土屋貴史監督が明かす、俳優「笠松将」の面白味「もうめちゃくちゃ」
INTERVIEW

土屋貴史監督が明かす、俳優「笠松将」の面白味「もうめちゃくちゃ」


記者:木村武雄

撮影:

掲載:20年01月21日

読了時間:約6分

ミュージックビデオと映画の制作違い

――さて、映画は普通だった青年がラッパーとして輝きだす姿が描かれていますが、監督が魅力を感じる人は?

 どんな人も面白いところはあると思いますが、普通の人のリアリティを描きたいというのはあります。ハンディキャップがあるというのはドラマとして描きやすい。だけど、何もない人の方が描く上ではハードルが高くて、それに挑戦してみたいですね。

――監督はMVも手掛けていますが、映画と比べ直接的な表現がない分、作る上で意識されている点は?

 音楽を聴いた時の感覚ですね。何回も何回も聴いてその時に出てくるイメージ、その映像のキーとなるものを繋げていく感じです。そういう点ではこの映画もそうだったかもしれないですね。キーになるシーンがいくつかあって、それを結んでいくとお話になる。自分の考え方がそうなのかもしれないですが、特にMVはそうですね。キーとなるビジョンがいくつかあって、例えば5つのシーンが浮かんだらそれをまず描き出して、そしてそれらを繋げたらMVになるというか。

――Aメロ、Bメロ、サビとありますが、それに当てはめて?

 あてはまるときもありますし、オープニングのところだけからイメージが広がるときもあって、まちまちです。

――また、今の音楽シーンはどうみていますか?

 ヒップホップは特に映像とリンクしているというか。音楽の聴き方が変わっているのは感じます。どちらかと言うと僕らの世代はCDを買ってアルバム全体を聴いて、歌詞カードを見て、というのが一般的で。でも今の時代はYouTubeなどの映像サイトで見て聴くという音楽体験そのものが変わっている。ただ、自分にとってはありがたい時代です(笑)。

――画角などの変化もありますが、作り方に変化は?

 意外とそれはないですね。インスタが流行っているからそれに合わせて作り直すというのはないですね。

――文章自体が昔と比べどんどん短くなっていて、映像もそうした影響はありますか?

 尺は短くなっているかもしれないですね。そもそもトラックの尺自体が短くなっています。

――確かに今はサブスクを意識して3分台の曲が増えています。

 そうですよね。映像作品も短編が見られなくなっているかもしれないですね。ちゃんと映画館に行って座って見るか、ループされている映像を見るか、という極端に振れているような気がしますね。

――ある映画監督がこういう時代だからこそ映画館で見る映画を作りたいという話をされていました。

 強制的に2時間を見る体験は貴重かもしれないですね。スマホの電源を2時間切ることさえも今では抵抗を持っている人もいると思います。強制的にずっと席に座っているというのは良い体験だと思います。どこに行っても電波は入るし、ついチェックしてしまう。そこを遮断して居続けさせるというのはすごく良い体験の場だと思うんです。映画とMVは、カット数の違いがあって、MVの場合は飽きてしまうだろうというのがあるのでなるべく早いテンポで繋いでいますが、映画の場合はしばらく長回しができるから作り方は全く違う。

――映画だと表現の幅は広がる?

 圧倒的に広がると思います。フォーマットも含めて。

――最後に、監督自身が大事にしているポリシーは?

 ポリシーがないのがポリシー(笑)。その中でも「平和に…」というのがあります。現場も平和に、ハラスメントもないような。

――作品自体の描写が…(笑)。

 あ! 現場は平和でした(笑)。どなり声はなかったです。常に平和に!

土屋貴史監督

(おわり)

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