音楽だけではなく、思想も受け継ぐ
——選曲はブラックミュージックの歴史を見るかの様なものになっていますが、やはりジャズの要素が強いのかなと。
11歳、12歳の頃から私の心の底にあるのはジャズなんです。ところどころで他のジャンルのものも聴いたりするんですけど、結局は基礎に戻ってくるんですよ。
——ニーナ・シモンは女性をエンパワーメントする文脈でトリビュートが多く、ビリー・ホリデイの「奇妙な果実」もメッセージ性の強い曲です。思想的な影響もありますか?
そういう影響もあると思います。今回取り上げた女性アーティストは楽器を弾きながら、力強いメッセージを放ってきた人たちで。ユニークでパワフルな才能を用いて、当時起きていた問題、今も起きていることかもしれませんが、それに対して提起をしてきた側面もありますよね。
特に1930年代の黒人差別をテーマにした「奇妙な果実」は美しさも醜さも歌われていますね。そういう歌を聴いて問題意識を持ってくれたらいいですね。ビリー・ホリデイについては「奇妙な果実」を歌った後に会場のライトを全部消して去っていった、というエピソードを最近聞きました。発信したメッセージを観客の記憶に残すためだったのかもしれません。
——少し気が早いかもしれませんが今後やりたいことや、次回作の構想などはありますか。
ライブはやりたいので、ツアーも行く予定です。あとは男性のアーティストにも影響を受けているので、デューク・エリントンやビリー・ストレイホーンのトリビュートもしたいです。何らかの形でレコーディングできたら嬉しいですね。いろいろな人とデュエットするのも楽しいし、ダイアナ・クラールにも声をかけたいなと思っています。父のスキャット・スプリングスをフィーチャーできたらとも考えていますよ。
——あとはサッカーも?
もちろん(笑)。10歳の頃からやっていて、すごく好きなんですよね。健康に良いし、楽しいのでやめられないんです。バスケもやりますが、前ほどはやってません。女性チームはもちろん、男女混合のチームにも参加していますが、男性とプレイした方が上達が早いですね。その後に女性チームでやると「なぜそんなにアグレッシブなの!」と怒られます(笑)。
音楽的にインスピレーションが湧くということよりも、運動することで脳が活性化され心が落ち着くんです。何かプレイしようとか新しい曲を覚えようと生産的な気持ちになりますし。
——では音楽の場合はいかがですか? 女性だけのバンドで演奏するときに感じることはありますか。
今まで男性ばかりのバンドが多かったので、単純に男性がいると言えない冗談が言えるのはいいですね(笑)。刺激も受けますが、やっぱりガールズトークが楽しい。
——5月17日に名古屋ブルーノート、18〜20日まで3日連続でブルーノート東京と3年ぶりの来日公演もありますね。
日本はサウンドやオーディエンスだけでなく、楽器も良いんですよね。食事も素晴らしいし、みなさんがお姫さまの様な扱いをしてくださるので、いつも楽しくやらせていただいてます。素晴らしい女性メンバーとともにパフォーマンスする予定です。私の歌よりもバンドの演奏を観に来るだけの価値があると思いますよ。
(おわり)