中島 愛「とりとめのない感覚を声にする」大人だからこそ表現できる曖昧さ
INTERVIEW

中島 愛「とりとめのない感覚を声にする」大人だからこそ表現できる曖昧さ


記者:榑林史章

撮影:

掲載:19年11月06日

読了時間:約14分

『本好き』メンバーとバーベキューに

「髪飾りの天使/水槽」本好き盤

――もう1曲の「髪飾りの天使」は『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』のEDテーマ。清竜人さんの編曲で、とてもガーリーでふわふわとした楽曲ですね。作詞作曲はシンガーソングライターの吉澤嘉代子さん。

 吉澤さんとは、2017年に出演させていただいた、作詞家・松本隆先生の47周年イベント『風街ガーデンであひませう2017』で初めてお会いしました。楽屋が同室で、たくさんお話をしたわけではありませんが、とても落ち着いた文学少女風の感じで、不思議な空気感をまとっていらっしゃって。ご一緒したらどんな感じになるのかなと思っていたんです。それで今回『本好きの下剋上』のタイアップでもあったので、本好きなイメージで面白い言葉を選んでくださるんじゃないかと思って、吉澤さんにお願いしました。

――そこに清さんが、アレンジで加わるという。

 清さんの「目が醒めるまで(Duet with 吉澤嘉代子)」で、吉澤さんがフィーチャリングされているご縁もあって、吉澤さんから「この曲には清さんの編曲が合うと思います」というご提案で、こういうタッグを組むことになりました。

――「髪飾りの天使」は、ジャズとかフレンチポップスがミックスされた感じでした。

 吉澤さんからは、最初に歌とギターだけのデモをいただきました。まったく同じ構成で2分半くらいの曲なんですけど、今の時代にしてはとてもコンパクトだなと思っていて。そこに清さんがアレンジをして、コーラスを付けてくださって、より華やかなものになりました。

――コーラスが多いですよね。

 けっこうたくさん入れましたね。今までの自分の曲や、ランカ・リーとして歌った『マクロスF』シリーズの曲で、とんでもなく難しいコーラスにめぐり逢うことが多々あったのですが、その中でも「髪飾り」のコーラスはすごく難しかったです。

――その難しさというのは、ウィスパーボイスでコーラスを録ったところでしょうか。

 はい。メインボーカルが声を張る曲ではないので、コーラスも地声とも裏声ともつかない声色をキープしなくてはいけなくて、その上で音程を取るのはすごく難しかったです。清さんがボーカルディレクションを務めてくださったのですが、メインのメロディも「もっと小さい声で大丈夫です」という指示があって。息がかからないギリギリまでマイクに近づいて、力を込めず囁く程度の声で歌いました。サビが終わって最後の一行に行くあたりで、やっとちょっとずつ声が大きくなっていくんですけど、でも決して力強い地声にはならないという感じで、ずっと地声と裏声の間を突いていく感じで歌っていて。地声と裏声が混じったミックスボイスで1曲丸ごと歌った経験はありましたけど、こういうゆったりとした曲調でそれをやるのは経験がなかったので、新しいチャレンジになりました。

――曲の終わり方が、けっこう突然ですよね。あれ? って感じで。

 そうなんですよ。続くのかと思わせておいて、バツッと切れる感じが良いんです。これは私の勝手な解釈なので、吉澤さんや清さんがどう考えていたかは分かりませんけど、実はずっと眠っていて夢だったんじゃないかなって。パッと目が覚めた瞬間が、あの突然切れるような終わり方なのではないかと。

――なるほど、確かに夢見心地な曲ですからね。MVは淡い感じの映像で、額縁を使った演出が面白いと思いました。

 私より2、3歳年齢が下の女性監督なんですけど、今までMVの監督は男性がほとんどで歳上の方に撮っていただくことが多かったので、とても新鮮でした。「水槽」のMVも光の使い方がポイントになっていましたけど、「髪飾りの天使」は自然光を上手く使って、フェミニンな雰囲気をきれいに映し出してくれています。

――「髪飾りの天使」がEDテーマのアニメ『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』には、中島さんもトゥーリ役の声優として出演されていて。

 主人公のマインは自分というものを持っていて、自分が叶えたいことに向かってまっしぐらです。そんなマインをフォローするお姉ちゃんがトゥーリです。アニメの作中でマインがトゥーリの髪飾りを作るシーンがあって、マインがトゥーリのことを天使と呼ぶこともあるので、「髪飾りの天使」はまさしくトゥーリのことを歌っている曲です。ただ、それをトゥーリの役の私が、役ではなく私として歌っているところは、少し複雑ではありますけど…。でもキャラクターソングではないので、マインの視点も織り交ぜながら歌っていて、マインとトゥーリの視点が交互に見えてくるような感じで、物語の締めくくりに流れたら良いなと思って歌いました。

――他のキャストの方との思い出は何かありますか?

 マイン役の井口裕香さんを始め、田村睦心さん、折笠富美子さん、小山剛志さん、速水奨さんなど。『本好き』は家族の物語でもあるので、スタジオの雰囲気もとてもファミリー感がありました。午前中の現場だったので終わった後にご飯に行くことはあまりありませんでしたけど、夏に一度みなさんとバーベキューしに行ったことが、私の夏の思い出です。お父さん役の小山さんと一緒に、親子役で仲良く肉を焼いて楽しかったです(笑)。

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