれないが、1週間も弾き続けていれば指先の皮が厚くなり、なんてことはなくなるだろう(個人差はあるが)。弾き方やコードの押さえ方については、弾ける人に教えてもらうのが近道だろうか。

 うちで一人でもっと手軽にアコギを弾きたいという場合は、“ギター入門”といった種類のYouTubeチャンネルを参考にするのもいいかもしれない。弾きたい楽曲のコード進行はコード本を参考にするのも手軽だし、ネットでもある程度は調べられる。

 楽曲のアコギパートに注目して聴いても、自身でプレイしても楽しめるアコギは、音楽を楽しむ楽器としてとても身近な存在なのではないだろうか。

 最後に、個人的にチョイスした「アコギが気持ちよく鳴っている楽曲」をプレイリストで10曲紹介したい。各アーティストの代表的なナンバーかつ、アコギの音がキラリと光る楽曲を並べてみた。

 時に主役級に、時にさりげなくアンサンブルを煌めかせるアコギ。少し聴く角度を変えてアコギにフォーカスしてみると、さらに音楽の楽しみが広がるかもしれない。【平吉賢治】

・「HANABI」 Mr. Children
・「ロビンソン」 スピッツ
・「今宵の月のように」 エレファントカシマシ
・「桜坂」 福山雅治
・「One more time, One more chance」 山崎まさよし
・「Wonderwall」 オアシス(Oasis)
・「Loser」 ベック(Beck)
・「Yoshimi Battles the Pink RobotsPt. 1」 ザ・フレーミング・リップス(The Flaming Lips)
・「Higher Ground」エレン・マキルウェイン(Ellen Mcllwaine)
・「Stairway to Heaven」 レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)

筆者紹介

平吉賢治 東京都在住のライター。音楽専門学校卒業後、楽曲制作に携わる。5年前にライターとしての活動を始める。これまでに執筆したコラムのなかには、ヤフーのトピックスに掲出されたこともある。得意分野はロックやエレクトロミュージックなど。普段はギターや鍵盤を弾いていることもあって歌詞よりも音にフォーカスしがち。エレカシ宮本浩次氏や上杉昇氏をリスペクト。洋楽では90年代の作品が特に好き。

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