寄り添いたい――、シンガーソングライター・有華 SNSで広がった音楽の輪
INTERVIEW

寄り添いたい――、シンガーソングライター・有華 SNSで広がった音楽の輪


記者:木村武雄

撮影:

掲載:19年08月31日

読了時間:約12分

マイナスな気持ちからもプラスにできるように

――「おつかれさま」を聴いて、ふと「なんのために働いているのだろう」と思ってしまいました。

 「なにがしたいかわからない」という悩みを抱えている人がけっこう周りにいて、「本当にこれでいいのかな?」とか、上手くいっている人や、好きなことを仕事にしている人をねたんだり、そういうリアルなみんなの気持ちをけっこう歌詞に入れていて。たぶん、そういう気持ちをもっている人はたくさんいると思うんです。だけど、みんなそう言いながらも頑張っている。それはそれですごいことだと思うんです。ただ、その一方で周りがどうとか比べる気持ちも分かるんですけど、「君は君」という曲にも込めましたが、「あなたはあなただし、そんな無理しなくていいと思うよ」ということも伝えたくて。

――その「君は君」は、最後に落ちがありますよね?

 そうなんです。<こんな気持ちになるのは僕だけじゃない/完璧な人なんてこの世には誰もいないよ>と言い切るのではなくて、<完璧な人なんてこの世には誰もいないよって思いたい>と「思いたい」を付け足しました。

――そこが人間っぽいですよね。

 曲って「頑張れ」「最高」みたいなのが多いじゃないですか? そんなの言われても私は「ウゥッ!」となるタイプなので、あまり言いたくないなと最近思うんです。最初はけっこう強気でそういう曲を書いたんですけど。「君は一人じゃない」とか。「カッコつけてるな」と思って(笑)。最近は「寄り添いたいな」と思っています。

――実際に曲を流した反応は?

 自分が思っている以上にたくさんの方が聴いてくださっていて、インスタグラムでいつも聴いてくださっている人もそうですけど、「ラジオから初めて聴きました」とか、いままでの私の発信源ってインスタグラムだけだったので、他のことで私のことを知ってくれる方々が増えて、ライブに来てくださる初めての方も増えてめっちゃ嬉しいです。

――今作『キミノサプリ』はどういった作品でしょうか?

 恋愛や日常、自分自身など色んなテーマで書いたので、その時々でみんなの思った気持ちに寄り添いたいというのと、絶対にマイナスな気持ちからもプラスにできるように、元気を与えられるような一枚です。それ以外は逆に求めないくらい。曲を聴いてもらって、ちょっとでも気持ちが楽になってくれたらという思いだけです。

――マイナスの扱い方って大変ですよね。

 それも人それぞれだと思うので、マイナスなときに私の曲を聴いて合わなかったら別にそれは聴かなくていいし、合ってプラスになるんだったらいっぱい聴いてもらって。無理に「元気を出せ!」とやりたいわけではないんです。

――収録曲には色んな状況で聴いても良いように、色んなシチュエーションのものを入れ込んでいるということですよね?

 そうです。「リングノート」とかも、振られたあとに私が書いた復讐ソングみたいな感じなんです。振られた後はだいたいは悲しいけど、その後には怒りが出てくると思うので(笑)。ライブでめっちゃ盛り上がりたいと思っている曲でもあります。振られたときって、悲しい思いはみんな表に出せると思うんですけど、「めっちゃ嫌やってん!」は悪口にもなるし、あまりみんな感情を出さないなと思って。私は出しちゃうんですけど。出さない人もライブで発散してもらえたらなというテーマで入れました。

――怒りって出せない人もいるんですよね。

 私はすごく出すんですけどね。性格的に言いたいことを言えない子が周りに多くて。それは友達でも恋人でも、「本当はこう思っているけど、こう言ったら私のことを嫌いになるかも」とか。そういうのって私にはない感覚だったんですけど、そういう人達が直接は難しくても、曲を通して言えたらいいなと。それこそ「あなたもね」とかもそういう感じなんです。これを無言で彼氏にCDを渡して聴いてもらったらいいし(笑)。代弁というか曲で伝えられたらと。

――女性は、昔と現代では違うと思うのですが、あまりはっきりと物言いをしないことが多いのでしょうか?

 言う子は言うし、言わない子は言わないと思うんですけど…今までの自分の世界観は「言ってなんぼ」だと思っていたので、言えないという子がいるというのが新鮮だったんです。今と昔がどう違うとか、そういうところに私が目を向けていなかっただけかもしれませんが。

――そういう子からすると助けを求めますよね。

 そうですね。言葉で書くよりも歌うほうが伝えやすかったりとかしますよね。

有華

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