アイラヴミー「マイナスも肯定していきたい」“ダメンタル”が照らす人生
INTERVIEW

アイラヴミー「マイナスも肯定していきたい」“ダメンタル”が照らす人生


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:19年09月21日

読了時間:約13分

 3人組バンド・アイラヴミーが4日、1stミニアルバム『でも生きている』でメジャーデビューした。アイラヴミーは、シンガーソングライターとして活動していたさとうみほの(Vo)を中心に音楽学校で出会った野中大司(Gt)、井嶋素充(Ba)の3人で2016年に結成。デビューに先駆け「ダメンタル三部作」のデジタルシングル「負け犬戦士」、「社会の歯車」、「でも生きている」を今年3月、5月、7月にそれぞれ配信。洋楽と邦楽の交差点に切り開かれた新たな地点に立つような、ポップで踊れて洗練されたサウンド、“自分を受け入れる大切さ”を綴る歌詞、そしてロックな姿勢が武器の彼ら。これまでの音楽人生とともに、メジャーデビューを果たした現在の心境を聞いた。【取材=平吉賢治/撮影=村上順一】

「マイナスも肯定していきたい」

さとうみほの

――メジャーデビューに至るまでの道のりからお聞きします。

井嶋素充 最初はみほの一人だったんだんですよね。

さとうみほの もともとシンガーソングライターでアコースティックギターを持って一人で曲を作ってやっていました。それでトラックメイカーのTHOM HAWKEさんと組んで、いまも一緒にやっています。

野中大司 見えざるもう一人のバンドメンバーのような感じの方です。

さとうみほの それからバンドをずっと組みたくて。メーザー・ハウスという音楽学校に行っていて、そこに2人が先輩としていたんです。

野中大司 みほのが一人で弾き語りをやっているときから僕はバックメンバーで関わっていたんです。

さとうみほの そこにベースの井嶋くんも加入して。

――それからどれくらい経つのでしょうか?

井嶋素充 2年ちょっとです。

――その間、曲はたくさん作っていた?

さとうみほの 正直、曲は全然作れない時期があって。CDに入っている「負け犬戦士」は1年半くらいずっと出来なくて。私は1曲1曲時間をかけて作っていきたいタイプなんです。他と同時進行ができないので時間がかかるんです。

野中大司 基本的に没曲がないんです。最初に歌詞が良いと思ったのは納得するまで作り込みます。時間はかかるんですけど、1曲1曲を大事に作っていっています。

――一つのアイディアを大切にしているのですね。メジャーデビューが決まって心境の変化はありますか。

さとうみほの 正直、ずっと実感が湧かないです。関西でライブをしたときにラジオにも出演させて頂いて、周りの方々が色々動いてくれるからこうしてお仕事が来るんだなという点では実感があります。

井嶋素充 まだイメージが湧かないです…「CDショップに盤が並んだら実感するよ」と色んな方に言われるんですけどね。これから色々広がって行くのかなと思うと楽しみだし頑張りたいなと思います。

野中大司 僕もこれからだなという気持ちです。

――メジャーデビューに先駆けて「ダメンタル三部作」という展開がありましたね。“ダメンタル”とは?

さとうみほの “ダメンタル”はそのまま、“駄目なメンタル”です。私が凄くメンタルが豆腐みたいで…。「えい!」ってやったら崩れちゃうような。でも、そのマイナスな思考、「生きるのがつらいな」とか「しんどいな」というのは、決して悪いものだとは思っていなくて。どうしてもプラスの方向に変えたいと思いがちなんですけど、私はそういう「プラスに行こうよ。明るくしようよ」という言葉が嫌いでして。「いつまでも明るいって疲れちゃうじゃん」って思うんです。私はマイナスも肯定していきたいと思って、“ダメンタル”という言葉を掲げました。「これでいいだろ!」と、旗を振っている状態です。

――その点は歌詞にも表されていますね。野中さんもメンタル面に関しては同じスタンスでしょうか?

野中大司 アイラヴミーとしてはそうです。そもそも「アイラヴミー」というバンド名も似たようなものでして。嫌いな部分も受け入れて認めてあげて、自分のことを改めて愛してあげるようになればいいなという気持ちがあります。僕個人としてはみほのとは真逆の性格というか、わりとメンタルはマッスルです(笑)。

――マッスル・メンタルのメンバーがいると、客観的にバンドを捉えることができて良いですね。

野中大司 もともとは気弱な性格なところもあったので、そういう意味では歌詞の世界観はよく理解できるんです。井嶋さんのメンタルは?

井嶋素充 僕はヒョロヒョロです(笑)。みほのと似ているところがあって、落ち込みやすいし人と比べちゃうし…「こうあらなきゃいけない」と思ったりします。SNSなどを見て、人が成功しているのを見ると僕も頑張らなきゃなって。「ちゃんとしなきゃ」と、落ちて行っちゃうんですけど、自分が思っている「あるべき自分」よりは、「ありのままの自分」でいられるようになりたいし、そのために音楽をしていたいし。ライブでもそれをバシッと伝えられるようにという気持ちです。

――SNSでの他人のアクションは、どうしても自分と比べてしまいますよね。

井嶋素充 SNSって良い部分しか見えないし、自分たちも良い部分しか見せないので、理想と現実のギャップが大きければ大きいほどヘコむというのはあります。

さとうみほの あれってドラマを観ているみたいだよね。良いシーンばかりというか。SNSもそれに似た部分があると思うんです。自分の良いところばかり投稿するからドラマチックに見えて。「いいな。みんなキラキラしてるな」とか思ったり。

井嶋素充 意外とそういう時って自分だけが苦しいと思いがちなんですけど、わりとみんな同じ気持ちなのかなって思います。Instagramの「いいね」の数が見られない仕様になったのもそういうところかなと思います。“インスタ映え”に自分と比べて落ちてしまうからというか。そういう風に疲れちゃう人が増えているのかなって思います。

――そうなってくると、“ダメンタル”の概要はかなり重要になってきますね。ヘコんでもその気持ちを否定することはないと。

さとうみほの 「ちくしょう!」って思っていこうよと(笑)。

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事