つるうちはな「悩んでいくことを祝福」心を“サルベージ”する音楽の秘密
INTERVIEW

つるうちはな「悩んでいくことを祝福」心を“サルベージ”する音楽の秘密


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年10月23日

読了時間:約13分

曲が人生を導いてくれる

つるうちはな

――さて、楽曲についてですが、「おまじないを君に」の歌詞がすごく気になりました。

 これにはエピソードがあるんです。友人が大ピンチを迎えて電話をしてきたんですけど、「もう死んじゃうかも」というくらいのレベルでした。それを受けてベランダで考えていたら、<おまじないを君に♪>…出来た! と思って。

――メロディが降りてきたんですね。

 いつも曲が出来るときは、断片ではなくズルズルっと出来るタイプで、歌詞もメロディもイントロもアウトロも全尺が一発で出来るんです。その時は歌詞も思ったことをそのままメロディに乗せました。それでボイスレコーダーに録音して1時間後くらいにその子に送ったら、また泣きながら電話をしてきて。

 でも、さっきとは違ってちょっと笑っていたんです。「曲にするの早過ぎませんか?」って(笑)。それで「これは大丈夫だ、届いた」と思いました。自分の思った気持ちも乗っかっていますけど、書いた時はとにかくその子を「絶対助けるぞ」という気持ちで書きました。

――音楽家冥利につきますね。

 そうなんですよ! いつもそうやって私は曲に救われていて。曲が人生を導いてくれるんです。そういう感覚が強いんです。一生懸命生きていくうちに<ぶっちぎって光になる>みたいな。

――「ぶっちぎって光 −サルベージver.」ですね。その曲、最高です。

 この曲ができた時は凄く辛いことがあって、夜中に泣きながら怒って眠れなくて…。それで一回寝たんですけど、目が覚めて、<ぶっちぎって光になる>と泣きながら小さい声でボイスレコーダーで録ったんです。改めて朝聴いたら「これいけるじゃん!」と(笑)。エネルギーとスピードで全てを超えて行こう、とらわれていても苦しいから、全部置いていって光になれというメッセージの曲なんです。

――そういえば、アレンジはご自身ではやらないんですか。

  編曲は色んな人に任せているんです。自分の曲だったらゼロからイチの時にほぼ出し切っていて。だからダメ出しとかもほとんどせずに任せちゃいます。骨格がしっかりしているからどういうアレンジになっても大丈夫だし、何せ私が選んだ人達だから大丈夫だという信頼があります。ちゃんとそこを解読できる仲間と出会えたのは幸運です。

――良い仲間の見つけ方ってありますか?

 いかに自分に正直に生きているかです。自分に嘘をついていると、その嘘に反応した人達が集まってくると思うんです。本当は凄く攻撃的な性格なのに温厚に振舞っているとするじゃないですか? そうすると「あの人、何でも言うことを聞いてくれるんだ」と甘える人が寄ってきたり。そういうことを若い頃からいまに至るまで経験してきました。自分が正直になればなるほど、そこのアンテナが敏感になってくるので「あ、この人嘘ついてるな」とか。

――けっこう見破れますか?

 目の前の人が、話していることと実際に心で思っていることが全然関係ないところにある、そういうのがけっこうあります。私はそこのズレに気づくのは敏感です。「この人、お腹の底から喋っていないな」とか。「占い師に向いてるね」って何度も言われました。

――そこに気づけるのはすごいです。

 「見透かしてくれ」みたいな人が来ますから(笑)。見えたことは言いますけど、真実なんて本人のなかにしかないので「自分で見つけろ!」というところまでのワンセットです(笑)。私のアルバムもそういう風になっていて「これが答えだよ!」とか「大丈夫だよ!」ということは言ってなくて自分で考えてほしいんです。そこの背中を押すための音楽で、自分と向き合うためのきっかけになってくれれば嬉しいです。

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