センチミリメンタル、いくつもの奇跡が導いたアニメ「ギヴン」との親和性
INTERVIEW

センチミリメンタル、いくつもの奇跡が導いたアニメ「ギヴン」との親和性


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年09月29日

読了時間:約14分

日本を象徴するアーティストになることが一番の目標

「キヅアト」ジャケ写 初回盤

――3曲目の「session/the seasons」は変拍子を取り入れたインスト楽曲ですが、こういったプログレ的なものも得意なんですか。

 得意ではないんです。もともとのルーツがクラシックピアノということも、苦戦した1曲です。原作でセッションで曲を作り上げるシーンがあって、その衝動感やそれぞれのパートの強みみたいなものを大事にしたいなと思いました。僕はこの曲のレコーディングには参加していないんですけど、今回ギターを弾いてくれたRyo Yamamotoさんに委ねて、密に連絡を取り合いながら制作していきました。5拍子や衝動感というところは僕が考えたのですが、こういったギターメインのインストは作ったことがなかったんです。なので、ギタリストが衝動的に引きたくなるフレーズはギタリストに任せたほうが、よりリアルになるのではと思いました。

――温詞さんは完全にクラシック畑?

 そうです。昔はJ-POPも全然聴いていなかったくらいで。テレビでも音楽番組が始まるとチャンネルを変えていましたから(笑)。でも、レミオロメンの「粉雪」に出会ってJ-POPにも興味が出てきました。

――音楽一家で英才教育だったのでしょうか。

 母が保育士でピアノが少し弾けるくらいで、音楽好きではあるんですけど、音楽一家というわけではないです。おそらく僕の血縁を辿っても音楽を生業にしているような人はいないと思います。僕はピアニストになりたくて、自らピアノを始めたのがきっかけです。

――ちなみにクラシックでお好きな曲は?

 ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」は壮大な感じで好きな1曲なんですけど、根底にあるのはベートーヴェンやモーツァルトが染み付いています。ベートーヴェンは衝動感が強くて、ロックっぽい要素があって、モーツァルトはキラキラしていて、高い音域でリフっぽいものが続いたりと、ポップスの要素があるなと感じています。

 でも、クラシックは好きだったんですけど、僕の中で曲とタイトルが一致しなかったり、感情をかき乱されるような衝撃を与えられたことがなかったんですけど、ドラマを観ていて流れてきた「粉雪」にはひっくり返るような衝撃を受けました。音楽に言葉が乗っかるとこんなにも力を持つのかと驚きました。そこから僕がやるべき音楽はこっちなんじゃないか、と思うようになったきっかけの1曲なんです。そこからポップスを掘っていくことになったので、音楽の楽しみ方が変わっていきました。

――ターニングポイントの1曲だったんですね。プロになって音楽との付き合い方は変わっていくと思いますか。

 楽しさはもちろんあるんですけど、好きなものを仕事にするのってこんなにも苦しいんだということも知りました。そこに責任が伴うと言いますか、言葉を一つ間違えただけで傷つく人が現れたり、無責任に音楽を楽しめない、多くの人が関わっているので、プレッシャーもありますから。でも、その分喜びも強いんですけど、すごくカオスな感情だなと思っています。

――その責任感が現れていたのが、「冬のはなし」が既にドラマCDで存在しているところに対して、SNSで温詞さんがその意図を説明されていたのが印象的でした。

 僕もレミオロメンの曲と出会うまではただの受け取り側で、プロのミュージシャンになるなんて思ってもみなかったです。その時の受け取り側としてのキラキラした感覚というのをいつまでも忘れてはいけないと思いました。僕の主観を押し付けるだけではなくて、受け取り側の気持ちを常に考えるようにしているんです。

 その中で『ギヴン』を愛していて、ドラマCDを聴き込んでいるファンからしたら、既に大事な「冬のはなし」が存在しているわけです。でも、僕が新たに「冬のはなし」を作って、今回はアニメということもあって影響力が強いと思うんです。そうなるとドラマCDの方がなかったことにされてしまったように感じる方もいると思いました。実際にSNSでもそういった意見もありましたから…。

――そうだったんですね。

 制作する前からそれは感じていました。ある意味、思い出を踏みにじるのは決定していると思っていました。もちろん誰も踏みにじろうなんて考えていないんですけど、そこに目を背けることは出来なかったので、SNSで説明させていただきました。この先もこういったプレッシャーと戦っていかなければいけないんだろうなと思いましたし、何を作るにしても覚悟を持って、真摯に音楽と向き合っていかなければいけないなと思います。

――音楽や人に対する想いがすごく伝わってきました。さて、ジャケットのアートワークも格好良く仕上がっていますが、温詞さんもアイデアを出されたり?

 今回は僕の意見というのは強く入っていないんですけど、後々入っていきたいという思いはあります。Instagramで僕は写真を撮ってそこにポエムを添えたりしていることもあって、写真や映像にはすごく興味があります。僕が表現するものでセンチミリメンタルというものを多方面で表現していけたらと思っています。どこから好きになってもらえるかわからないので、言葉も音も絵も含めて深く考えていきたいです。

――ジャケットの曲目にセンターラインが引かれているんですけど、これはどのような意図があるんですか。

 これは“キズをつける”ということを表してます。ジャケットのラインもそうだと思うんですけど、思い出や景色にキズを付けることによって気づける、ということを踏まえてのデザインになっています。

――そうだったんですね。ジャケットも含めてこの作品を楽しんでいただきたいですね。

 ダウンロードの良さももちろんあるんですけど、僕はギリギリCD世代ということもあり、CDを買って歌詞を見ながら楽しむという煌めきを知ってしまっているので、そこもこだわっていきたい部分ではあります。

――さて、温詞さんにとって音楽とはどのような存在ですか。

 薄っぺらく聞こえてしまうかもしれないですけど、僕は「人生」だと思っています。自分が主観で進められていくドラマと言いますか、自分の目線で起こることって色々あると思うんです。それにブックマークしていく、寄り添っていくものとして音楽はすごく強いものだと思います。

 曲を聴くとあの瞬間を思い出す、人生をドラマチックにしてくれるものだと思っています。映画やドラマでも主題歌や挿入歌があったり、物語を盛り上げてくれる。音や言葉で人生を盛り上げてくれる、皆さんの人生のBGMや主題歌、挿入歌にしてもらえたら一番嬉しいなと思っているので、僕は人生そのものなんじゃないかなと思うんです。

――センチミリメンタルとしての目標はどこにありますか。

 僕は昔から有名になりたいと言い続けています。それは売れたいとかお金がほしいとかではないんです。僕がレミオロメンと出会えたのは、レミオロメンが有名だったからだと思っていて、より多くの人に音楽や言葉を届けられる人物であったから、僕の人生が変わったと思っています。なので、より多くの人にセンチミリメンタルの音楽を届けるには、今は有名になるということが一番大事なんじゃないかなと思っています。日本を象徴するアーティストになることが、僕の一番の目標であり夢なんです。

(おわり)

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