GLIM SPANKYが11月28日と29日、東京キネマ倶楽部で東名阪で自主企画イベント『Velvet Theater 2019』の東京公演をおこなった。ツアーは10月19日の名古屋を皮切りに、11月29日の東京まで3カ所4公演をおこなうというもの。ディープなカルチャーの世界に浸れるコンセプトで毎年行われているライブで、今回はリキッドライトショーというオイルを使った映像をリアルタイムにスクリーンに映し、音楽とのシナジーを見せた。「ストーリーの先に」などアンコール含め全19曲を披露したツアーファイナルの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

音楽仲間と共にロックが出来てとても嬉しい

松尾レミ

 この日は今季一番の冷え込みとなり、街ゆく人もダウンやコートなど真冬並みの装備。体に染みる寒さの中、多くの観客がキネマ倶楽部に集い、開演を待ちわびていた。『Velvet Theatre』はGLIM SPANKYのコアな部分、コンセプチュアルでディープな選曲で展開されるライブだ。今回は新しい試みとして、リキッドライトショーと呼ばれるオイルと舞台照明を使用し、音楽との相乗効果が体験出来るステージ。

 開演時刻になり、ゆっくりと会場が暗転し、サポートメンバーに続いて、松尾レミ(Vo.Gt)、亀本寛貴(Gt)が登場。デビューから5年、これまで以上に何かやってくれそうなオーラがこちらにも伝わってくる。ベースのどこか切なさを感じさせるサウンドが鳴り響き、松尾の語りからタイトル未定の楽曲で幕は開けた。

 なんて緊張感のある始まりだ。ミディアムテンポで“夜”がキーワードとして耳に飛び込んでくる1曲で、派手さこそないが、じっくりと体に染み込んでくるかのような歌とサウンドに、観客もその音を浴びるかのように、息を潜みながら、静かに聞き入っていた。

 チームOverLightShow ~大箱屋~が作り出す、サイケデリックな映像が視覚的にも楽しませる。「MIDNIGHT CIRCUS」での、夜の砂漠に出現するサーカス団は、楽曲の世界観をより深いもにしていた。どっぷりと夜に浸らせてくれた序盤は、松尾レミが10代の頃に作った曲で展開。それについて松尾は「こうやって今もデビューした頃の楽曲をやれていることがすごく幸せです。それはみんなが音楽を聴いてくれている最高のリスナーだということです」と嬉しそう。

ライブの模様

 大きく息を吸い込み、圧巻のアカペラからスタートした「闇に目を凝らせば」。そして、亀本のギターソロでの表現力も印象的だった「Velvet Theater」、続いてシンガロングがライブならではの一体感をより実感させてくれた「grand port」と「ハートが冷める前に」と立て続けに演奏し、会場の熱量が上がっていくのがわかる。

 「こんなディープな夜に最高な音楽仲間と共にロックが出来てとても嬉しいです」と伝え、11月20日にリリースされたシングルから「Breaking Down Blues」を披露。武並J.J.俊明(Dr)による重心をシフトさせたドラムに乗って、パワフルな歌とギターでフロアも大きな盛り上がりを見せた。

アコースティックでカバーも披露

亀本寛貴

 ライブも中盤戦を過ぎた頃、アコースティックセットで4曲を披露。まずは浅川マキの「ジンハウスブルース」を松尾とアコギに持ち替えた亀本の2人で披露。楽曲の持つ意志を現代を生きる2人がしっかりと受け止めた良カバー。

 亀本のアルペジオに栗田祐輔(Key)のキーボードの音色が包み込む中、温もりのある歌でハートウォーミングな空間を作り上げた「お月様」、ゆったりとしたリズムの「白昼夢」で松尾はトライアングルやシェルチェイムを使用し、楽曲に彩る。アコースティックセットのラストは「美しい棘」。記憶の扉を開けてくれような、凛とした歌声を響かせ、ライブも佳境に突入。

 ここでリキッドライトショーについて説明する松尾。自身が影響を受けた60年代の音楽やポエトリーディングでよくやっていたもので、それを当時と同じ湯法で再現しているのがOverLightShow〜大箱屋〜だと話す。生でやっているため同じ映像は二度と出来ず、ここで描かれるアートは一期一会で、それは音楽と同じだと感じたという。そこに今回はVJも合わせ過去と現代のテクノロジーを融合したステージとなっていて、それはGLIM SPANKYのコンセプトである、60年代のセンスを現代のセンスと掛け合わせ、今提示すべき新しいものとして表現しているのと同じだという。そのフュージョンによって、今回の『Velvet Theater 2019』は今まで以上により濃く見せられると語った。

 続いて、松尾がベルリンへ訪れた時の記憶や匂いが詰まった一曲「Sonntag」、そして11月20日にリリースされた新曲「ストーリーの先に」へと流れる。今までとは違ったサウンドスケープを見せ、松尾の絶妙なミックスヴォイスが印象的に響く。心にダイレクトに響いてくるような感覚を与え、松尾は「超楽しかったありがとう」と感謝を告げ、本編ラストは10月30日にリリースされた『火の鳥』のコンピレーションCD『NEW GENE, inspired from Phoenix』から「Circle Of Time」を披露し、ステージを後にした。

ライブの模様

 アンコールでは、松尾の大学時代の恩師に今回のポスターを制作してもらったという話題や、サポートメンバーの紹介からアンコール1曲目は、松尾が上京してきた時に書いたという楽曲「夜風の街」をアコースティックバージョンで届け、このディープな夜を締めくくったのは「Tiny Bird」。この曲に込められたメッセージ、未開の地で震えながらも、順応していく強さを、歌い上げていく松尾。オーディエンスも楽曲に込められた思いを受け止めながら、『Velvet Theater 2019』はフィナーレを迎えた。

 2人の奏でる音楽はもちろんのこと、キネマ倶楽部という独特な空間に投影されたリキッドライトショーは、新たな体験を我々に与えてくれた。それは60年代へとタイムスリップさせてくれるような時間をもコントロールした瞬間。音と映像が作り出す一期一会はまさにこれぞライブという貴重なものだった。

セットリスト

01.題名未定曲
02.NIGHT LAN DOT
03.MIDNIGHT CIRCUS
04.ダミーロックとブルース
05.いざメキシコへ
06.闇に目を凝らせば
07.Velvet Theater
08.grand port
09.ハートが冷める前に
10.Breaking Down Blues
11.ジンハウスブルース(Acoustic ver.)
12.お月様の歌(Acoustic ver.)
13.白昼夢(Acoustic ver.)
14.美しい棘(Acoustic ver.)
15.Sonntag
16.ストーリーの先に
17.Circle Of Time

ENCORE

EN1.夜風の街(Acoustic ver.)
EN2.Tiny Bird

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