m-flo「サプライズのあるグループ」”loves”プロジェクトで広がる未来
INTERVIEW

m-flo「サプライズのあるグループ」”loves”プロジェクトで広がる未来


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年04月14日

読了時間:約9分

 昨年20周年を迎えたm-floが3月6日、配信シングル「tell me tell me」をリリースした。今作はm-flo ”loves”プロジェクトの再始動作となっている。”loves”プロジェクトはLISAが2002年にソロ活動に専念するため脱退したことをきっかけに☆Taku Takahashi とVERBAL の2人で2003年から2008年まで行った日本でのフィーチャリングの先駆けともなったプロジェクトで、これまでに当時の新人から大御所まで41組のアーティストとのコラボが実現。

 12年ぶりの”loves”メンバーに選ばれたのはR&Bシンガー向井太一、eill、韓国HipHopシーンの若手実力派Sik-Kの3人。「tell me tell me」は “わからない“という中毒性のあるサビが印象的で、m-floらしさもありながらそれぞれの個性が光るナンバーに仕上がった。インタビューでは昨年の20周年ライブを振り返るとともに、LISAから見たlovesの印象、今作の制作背景に迫った。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】

”loves”に最大級のジェラシー(LISA)

LISA

――昨年は20周年ということでライブも行われましたが、終わって時間が経ってみるとどんな想いが今ありますか。

☆Taku Takahashi 20周年ということでファンの皆さんと一緒に過ごせたことと、自分の中でもすごく納得の行くライブが出来ました。それはメンバーももちろんだし、サポートメンバーやlovesの方々と2days出来たというのはめちゃくちゃ嬉しかったです。

LISA ライブは『KYO』という作品をよく知った状態でステージに立つことが出来たので、毎曲歌うたびに感動していて、その時により一層「このグループに戻ってきて良かった」と思いました。すごく制作がタイトでしたが、良い作品が出来て、良いライブが出来たことを光栄に思っています。

VERBAL ライブが終わった後の一杯がここ数年の間で一番美味しかったぐらい、やり切った感があったライブでした(笑)。LISAがメインにいつつも、過去のlovesアーティストとステージに立つというのはありそうでなかったことで。セットリストもテンポが違う曲が沢山あるので、それをシームレスに組んでいくというのは難しいんですけど、そこは☆Taku流石だなと思いました。 

――そのlovesが12年ぶりに再始動されましたが、子年で終わり、子年で再び復活というのは意識していたのでしょうか。

☆Taku Takahashi それは意識してましたね(笑)。偶然一回りになりましたけど、意外と時間が経っていたんだなと思いました。

――LISAさんはこのプロジェクトを当時外側から客観的に見ていたと思うんですけどいかがでした?

VERBAL そもそも客観的に見てたの?

LISA うん、客観的に見てた。すごくジェラシーを感じていました(笑)。もう浮気されたみたいなね。でも、曲は素晴らしくてすごく素敵だなと思いましたし、その時私は2人のファンだったんです。パッケージもスタイリングもカッコよくて、グループから抜けて失敗したなと思いましたから(笑)。側にいてはわからないこともたくさんあったんです。

――新たな魅力に気づいて。

LISA そうそう。グループってずっと一緒にいてもわからないことだらけで。だから、出て行くことでわかることもあるんです。その時は最大級のジェラシーで、VERBALの体なんかめちゃくちゃカッコ良くて(笑)。

VERBAL 当時はタンクトップの似合うラッパーを目指してたからね。もう週6で筋トレしてました。

LISA その時のファッションもすごくカッコ良かった。

VERBAL えっ、今はダメなの(笑)。

――(笑)。さて、lovesで2008年にリリースされた「love comes and goes」はシングル1枚のみの生産というすごい企画でしたね。

☆Taku Takahashi そうそう。当たった人は僕らの胸像がもらえて。

VERBAL シングル1枚のみのリリースというのは、その後ウータン・クラン(米・ヒップホップグループ)がアルバムの原盤を2億で売ったというニュースを聞いたんですけど、僕らはそれより先に同じようなことをやっていた、ということを伝えたいですね(笑)。

――そうだったんですね。今回lovesの再始動というのはいつ頃からお話されていたんですか。

☆Taku Takahashi 『KYO』が完成する間際くらいかな。その時はカオスを求めていたから(笑)。今サブスクリプションでアーティスト同士がよりつながりやすくなっていると感じていて、ファンの方もそうですし、そういうところでパラレルワールドを作れたら面白いなと思って。

――今回の人選の決めてはどんなところにあったのでしょうか。

☆Taku Takahashi シンプルに僕が好きな人たちです。実は今回のlovesのメンバーは誰なのかというクイズを出していたんですけど、彼らのInstagramでハートモチーフのグッズを出してもらったり、実は色々とヒントを出していたんです。

――このクイズ、SNSで盛り上がってましたが、全員当てるのは難しそうですね。新田真剣佑さんと答えている方もいて面白いなと。

☆Taku Takahashi 新田真剣佑くん、コラボしたい!

VERBAL この前、僕がInstagramでヒントを出したんですけど、いきものがかりと答えてくれている人が結構いましたね。

LISA それはちょっと面白いかも(笑)。

それぞれのパートを素直に表現出来たレコーディング

VERBAL

――さて、今作「tell me tell me」はどのような流れで制作されていったのでしょうか。

☆Taku Takahashi まず僕と(向井)太一くん、eillちゃんでスタジオに入ったんです。そこで色々試しながら作っていったんですけど、お題があった方がいいよねとなって、韓国料理屋でVERBALと話していて「わからないというテーマはどう?」と提案があって。それをSik-K君に伝えたら「それで何か作ってみます」と返事をもらえて、そこからVERBALとLISAがそれぞれ歌詞とメロディを書いていったという流れでした。

――VERBALさんはなぜ「わからない」をテーマにしようと?

VERBAL それがあまり覚えていなくて、それこそわからないんです(笑)。もしかしたら混みのすれ違いやお互いの気持ちがわからないとか、そういうのがインスピレーションだったのかもしれない。

☆Taku Takahashi そこからテーマを伝えたら、太一君がサビの<わからない わからな ey ey>というメロディを歌い始めたので、とりあえずそれを録っておこうと思って。

――そこのメロディが頭から離れないんです。

LISA 中毒性のあるサビとはこのことですよね。このメロディがR&Bの印象が強い向井君から出てきたのが私はけっこう意外で。

☆Taku Takahashi そのメロディを聴いた時、僕とeillちゃんは面白くて笑ってましたけど(笑)。太一君もその時は半信半疑だったけど、僕は相当面白いなと思いました。以前太一君とはNEWSの曲を一緒に作ったことがあるんだけど、セッションするのは慣れていて、そこにeillちゃんも入ってきて普段の太一君とは違うものが出てきたのかなと。かなり和気藹々と作っていたので。

――歌詞も日本語、英語、韓国語が入り乱れていてそれも多国籍な感じでユニークですよね。

☆Taku Takahashi Sik-K君は韓国なのでそこは普通に入れてくるんだけど、日本語も入れてくるんです。日本のカルチャーをすごく好きでいてくれて、VERBALのことも尊敬してくれているんです。それで実は昔VERBALにデモテープを渡していたみたいで。

VERBAL それ、僕覚えてるんです。韓国にある新世界百貨店というデパートの前でタクシーを待っていたら、とある青年が「これ、聴いてください」とデモテープを持ってきて。数年たった後日Sik-K君と再会し、その青年がSik-K君だったというのを本人から聞いて「あの時の君か!」と。あの時、ちゃんとデモを受け取って、優しくしておいて良かったです(笑)。

LISA 素敵! しかも日本語の歌詞はVERBALが教えたんじゃないんだ! それはすごいね。

――LISAさんは今回のレコーディングはいかがでしたか。

LISA 今回はすごく楽しくレコーディングしました。『KYO』の時はすごくシビアな面もあったけど、今回は3人を迎えての作品だったので、また雰囲気が違ってそれぞれのパートを素直に表現出来たレコーディングだったと思います。誰かに合わせるという感じでもなかったんです。

――それぞれの個性を見事にまとめてあげて。

☆Taku Takahashi そうは言ってもみんなコラボ慣れしているので、僕が特段まとめたという感覚もないんです。そういうことが出来る人が自然と集まったんじゃないかなと思います。

――サウンドなんですけど、ピアノの音が印象的でちょっと懐かしい感じの音色だと感じました。

☆Taku Takahashi ピアノは一回生で弾いたものをオーディオ化して、それをサンプリングして弾き直しているんです。昔ながらの手法なんですけど。

――そういった音色ひとつとっても、細部まで作り込まれているのが聴いていて伝わってくるんです。

VERBAL すごい細かいところまでこだわっているのは、ここ最近特に僕も感じています。

m-floが今知りたいこととは?

☆Taku Takahashi

――さて、今回わからないというテーマがありますが、皆さん知りたいことはありますか。

LISA 私はさっきもお話ししたんですけど、VERBALのあのセクシーな姿がまた見れるのかどうかというのが知りたい。

VERBAL いや、あれはなかなか大変なんですよ(笑)。ある程度のフィット感で運動するのはスタミナのためにいいんですけど、2006年頃についてた筋肉をつけるというのは維持するのがめちゃくちゃ大変で。当時は若かったから沢山食べているだけでも、肉はついたんだけどね。あの時は50セントを目指していたから。とりあえずその要望に応えられるよう、ベンチプレスします(笑)。

――楽しみにしています! ☆Takuさんの知りたいことは?

☆Taku Takahashi 秘密結社が本当に存在するのか、ということです。社会の謎をすごく知りたいかな。

――☆Takuさん、都市伝説的なのがお好きなんですか。

☆Taku Takahashi 好きです。YouTubeでもその手の動画、ナオキマンショーとかを良く観ています。

VERBAL なるほど。Netflixにその手の動画があるから観てみて。☆Takuは絶対好きだと思う。あと、godlikeproductions.comというリテラシーの高いスレッドがあるんだけど、それもかなり面白い。

――VERBALさんはどんな事が知りたいですか。

VERBAL 僕は色々あるんだけど、AIがもっとハンディにいつ使えるようなるかです。今も近いことは出来ると思うんですけど、例えばこうやって喋っている時に、「あそこの予約入れないと…」と話しているものをAIが判断して拾って、自動的に予約してくれたり。

LISA それすごい便利!

――最高ですよね。さて、最後にm-floはこの先どのような姿を皆さんに見せていきたいですか。

☆Taku Takahashi 今年はlovesの人たちと面白いことをやって、新しい音楽を提示していきたいと思っています。

VERBAL 個人的なところなんですけど振り切った自分を見せたいと思っています。自分は器用貧乏なところがあって。もっと破天荒なラップとかをみんなにプレゼンできたらいいなと思っていて、今年の抱負に1日に何時間かクリエイティブな時間を設けたいと思っています。そうすればアイデアも浮かぶので、もっと振り切った自分を見せていきたいです。

LISA このグループの強みは柔軟性があって、お互いにエゴイスティックにやっていないところなんです。一人ひとりのキャパシティの良さを引き出す事が出来るオープンマインドでオリジナリティがあって、サプライズのあるグループだと思うんです。そんな柔軟性のあるスタイルを皆さんに楽しんでいただきたいです。

(おわり)

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