WONK「J-POPと言われたい」世界の舞台に立つからこそ感じる音楽の普遍性
INTERVIEW

WONK「J-POPと言われたい」世界の舞台に立つからこそ感じる音楽の普遍性


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:19年08月16日

読了時間:約15分

最新の制作環境で生み出されるWONKの楽曲制作

――本作の歌詞についてですが、全体を通しての根底的なテーマはありますか?

長塚健斗 そもそも今作がコンセプト作品のような感じなんです。これから作り始めるアルバムがあるんですけど、それが映画の本編だとしたら、今回のは予告編、序章みたいな感じの位置でして。一曲一曲にどんなことを言うかというのは、事前にみんなで話して決めて、それをベースに一曲ずつ書いていったという感じです。作品で言うと、それぞれの曲が今後1本で繋がってくるというところもあるんです。

長塚健斗

――道標のようなものがありきの、それぞれの曲なのですね。

長塚健斗 そうです。「Orange Mug」は、“家族”をテーマに書こうと。

――「Orange Mug」は家族の温かみをとても深く感じる歌詞だと思います。さて、WONKはパリ、ベルリン、シンガポール、台湾など国外の様々な場所で公演、海外アーティストとのコラボレーションもしていますが、日本と海外でリスナーの音楽の捉え方に違いを感じますか?

荒田洸 感じないですね…今よりも規模が小さいとき、渋谷の小さなハコでやっているときのお客さんの反応と、海外に行って僕らを初めて観てもらうときの反応はかなり似ています。だからそこまで明確に違いは感じないかもしれません。世代もあるかもしれませんが。

荒田洸

江﨑文武 パリに行ったときも演奏が終わったあとに、お客さんと音楽の話をしていると、やっぱり聴いているものも似通っているし。パリでもソウルやHIP HOP好きみたいな、ちょっとマイノリティ側のリスナーの人達が来てくれてたんですけど、だいたいみんな同じタイミングで同じような音楽を聴いてきているし。「あの人の新作良かったよね」みたいな話が普通にできるのって、それこそインターネット世代だからかなと思いました。日本のリスナーは日本の音楽だけを聴くことが多いということを凄く感じていて。僕らのバンドも「英語だからわからない」みたいな、そういうコメントをいただくことが多いですがこれまで多かったんです。英語だから聴かないというか。

――英語でやっているというだけで壁ができてしまうのですね。

江﨑文武 そうなんです。そういう感じが凄くあって。言語で色々区切っちゃうともったいないなと個人的には思っています。

江﨑文武

――インターネット世代というお話を受けて感じたのですが、WONKは楽曲制作からミックスにマスタリングと、全てバンドで仕上げていますが、それは自然な流れでの制作なのでしょうか?

井上幹 たまたまといえば、たまたまかもしれません。

江﨑文武 けっこう貧乏根性かもしれないです(笑)。

井上幹 最近はもうiPhoneとかiPad世代だから、作曲は全てそれらでやる人が多いですよね。

江﨑文武 下の世代と話していると本当に全てがiPhoneとiPadで完結している人が凄く多くて。なんなら簡単なミックスまでやっちゃう人もいるんです。しかもiPhoneのアプリからApple MusicとかSpotifyとかに配信もできますし。

井上幹 もう、直接ね。

井上幹

――改めて、凄い時代ですよね。

江﨑文武 だいたいのことは自分でできるぞっていう。

――WONKの制作方法についてですが、どのように進行していくのでしょうか?

江﨑文武 荒田がリーダーなので、彼がまずビジョンを持ってくる感じです。

井上幹 「今回はコンセプトアルバムにしたい」とか、ジャケットにあるような上下が反転した世界とか、月がどうの、というコンセプトは、基本的に荒田が「ざっくりこういうのをやりたいな」というのを持ってきて、そこからです。今作の場合は、コンセプトに合う楽曲を作っていこうと。長塚以外が作曲担当なので、それぞれ3人がデモを持ち寄って、それを全員で組み立てていくという感じです。

――デモはどのような形で持ち寄られるのでしょうか? 例えば弾き語りのテイクとか?

井上幹 それに近いというか、それぞれのパートによってです。荒田が持ってくるときは、基本ビートがしっかり固まっていて、あとはフワッとしたものが入っています。文武の場合はコードはしっかり決まっていて、ビートとかは適当にしてあるのが上がってくるし。

江﨑文武 他のバンドと違うちょっと面白い点は、音楽ファイルのバージョン管理をするシステムを使っているんです。「Splice」というんですけど、デモを上げる段階でみんなSpliceというサービスを使ってファイルを共有するんです。トラックがいくつかあるDAWのファイルのなかで、ドラムのパートだけ荒田によって埋められているファイルがクラウド上に共有されるんです。それをクラウドから落として、僕が鍵盤を入れて、またクラウドに戻すというようなデモの進め方をしているんです。

――事務的な作業に置き換えると、エクセルオンライン(※クラウド版のExcel。同様のブックをクラウド上にて作成・保存・編集・共有ができる)のような感じでしょうか? 

江﨑文武 正にそうです!

――凄いですね。いま音楽制作はそういった時代なのですね…。

江﨑文武 とはいえ国内でSpliceを使っている人はまだあまりいませんね。

井上幹 僕らは新しい環境を柔軟に使っていこうと思っているんです。便利なんです。

長塚健斗 僕らは自分達でEPISTROPHというレーベルを運営しているんですけど、そこで「こういう新しいファイル共有サービスが始まったから投入してみよう」とか。そういうのはよくあるんです。

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