Halo at 四畳半「悩むだけで終わりたくない」年を重ねて開けた新境地の音像
INTERVIEW

Halo at 四畳半「悩むだけで終わりたくない」年を重ねて開けた新境地の音像


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年01月28日

読了時間:約13分

悩むだけで終わりたくない

――渡井さんが作るデモはどういった着想で作るのでしょうか。

渡井翔汰 僕は作品を作る上でテーマを決めないんです。作品を作ってから曲たちを並べて聴いてみて、思ったことをタイトルに活かしていくスタイルなんです。歌の内容に関しても色んな挫折や壁にぶつかった時の心情を歌っている曲が多いんです。そういった苦悩が根っこにあるアルバムだなと思いました。

――それは歌詞にも反映されている?

渡井翔汰 テーマとして一番思ったのは、もっと人間的というか…音楽についても自分自身についても、27歳を迎えることによって思う心情の変化もあったりするんです。このバンドも今年で8年で、若さゆえの、良い意味で頭をからっぽにしてできたことがそうもいかなくなってくる歳を迎えて、そういう意味での苦悩が今作では多かったです。そういうなかで自分のやりたいことを続けていく、音楽というものを生み続けることに対する葛藤や悩みが今作の曲たちの根っこにあると思っています。

――その想いが最も込められているのはリードトラックの「イノセント・プレイ」?

渡井翔汰 「イノセント・プレイ」は制作の終盤で生まれた曲なんです。この曲は前向きなサウンドでビート感もある曲ですけど、この曲が生まれるまではアルバム全体がけっこう暗い印象だったんです。それはテーマ的なこともあったり、曲自体のテンポ感やコード感も暗めなものがいつもより多いということがあって。その苦悩を経て「じゃあ自分はどうしていきたいか」というところを曲に落とし込んだのがこの曲です。もちろん苦悩が根っこにあるんですけど、悩むだけで終わりたくないというか。

 「悩んだ経験を経て言えることは何だろうか」というのがこの曲に込められているんです。歌詞にある<それでも それでも僕ら行かなきゃ>というHalo at 四畳半がずっと歌ってきたことは、悲しい感情や苦悩をそのままで終わらせていいのかという上で、「今自分にできることがあるんじゃないか」という想いなんです。その想いを、制作過程で思った<それでも>というところに込めました。

――2曲目の「ナラク」はシングルカットされている楽曲ですね。

渡井翔汰 これは配信でリリースした曲ですね。

――渡井さんがおっしゃるように、「イノセント・プレイ」と「ナラク」がなかったらシリアスな雰囲気のアルバムに聴こえそうです。

渡井翔汰 実はそうなんです。

――そういった部分では5曲目「百鬼夜行」6曲目「レプリカ」の流れが個人的に好きなのですが。

渡井翔汰 そこ、ダークゾーンです(笑)。

――「百鬼夜行」の攻めている感じから、「レプリカ」ではアコースティックギターのチョップしたサウンドにノイズの展開があったりと、豊かなテイストですね。こうしたアイディアはどのように生まれるのでしょうか。

渡井翔汰 「レプリカ」に関しては僕がデモを作っていく段階で、なんとなく完成形に近い状態で組み上げていて、それをプリプロの段階でプロデュースをやってくださっている竹内亮太郎さん込みの5人で話し合いながらアレンジを加えつつ、みんなで組み上げていく感じです。「イノセント・プレイ」と「蘇生」以外の曲は竹内さんと作っています。

――竹内さんとの関係は?

渡井翔汰 インディーズの頃から関わって頂いています。竹内さんは音楽に対する知識も凄いし純粋に音楽を愛している方なんです。その影響が出て今作の曲が生まれたりもしているので、5人目のメンバーというくらいHalo at 四畳半の曲の根幹を担っている方です。

――バンドにとって重要な方なのですね。収録曲について、8曲目「疾走」はストレートな格好良さを感じます。これは齋木さんが作詞作曲を担当されていますね。

齋木孝平 この曲は制作に追われていて最後のほうに作ったんです。Halo at 四畳半で初めて歌詞を書きました。サビのメロディと一緒に歌詞が出てきて、渡井さんに「こんな感じでサビの歌詞書いてみたんだけど、どう?」と、デモを渡した段階で「歌詞全部書いちゃったら?」ということで、作詞に挑戦しました。僕も渡井さんが言っていたような悩みや葛藤を抱えていて、「イノセント・プレイ」の<それでも>というのは、改めて考えると僕も同じようなことを思っているんだなと。悩んでるけどそれだけじゃ終わりたくなくて「希望は持っていたいよな」という、ポジティブでありたいという気持ちです。

――歌詞もストレートな感じですよね。ところでアルバム全体のサウンド面に関して、ベースラインが非常にくっきりしていて存在感があると思いました。何か大きな変化があったのでしょうか。

白井將人 ベースを変えました。生々しい話ですけど、今までのベースよりも値段が4倍くらい高いベースとレコーディングの直前に運命的に出会って買ったんです。それで録り音が凄く良くなったのと、ベースを買ったことによって家で弾く時間とかも4倍になったかなと(笑)。それで「ベーシストとは」ということを考えることが増えてきました。

白井將人

 楽曲に対するベースの位置の捉えかたが変わったんです。今までは直感でフレーズを曲に入れていくという作業が多かったんですけど、「ベーシストとしてここでは何をするべきなのか」という、僕がどういう役割かということをちゃんと考えられたのが今作からだったなと。それでフレーズのありかたも変わっていると思うし、シンプルに音も変わっていると思います。一生もののベースに出会えて、そのベースに引っ張ってもらったなという感じもあります。

――今作のレコーディング前に素敵な出会いがあったのですね。ドラムで今作のこだわりの点は?

片山僚 「イノセント・プレイ」「ナラク」「花飾りのうた」などは今までのHalo at 四畳半の雰囲気、要素が多いんですけど、「Ghost Apple」「レプリカ」「ヘヴン」あたりは今までになかったようなジャンルでもあるんです。アレンジの面でも固定概念を取っ払いながら思うままにやっていました。

――確かにビート面でも色々なアプローチがありました。「Ghost Apple」は微妙に跳ねていたり3拍子の曲があったりと。

片山僚 そうです。「クレイドル」の3拍子は途中でリズムのとりかたが変わったり。それは制作のやりかたが変わったことで得たものです。渡井さんからもらったデータを普通に聴いていたらああいったアレンジは出てこなかったと思います。そこは今作の制作で良かったと思う部分です。レコーディングはけっこうシビアでした。タイトなドラムを叩いたり、音の長さを気にしたり、そのへんはこだわって、とにかく…大変でした(笑)。今までなかった曲があるので、それをライブでやっていくとドラマーとしてさらに成長できるなという思いが今あります。

片山僚

――今作では制作方法やアプローチ面でかなり変化があったが、バンドの根っこの部分はしっかりある、という感じでしょうか?

片山僚 はい。ドラマーとしては変化している過程という感じです。曲によって色んな要素が含まれている今までにない面白いアルバムになりました。緻密な曲もあるけど、「百鬼夜行」や「疾走」は爽快感があってロックバンドを意識してレコーディングに臨んだので、それはそういう心境だからこそ逆に色々できたのかなと思います。

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