メッセージを伝えることへの使命感
――さて、この映画で伝えたいものは何だと思いますか?
この映画は実話であって、フィクションではないんですよ。しかも十数年前にあった出来事でそんなに遠くもない。日本の国では考えられない、安全な水が手に入らないというところで、それがどういう影響を与えるのか、作品の中では病になってしまいましたが、それは自分で調べないと分からないものだと思います。そんな実情をこの映画はダイレクトに伝えている映画だと思います。少しでも興味ある方や、今まで知らなかった方にもぜひご覧いただいて、世界はどういう状況なのかを自分が置かれている立場はどういうものなのかを感じてほしいです。
――水もそうでしたが、反日感情が強かったのは知りませんでした。
もちろん親日の方もいますし、フィリピンの方々は優しくて温かい人ばかりです。基本は受け入れ体制があるんですけど、作中にも出てくる村長のお母様は戦争でご両親を亡くされていて。それは、許そうと思ってもなかなか許せるものではない、どうしても心のどこかに残っています。でもそれがあったとしても、岩田さんの気持ちはちゃんと伝わっていって、どんなことがあったとしても、人の繋がり、優しさ、思いやりはちゃんと届くんじゃないかなと思いました。
――それと岩田さんを演じた赤井さんのセリフに<自分にできることを探してそれを真剣にやる>というものがあったと思いますが、実際に「社会に対する自分の役割」について考えさせられたものはありましたか?
現地に行って帰ってくる直前に、私はこれまでどれだけあまり考えずに生きてきたんだろうと思いました。自分なりにはいろいろと物事を考えて生きてきたつもりではありましたが、何も知らなかったし…。でもそういうふうなことを思わせるほど、人の繋がりや人生や生き方を描いている映画だと思いますし、セリフの節々に、自分の人生の道しるべのヒントがたくさん隠されているので、自分の人生を見つめ直せると思います。
――辻さんご自身がこの作品を通して意識が変わったことはありますか?
メッセージは伝えようという気持ちは強くなりました。私たちは、ありがたいごとにelfin’としてアーティスト活動をして、さらに女優やモデル、声優や漫画家としても活動していろんな発信の仕方をさせて頂いて、こんなに恵まれている環境はないと思います。いろんなことをどんどんメッセージとして伝えていかないといけないという使命感はより強くなりました。ただ現地に行く前はその気持ちは自分のなかでは強いと思っていたのですが、映画を通して、メッセージを発信していくことも含めてまだまだだったんだなと。それは岩田さんの姿からすごく感じて、岩田さんは行動する人でどんなに周りから言われても「パンダンの人に井戸を作って安全な水を届けたい」という気持ち一心でずっと走り続けて本当に成し遂げた人です。その姿をみて、それまで戦争で日本への感情が良くなかった現地の人も心が動かされて。岩田さんのそうした気持ち、優しさ、誠意が心に刺さったのかなと思います。ずっと突き進んでいく、まっすぐメッセージを伝えていかないといけないというのは見習わなければいけないと強く思いました。
意識変化は歌にも
――先ほど「普通を演じることが難しかった」と話していましたが、その経験によって新たな表現方法が得られたということになろうかと思いますが、歌うという点ではどうですか?
主題歌「アンルート」は私の所属するアーティストユニットであるelfin’が歌わせて頂きました。特に今回はその経験や意識変化が出ています。というのも、歌詞が映画の内容とリンクしていて、実際に明日香として歌えていました。いままでは、歌は自分のなかではパワーというか、力を発していろんな人に伝える、ぶつけると思っていました、でも今回はさらっと優しく伝えられて、それがこの曲でできました。
――ストレートに伝えるという話もありましたが、歌の表現方法や気持ちの伝えた方は変わったかもしれないですね。
elfin’の曲はすべてメッセージ性が強いので、もともとメッセージは伝わりやすいと思います。だけど今回がきっかけで、より多くの方にメッセージを伝えられるように、というのは突き詰めていきたいと強く思うようになりました。
――サウンド的には、ギターは入っていますがストリングスも入って、これまでとは違う一面を見せています。
そうです。ミディアムテンポな曲調も初めての試みでした。先ほどもお話しましたが、「アンルート」は映画とリンクした歌詞がたくさんあって、一節に<始まりはいつもすぐそばにある>というのがあって本当にその通りだなと思いました。明日香自身もそうですし、撮影が終わった後に周りの環境を見てもそう思いますし、どこに始まりがあるかは分からない。でもその始まりが知らない人はたくさんいると思うので、この曲を通してその始まりが見つけられるように、elfin’4人で精一杯に歌っていきたいと思います。
あとがき
インタビューから数日後、都内の劇場で同映画の完成披露試写会がおこなわれた。“水”を連想させるスカイブルーの衣装で登場した辻は清々しい表情で完成の喜びを語った。
演じる上でテーマになったのは「普通の女子大生」。彼女自身は「演じることが難しかった」と話しているが、目黒監督は「その辺を汲み取り演技してくれた」と称えた。手応えをつかむきっかけになったのは、本インタビューでも指摘した「現地に降り立ったシーン」だったという。
役柄に特徴があればそこを際立たせることで表現することもできる。しかし特徴もない「普通」を演じるのはとても難しい。しかも彼女の場合は声で物事を伝える声優でもある。初映画で初主演ということだけではない挑戦がそこにはあった。
当たり前のものは失われたときにそのありがたみを知る。日本では、水道の蛇口をひねれば水が出てくる。しかし、現地ではそれが普通ではなかった。普通に気づくことは難しい。しかし「普通」に光を当てたときに大切なものが見えてくる。
今回の役柄で得たものは大きかったとも話した彼女。今後様々な表現方法でメッセージを伝えてくれるだろう。それはすでに主題歌「アンルート」そして、「マロンパティの涙の伝説」をイメージしたポストカードのデザイン画にも表れている。





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