3ピースロックバンドのSaucy Dogが28日、Zepp Tokyoで全国ツアー『Saucy Dog ブルーピリオド Release tour「いつだって今日がはじまりツアー」』のファイナル公演をおこなった。本ツアーは10月2日リリースの3rdミニアルバム『ブルーピリオド』を引っさげ、10月18日の札幌公演を皮切りに、最終公演の東京まで、全11箇所12公演開催するというもの。セットリスト19曲に加え、完成前の新曲披露を含んだ本公演はツアーファイナルにふさわしい熱気と清涼感に包まれていた。【取材=平吉賢治】

「ファイナルだからこそ、いつも通り最高に楽しんで」

石原慎也(撮影=白石達也)

 「Saucy Dog始めます!」という石原慎也(Vo/Gt)の爽やかな宣言からツアーファイナルがスタート。「雀ノ欠伸」を軽快かつエネルギッシュな3ピースアンサンブルでライブを走らせると、オーディエンスは一斉に右手を掲げて応える。開始から即座にみられた十分な反応は、続く「ナイトクロージング」のソリッドなサウンドとオーディエンスクラップが混じり合い、ソールドアウトの満員となったZepp Tokyoに響き渡った。

 MCでせとゆいか(Dr/Cho)は、「いま見えている景色がメチャクチャ気持ちよくて本当に嬉しいです」と笑顔を見せる。そして「ファイナルだからこそ、いつも通り最高に楽しんで」と、12公演のファイナルとなった本公演への意気込みを言葉にした。バンドのエモーショナルかつ明朗で爽やかな“Saucy Dogらしさ”はライブサウンドにもMCにも示されていた。

 続く曲目は秋澤和貴(Ba)の印象的なベースラインのループから始まる「曇りのち」。そのボトムとビートがオーディエンスを横にゆらゆらと揺らし、サビでは音圧が一気に開ける展開、そしてリタルダンドのテンポダウン、倍テンポと、“曇りのち”のタイトルを表したようなドラマティックな流れを見せた。

 優しく浮遊するようなコード進行を奏でる石原のギター、どこまでもエモーショナルな歌声は非常にクリアに会場に響き渡り、熱量、情念、サウンド共に明瞭な広がりをもってライブをクッキリと魅せてくれた。再びハイテンポな楽曲に突入するとオーディエンスはバンドのテンションと同期するように腕を掲げる頼もしい姿をフレキシブルに見せた。仕上がり感抜群のライブは会場一体、3ピースとは思えないほどの圧巻のアンサンブルで「メトロノウム」「月に住む君」と畳みかけ、ミドルテンポの「届かない」では石原の叙情感滲み出るアルペジオと熱唱で、一旦着地するように綺麗に前半を締めた。

「人生の中に入り込むということは、あなたの一部になっているということ」

秋澤和貴(撮影=白石達也)

 せとゆいかが「いまはサブスクとかでも聴けるようになったんだけど、CDにだけ8曲目がボーナストラックが入っていて、その曲をやらせてもらいます。私が歌います」と伝えると、ライブはアコースティックコーナーに突入。石原がアコースティックギター、秋澤はテレキャスターギター、せとゆいかは鍵盤にタンバリンという編成だ。まずは「煙草とコーヒー」をせとゆいかがボーカルを担当し、キュートな歌声でオーディエンスを魅了した。アコースティックはもう1曲、ボーカルは石原で「世界の果て」を披露。切ない響きの2コード進行から始まるこの楽曲での熱唱とコーラスが、シンプルな編成のなかで際立って会場に鳴り渡った。

 若干のインターバル、暗転から再度バンドセットに戻って披露された「煙」では、緩急をつけたあとにさらに煌々と輝くアンサンブルがライブのダイナミズムをブーストした。立て続けに「ゴーストバスター」へと進み、最高潮のボルテージに達するようにライブの熱気が膨らみ、その後も間髪入れずに「Tough」「バンドワゴンに乗って」と、3ピースロックサウンドを最大限まで広げるようにフレッシュかつパワフルに決める。

 本編最終曲を前に石原は会場を見渡しながら、「こうやってZepp Tokyoが埋まるくらいになれたのは間違いなく、いま来てくれているあなたが来てくれたから…」と、改めて会場に集ったオーディエンスへ感謝の言葉を伝えた。さらに、「みんなが今日一緒に過ごしてくれるみんながいなかったら、俺達は音楽をやっている意味がなくて。サブスクリプションで音楽が聴き放題な時代で、それでもサブスクリプションに音楽を出そうと思ったのは、俺達の音楽をたくさんの人に届いてほしいという気持ちがあったから」と、メッセージを伝えた。

 そして、「人生の一部に僕らがこうやって入り込めて…人生の中に入り込むということは、あなたの一部になっているということです」と、Saucy Dogのオーディエンスに対する心境をあらわにした。「自分達の音楽があなたの一部になれてたら。逆に、あなたの一部も僕らの一部になってるからね」と、「世界は広いけど自分達は繋がっているなと思うことができる」と、感謝の気持ちを示した。

せとゆいか(撮影=白石達也)

 さらに「もしかしたらホールツアー、もしかしたらいつか武道館に出れるような時が、アリーナツアーができるようになるかもしれない。そうなった時にもまた一緒にライブができたらなと思っています」と伝え、本編ラストの楽曲「スタンド・バイ・ミー」を三位一体のバンドサウンドで放ち、Saucy Dogは「またいつか会えますように。ありがとう!」と、深々と礼をしてステージを去った。

 拍手、歓声が飛び交うアンコールの声に応えたSaucy Dogは再びステージに姿を現し、石原は「ツアー中はアンコール2曲だったんですけど、今日はやりたい曲があって。3曲やっていいですか?」と言い、歓声に包まれるなか「コンタクトケース」を披露。艶やかな照明と切ない歌詞の世界観がマッチし、ファイナル公演のドラマティックな雰囲気を醸し出した。

 そしてアンコール最終曲「グッバイ」ではオーディエンスからの<グッバイ>の大合唱がZepp Tokyoを熱く、美しく、輝かしく覆い、バンドとオーディエンスの深いエモーションに包まれ、Saucy Dogの「またいつか会えますように。ありがとう!」という言葉でファイナル公演は締めくくられた――。

セットリスト

“Saucy Dog ブルーピリオド Release tour「いつだって今日がはじまりツアー」”
2019年11月28日@Zepp Tokyo

01. 雀ノ欠伸
02. ナイトクロージング
03. 真昼の月
04. 曇りのち
05. Humming
06. Wake
07. メトロノウム
08. 月に住む君
09. 届かない
10. 煙草とコーヒー
11. 世界の果て
12. 煙
13. ゴーストバスター
14. Tough
15. バンドワゴンに乗って
16. スタンド・バイ・ミー

ENCORE

EN1. コンタクトケース
EN2. いつか
EN3. グッバイ

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