<写真>渋谷公会堂とラストライブを行ったT-BOLAN

渋谷公会堂とラストライブを行ったT-BOLAN。メンバーからメンバーへの感謝の言葉に会場が号泣した

 活動休止を発表したロックバンドのT-BOLANが26日、東京・渋谷公会堂でラストライブ『T-BOLAN LIVE HEAVEN 2014 〜 Last live for the future 」を開催した。3月8日大阪・オリックス劇場で行われた復活ワンマンライブで、メンバーそれぞれのソロ活動を発表した彼らのラストライブは、チケットの販売枚数約2000枚に対し、応募数15倍を上回るという最速先行予約で即完の超プレミアムなチケットとなった。

<写真>渋谷公会堂でのラストライブで熱唱するT-BOLAN・森友嵐士

渋谷公会堂でのラストライブで熱唱するT-BOLAN・森友嵐士

 91年にデビューした彼らは2ndシングル『離したくはない』の記録的なロングヒットにより大ブレイク。どこにいてもその曲を耳にしない日はないくらい日本中が彼らの楽曲で満たされていた90年代前半。会場をよく見ると老若男女の笑顔で溢れかえっている。彼らの名曲が第2世代と呼ばれる若者にまでそのロック魂を受け継がせているのがそこに現れていた。

T-BOLANラストライブが幕を開ける

 待ちに待ったその一瞬がカチカチと時計の針にあわせてファンの鼓動と共鳴してゆく。映画『T-BOLAN THE MOVIE〜あの頃、みんなT-BOLANを聴いていた〜』より、前2公演とは別編集された貴乃花親方を始めとする出演者からのメッセージが映像で流され『T-BOLAN LIVE HEAVEN 2014 〜Last live for the future〜」と写しだされるとその真っ白なシルクの向こうからメンバーが登場。

 ふっとその表情にいつもと違う何かを感じる。なんと優しく穏やかな笑顔だろう。常にライブステージに立ち続けることを主とし、決して油断させないジャケット作りを徹底してきたT-BOLAN。積年の想いを込めた前2公演でのパッション、そんな彼らのバンドスタイルからは思いもよらないやわらかな温もりに包まれている。“一部始終を満足しよう”そんなように見えた。

<写真>渋谷公会堂ラストライブ。T-BOLANのギター五味孝氏

渋谷公会堂ラストライブ。T-BOLANのギター五味孝氏

 『Only Lonely Crazy Heart』から始まり、当時ライブで一度も演奏されることのなかった『Be Myself』、デビュー曲の『悲しみが痛いよ』、ミリオンヒットを記録した『Bye For Now』と続くセットリストに嬉しさ、懐かしさ、熱いものがこみ上げてくる。ここで『おさえきれないこの気持ち』『刹那さを消せやしない』と続くと、「あ〜なるほど」完全に彼らの計算通りのペースに乗せられていることを気持ちよく感じる。

 ステージ上からボーカルの森友嵐士が過去のライブを振り返り話し始めた。「いろんなライブの事を思い出していて、どのライブが強烈だっただろう。そんな話しをさっき楽屋でしたんだ。色々あるんだけど、一等最初の東名阪、ファーストツアーの日清パワーステーション。そこに来た人って今会場にいる?」と投げかけるとあちらこちらからの返事にメンバー全員が「おお!」と驚く場面が。

 「やっぱいるんだね!アマチュア時代いろんなライブハウス回って、自分たちのデビューシングルというものが世の中に出て、あれは夕方の4時だっけ?」と記憶を辿る森友に、ギターの五味孝氏が「夜の9時だよ。代表取締役刑事」と相槌を入れる。

<写真>ラストライブでのT-BOLANベースの上野博文

ラストライブでのT-BOLANベースの上野博文

 「オマエ、さっき楽屋で話さないって言ってたじゃん」という森友の返しに、なんだかんだこの二人の仲の良さが微笑ましい。「あれは何年前?まだ生まれてなかった人もいるんじゃないの?TVから自分たちの曲が流れて、日清パワーステーション一体どんなライブになるんだろう?と思って、期待と不安となんかでもういっぱいいっぱいだったからさ、オールスタンディングで客席がうわー!って畝って(うねって)いるの見てその瞬間すごい力をもらったのを覚えてるんだよね。そこから23年だよね?ここからどんな風に走ってゆくんだよ。みたいな話をレコーディングやいろんな隙間にそういう話をすることがあって、やっぱこう、いつも自由で自分たちであり続けられる。そういう形がやっぱいいよねっていう。例え話でいつも寄せては返す波に形を変えてゆく砂浜のような存在であり続けたいと、そんな話しをして今も動いていますけど、どこまでもそれぞれ4人がもう一歩その先へっていうそんな自由さを持ってこれからも歩いていけたらいいなって思っています…。」な?とベースの上野博文に話しを振るも笑顔のままの上野。

 「こいつさ、普段そんなにお喋りではないよ。だけどさ、オープニングの映画の映像あったでしょ?あの映画でさ、こんなに上野って喋るんだみたいな。23年かかって分かった、みたいな」それに併せて五味が『離したくはない(シネマバージョン)』を弾き始める即興演出も観る者を楽しませてくれる。

今だから語る、T-BOLAN4人の出会い

 ステージは『じれったい愛』『No.1 Girl』『わがままに抱き合えたなら』とアップナンバーが続き中盤も『愛のために愛の中で』『LOVE』『離したくはない』『すれ違いの純情』『マリア』とひと通り名曲が駆けめぐった後で再び森友がメンバー4人の出会いについて語り始めると会場も興味深く耳を傾ける。

<写真>ラストライブでのT-BOLAN・ドラムの青木和義

ラストライブでのT-BOLAN・ドラムの青木和義

 「どんな関係だと思う?一等最初に会ったのが、俺と青木なんだよね。湘南のライブハウスでバイトしてて、DJブースでお皿(レコード)回したり、カウンターでカクテル振ったりしてて、週末になるとバンド目指してるやつらがデモテープ作りにきて、ちょっと力貸して?みたいなのが遊びにくるんだよね。そんなのに付き合って週末のRH前にお店をちょっと早く開けて手伝いをしてたんだよね。そんな頃にあるボーカリストの子からオーディションに行ってほしいんだけどって話があって。何それ?みたいな。話を聞いてみると、その時青木が組んでいたバンドのボーカルを探していて、そのオーディションの話しでさ。その頃忙しく学生生活していたんでなかなか時間も合わなかったんだけど合う事を決めたんだよね。藤沢ってあるの知ってる?駅の改札口で待ち合わせして。まぁ行きゃわかるだろうみたいな。で、改札に行ったらいるんだよ!悪そうなのが一人(笑)青木君?って聞いたら、『そう』って。あ、森友ですけど。って。それが初めての青木との出会いで。どう思ったの?」とドラムの青木和義に質問。

 青木は「似た匂いがするやつだと思ったよ」と。「俺はどう思ったのかな?やんちゃな感じだと思ったね。それでスタジオ入ってさ、俺もいろいろ生のドラム聞いてたしさ、なんとなくどんなものかって知ってたつもりだけど、めちゃくちゃ格好いいわけよ。キックの連打がすごくて。でもその時は、学生生活もあるしそのまま分かれてるのよ。それから1年後だよね。コイツから電話がかかってきて。“一人になったからやろうぜ”って勝手に一人になんなよ!みたいな(会場爆笑)でも、コイツの勝手から始まったんだよね。物事が始まる時ってすごいよね。おれはその頃大学3年生で次の自分の人生を親と約束してて、バンドをやるのはかなり型破りな方向向いちゃうな、みたいな。でもどこかで歌や音楽ってものと真剣に向き合ってみたい気持ちがあって、その気持が“やるんだったら、今やろうか。1番危険だったけど、1番やりたかった”んだよね。青木と握手を交わして、そこからデモテープ作ってひと月くらいかな。ライブハウスガンガン巡って、新しいギタリスト探さなきゃなって時期があって、そこで五味さん登場」と言うなり、会場が拍手で五味の言葉を促すが森友が更に当時の様子を語り続ける。

 「小さなスタジオに白のテレキャスターをソフトケースに入れた五味が来て『こんにちは』の挨拶も無いままドアが開き、こっちをチラッと見ただけでギターケースが開き、ギターを抱えて“いつでもどうぞ”みたいな(笑)嫌なやつだな〜!みたいな。青木のカウントが4つ入り。ガンッ!と音が鳴った時、“あ、このギター格好いい” その曲が1コーラス終わる前に“性格は二の次でいいや”、コイツにしよう。未だに変わんないね」で言葉を止めた森友に「何?性格悪いところ?俺も一言言わしてもらっていい?俺も“人間性はどうでもいいからコイツとやってみたいと思ったの”」とお決まりのセリフを返す。

 続き上野との出会いについては森友が一度バンドを離れて理想を追求するために作った5つのバンドの中にいたことなどを話し、ファンはデビュー前まで巻き戻された時間に深く気持ちを寄せていった。

ラストだから…。メンバーそれぞれの本当の気持ち

 後半、PVをがらっとカラフルに変えたことで注目を集めた『SHAKE IT』や『傷だらけを抱きしめて』ファンの中で新たな定番になったであろう『My life is my way』が演奏され本編が終了した。

 アンコールの拍手が長く続く。この時、会場にいた誰もがこの後にくる別れを感じながらも手を休めることが出来なかったであろう。再びメンバーが登場すると、五味にスポットライトが差し込む。ギターを片手に弾(はじ)き始めたその弦は前2公演とは異なる曲だった。

 ファン投票上位に必ず入る『BOY』は、メンバーの出産を祝し作曲され通常はピアノ演奏なのをこの日は特別にギターソロから演奏され、続けて『いじけた視線を語るより光を見たい』と会場がしっとりしたところで、森友が最後のトークを語り始めた。70年生きる鷹が70年を過ごすためには、その人生の半分を超えたところで自らがその先を生きるために過酷な準備をするという例えを、T-BOLANの新しい挑戦に照らし合わせながらファンに語った。

 「自分の選択、今日一日一日を大事にその先へと歩いて行けたらなと想います。ここからまた新しい挑戦です。同じ世代を生きている仲間としてその先へ一緒に歩いていきましょう」とアンコールの中締めをすると、『Heart of Gold』が始まった。「夢と勇気があればそれでいい 諦めはしない」その言葉どおり、きっと再び4人でステージに戻ってくるであろう。そう時間が紡いでゆくであろう夢が会場いっぱいに溢れた。

 お馴染みメンバー紹介では一人ひとりから感謝の気持ちが次のように述べられた。「こんなに集まってもらって感謝感激です。ありがとうね。僕らの映画観てもらってわかったと思いますけど、後悔せずにこの道を突っ走ってきて、また後悔せず未来へ向かっていきたいと思います!で、未来を信じます!本当にありがとうございました」と青木。

 ベースの上野は「気の利いた言葉を考えながら演(や)ってたんですけど、何も見つかりませんでした。で、やっぱり関わってきてくれた(ファンの)皆さんとスタッフのみなさん、本当にありがとうございました。それと、“青木、五味、嵐士”、ありがとう」と心のこもった短い一言に会場から感極まった悲鳴が湧き上がった。

 そしてそのギターテクニックを“昔から変わらずはみ出してて、わがままで格好いい最高のギタリスト”と森友なりの世辞で五味が紹介されるとそれにギターの音色で答えた五味が言葉でこう続ける「何回聞かれても同じなんだけど、この3人と出会えたことと、今日ここに来てくれたみんな、それと今日ここに来れなかった全てのT-BOLANファンに会えたことが、俺の一生の宝ものです。ありがとう!!」と。

 最後に森友から「みんな本当にどうもありがとう。こうやって山中湖で4人が再会して、もう一回ステージに立とうぜって気持ちを立てて、いろんな仲間たちの協力があって、賛同があって、そして何よりそれを待ち望んでくれたみんながいてくれて、この場所に立てたこの一つ一つ全てに感謝です。ひとつみんなにメッセージ。俺たちもどこかでこの復活を遠ざけて無理だろうと思っていた時期がありました。自分の心の中を見ないふりをして、これでいいだろうと。でもさ、ちゃんと見ると本当は分かるんだよね。それを今回俺たちは学んだ気がします。さっきも鷹の話しをとおしてそれを伝えさせてもらったけど、それぞれの人生にそれぞれの素晴らしさがあって、思うように行くことばかりじゃないかもしんないけど、覚悟を決めて自分で選択して歩くと、心の真ん中がしっかりしてくる。そんな気がしています。そして、その先にこんなに素晴らしい時間にたどり着くことができました。同じ時代を歩く仲間として、同じ喜びを感じあえる人生を歩んで行きましょう。今日は本当にどうもありがとう」と締めくくった。

 ラストはSmileに全ての願いを込めて、全27曲180分におよぶステージに幕が下りた。そんなT-BOLANの全てを網羅した完全限定のコンプリートBOXセット(7月10日発売予定)が予約受付中。

<セットリスト>
オープニング映像
1:Only Lonely Crazy Heart
2:Be Myself
《MC》
3:悲しみが痛いよ
4:Bye For Now
5:おさえきれないこの気持ち
6:刹那さを消せやしない
《MC》
7:じれったい愛
8:No.1Girl
9:悪魔の魅力
10:わがままに抱き合えたなら
Gt solo
11:あこがれていた大人になりたくて
12:愛のために愛の中で
13:Lovin’ you
14:LOVE
15:INST(あふれでる感情)
16:離したくはない
17:すれ違いの純情
18:マリア
《タイトルコール》
19:Happiness
20:SHAKE IT
21:泥だらけのエピローグ
22:傷だらけを抱きしめて
23:My Life Is My Way
《ENCORE》
EN1:BOY
EN2:いじけた視線を君に語るより光を見たい
《MC》
EN3:Heart of Gold
《MC》MEMBER紹介
EN4:Smile

この記事の写真
<写真>渋谷公会堂とラストライブを行ったT-BOLAN
<写真>渋谷公会堂でのラストライブで熱唱するT-BOLAN・森友嵐士
<写真>渋谷公会堂ラストライブ。T-BOLANのギター五味孝氏
<写真>ラストライブでのT-BOLANベースの上野博文
<写真>ラストライブでのT-BOLAN・ドラムの青木和義

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)