Moon「ジャズの歴史の中で記憶してもらえたら」様々な表現方法で魅せる音楽
INTERVIEW

Moon「ジャズの歴史の中で記憶してもらえたら」様々な表現方法で魅せる音楽


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年07月10日

読了時間:約10分

私の音楽が皆さんに染み込んで欲しい

Moon

――今作にはジャズ・スタンダードナンバーから「'S Wonderful」と「Tenderly」の2曲が収録されています。

 本当にジャズ・スタンダードとして沢山のボーカリストが歌ってきましたし、アーティストが演奏されてきました。この2曲は、私も一度は歌ってみたいと思っていた楽曲です。『Kiss Me』の時よりもどれだけ今どきのサウンドを加味できるものにはどんな曲があるのかと考えた時に、この2曲はスタンダードでありながらもモダンな部分もあったので、今回のコンセプトに上手くマッチするんじゃないかと思いました。

――この2曲をカバーされているアーティストで、よく聴かれていたのはどなたのものですか。

 「Tenderly」はサラ・ヴォーンが歌っていたものを良く聴いていました。「'S Wonderful」はジョアン・ジルベルトやジュリー・ロンドンです。今回歌うにあたって参考にしたということはないのですが、よく聴いていたので私の中に染み付いているとは思います。「Walk On By」はディオンヌ・ワーウィックが有名ですが、ダイアナ・クラールが歌っているものを良く聴いていました。よくサビが印象的で頭の中をぐるぐる回るということが皆さんにもあると思いますが、この「Walk On By」も頭の中でループするので、この時代のフックソングだったんじゃないかなと感じています。

――ノラ・ジョーンズの「Those Sweet Words」も興味深いです。

 「Those Sweet Words」はよく聴いていました。ジャズファンでノラ・ジョーンズを嫌いな人はいないんじゃないと思います。私も例に漏れず大好きで、以前にも「Don’t Know Why」も歌いましたし、沢山歌い聴いてきました。過去のシンガーの中でディーバがサラ・ヴォーンであるとすれば、今のディーバはノラ・ジョーンズだと思います。なので、最近のジャズのナンバーを1曲歌うのも良いんじゃないかなと思いました。皆さんもノラ・ジョーンズの歌は聴き慣れていると思うんですけど、こういう風にも歌える、表現出来るという部分に魅力を感じてもらえると思ったので選曲しました。

――この「Those Sweet Words」も新しい一面を見させていただきました。さて、今作のアルバムタイトルが『Tenderly』なのですが、数ある名曲のなかからなぜこの曲をタイトルにされたのでしょうか。

 私は基本的に考え抜いて行動するというよりも、自然に考えて物事をおこなうのが好きなんです。音楽もまた然りで、今作のタイトルを考えた時にも、この『Tenderly』という言葉が、とても柔らかく、気付かないうちに自然に染み込んでくるイメージがありました。色々考えてみましたが、私の音楽が皆さんに染み込んで欲しい、という願いを表現するのにこの言葉以外にはないんじゃないかと思いました。

――収録曲の中ではMoonさんの考え方に一番近い言葉だったんですね。さて、今回伊藤ゴローさんとの作業はどんな感じでしたか。

 前作を踏まえて、お互いがどのようなスタイルで進めていくのか、というのが理解出来ていたので、よりスムーズに出来たと思います。その分、レコーディングのある一日をアイデアを出し合う日に当てました。その時間があったので、より良いテイクを収録できたと思っています。

――前作では、小沼ようすけさんとコラボされて、小沼さんがレコーディング直前に体調崩してしまうというハプニングがありましたが、今回そういったことはなかった?

 今回は幸いにもそういったエピソードはなかったです(笑)。頭を悩ませた部分もありましたが、レコーディングという作業自体はスピーディに行うことが出来ました。予定よりも1~2時間早く終わってしまったり。なので、その時間を使って散歩に行ってみたり、食事に行ったりしました。私は比較的レコーディングは早い方だと思うんですけど、こんなにスムーズに進んだのは初めてで、印象的でした。レコーディング前は不安もあったので、しっかりと準備に取り組んでいたのが良かったのかも知れないです。

――最後にMoonさんは音楽を通してどのようなことを伝えていこうと思っていますか。

 ジャズは今の音楽シーンのなかで主流とは言えないと思いますが、ただ多くの人が変わらずジャズという音楽を愛し、演奏しています。私もその中の1人として記憶してもらえれば、それだけで嬉しいです。個人的には、自分がやりたいと思える音楽をやりたいタイミングで出来ている、恵まれた環境で活動が出来てきました。その音楽を皆さんが聴いて、こんな表現方法もあるんだ、など共感して下さったなら本当に嬉しいです。これからもずっと続けて行けたなら、これほど嬉しいことはないですから。

(おわり)

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