2019年12月16日にCDデビュー10周年を迎えるandropが11月25日、Shibuya WWW Xで10周年を記念したプレミアムイベント『androp 10th. Anniversary Documentary film Special Event』をおこなった。イベントは普段裏側を見せないandropの軌跡を追いかけた、合計16テラバイトもの膨大な映像資料を編集したドキュメンタリーを上映するというもの。上映会に加え、andropによるミニライブもおこなわれ、第一部では「BGM」「Radio」「Hikari」の3曲をいつもとは違った編成で届けた。このドキュメンタリーは『SPACE SHOWER TV』のLINEアカウントとスペシャアプリで、アーカイブ放送として12月25日まで視聴できる。2部構成でおこなわれた本イベントの1部の模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

聴いてくれる人がいなければ続けてこれなかった

『androp 10th. Anniversary Documentary film Special Event』(撮影=teramong)

 このプレミアムイベントでは上映前に、4人による演奏とトーク(MC)もおこなわれた。開演時刻になり、メンバーがゆっくりとステージに登場。それぞれの楽器の定位置にスタンバイし、届けられたのは2017年2月に配信リリースされた「BGM」。伊藤彬彦(Dr)はエレドラ、前田恭介(Ba)はエレキベース、佐藤拓也(Gt.Key)はエレキギター、内澤崇仁(Vo.Gt)はアコギという編成だ。普段のスタイルとは違う、シンプルなアレンジで切ない歌を届けた。観客もしっとりと歌と音を浴びるように、静かに耳を傾けていた。

 MCでは内澤が照れくさそうに「こんばんは、andropです」と挨拶。そして、内澤はなぜこのイベントをおこなったのか、意図を説明。

 「今年10周年を迎えて、楽しいことももちろんありましたけど、ずっと楽しかったかと言うとそんなことはなくて…。(バンドの)存続を危ぶまれることもありましたが、自分たちの思い描くものや、伝えたいこと、夢があったので、今日まで続けることが出来ました。こうやって続けてこられたのも、ここにいるみんなのように聴いてくれる人がいなければ続けてこれなかったです。辛い時に支えになってくれたのが聴いてくれる人達やメンバー、スタッフの方々のおかげで、今日まで続けることが出来ました」と感謝を込めた言葉を綴った。

 さらに続けて内澤は「10周年の感謝を込めましてこういった場を設けさせていただきました。僕らは裏側というものをなかなか見せるバンドではないんです。こういう機会でもないとお見せする機会がないと思い、10周年ということに託(かこつ)けまして、見てもらいたいなと思いました」とイベントの趣旨を説明し再び演奏へ。

 2曲目は2ndアルバム『one and zero』からR&Bテイストもありアーバンなアレンジが印象的な「Radio」を披露。ミラーボールがカラフルな色を反射させるなか、内澤はギターを下ろし今度は歌に集中。ファルセットがセクシーで、洋楽のような雰囲気。心地よいバウンス感にソウルフルな歌声で、音楽性の幅広さを見せてくれた。

 2度目のMCでは、今回のドキュメンタリーを制作した織田 聡監督を急遽ステージに呼び込み、今回のドキュメンタリーの制作秘話を語る。andropと織田氏は2013年にリリースされた「Voice」のメイキングからの付き合いで、andropのことよく知る人物の1人だ。この6年間で撮った映像のサイズは8テラのハードディスク2台、合計16テラが満杯になるほどのデータ量だったという。それを今回凝縮して届ける運びとなった。

androp(撮影=teramong)

 MCに続いて内澤が「楽しみにしてってね」と優しく投げかけ、ラストは佐藤がギターからキーボードにチェンジし、10枚目のシングル「Hikari」を演奏。内澤はアコギを奏でながら、抑揚のある演奏にのって、情感を込めた歌をドラマチックに響かせた。目を瞑れば楽曲の情景がイメージでき、会場を包み込むような演奏で、4人はステージを後にした。

 ここからドキュメンタリー映像の上映会がスタート。ドキュメンタリーは2013年からのバンドの軌跡が刻まれていた。その中の内澤の言葉に「当たり前であって当たり前じゃない。聴いてもらう人の日常に寄り添いたい」という音楽活動をおこなっていくにあたっての理念が刻まれていた。もちろん現在もその想いは変わらない。ハイライトは2014年におこなわれた代々木第一体育館でのワンマンライブ『one-man live 2014 at 国立代々木競技場・第一体育館』の舞台裏。そこに到達するまでには、体を酷使するメンバーの痛々しい姿もあった。

 初めての会場で1万人を超えるキャパに挑むバンドの姿勢が克明に記録されていた。「人が喜んでくれたら嬉しい。でも、それは結局自分のためなんだなと…」と、ひとつの答えを打ち出していた。それらが今のandropの基盤となりCDデビュー10年という節目を迎える。

 この映像作品を観て、グッと心を掴まれたファンも多かったのではないだろうか。息を潜みながらスクリーンに釘付けの観客の姿が印象的だった。これまでのことを振り返りながら、andropはまた新たな“光”を求め、次のフェーズに突入していく。これまで彼らの音楽に触れたことがある人達にこそ観てほしい映像だ。

    

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