majiko「寂しくない人は歌えない」新作に込めた孤独と挑戦
INTERVIEW

majiko「寂しくない人は歌えない」新作に込めた孤独と挑戦


記者:小池直也

撮影:

掲載:19年06月24日

読了時間:約19分

 シンガーソングライターのmajikoが6月19日、フルアルバム『寂しい人が一番偉いんだ』をリリースした。まじ娘名義で発表した前作『Magic』から3年5カ月ぶりとなるフルアルバムは、歌い手からアーティストに成長した彼女を存分に感じることができる12曲が詰まっている。その進化の一方で感じる孤独によって彼女は歌を歌うことができるのだという。タイトルにも表れている彼女の心のうちには一体なにがあるのだろうか。このミステリアスな新譜について、majikoに話を聞いた。【取材=小池直也/撮影=木村陽仁】

「まじ娘」の頃よりもぐっと自分色を出せている

majiko

――3年5カ月ぶりのアルバムリリースということで、感慨深い作品になったんじゃないですか。

 以前のアルバム『Magic』でも作詞作曲していますが、あれはアーティスト性よりも歌唱力を重視していた内容でした。今回は関わった曲が多くなったので、まじ娘名義の頃よりもぐっと自分色を出せていると思います。

――そういえば、令和初日にまじ娘として「メンデーナ」の歌ってみた動画を上げていましたね。

 久しぶりにニコニコ動画を掘っていたら、いい曲を見つけられたので歌ってみました。なので衝動的なものですね。昔は毎日掘ってましたけど、今は自分の曲を作る方が未来にとって生産性的だと思っているので、あまりしていません。

 「歌ってみた」に関して、私は自分の琴線に触れた曲を歌うスタンスでやってきました。個人的にボカロ曲の良い悪いは、音楽と動画のセンスだと思います。今ではサムネイルでどんな曲かわかってきて、見ただけで「これはエモなんだな」とか「これはアニソンぽい」「これはエレクトロなのかな」とわかりますけど、惹かれるのはどれにも当てはまらないものなんですよ。

――「春、恋桜」はご自分でイラストを書いていますし、スクラッチアートの描写を用いた楽曲「Scratch the world feat. GAGLE」も制作されています。絵と音楽には関係があると思いますか。

 あると思います。色合いの足し引き、音の足し引きなど、絵を描くのと作曲は似ているんですよ。私の作業部屋には絵を描くコーナーと、音楽制作のコーナーがあります。作曲が煮詰まったら、絵を描くみたいな。今も絵は自分にとって、音楽と同じぐらい近いところにあります。

――「エミリーと15の約束」でカンザキイオリさん、「レイトショー」でみきとP、「マッシュルーム」で蝶々P、とボカロPが起用されています。これは、まじ娘時代を意識してということでもあります?

 特に原点回帰とか、ねらいはありません。「まじ娘」は別に葬り去りたい過去ではないので、垣根なく今の活動と歌い手としての活動が混ざっていけばいいなと思ってます。

 カンザキさんは「命に嫌われている。」を歌わせてもらっていて、スタッフの皆さんも絶賛してたので参加していただきました。蝶々Pは今まで「心做し」とか「君に最後の口づけを」でもご一緒しています。とみき(みきとP)は たくさん関わらせてもらってるんですけど、書き下ろしは初めてですね。

――「レイトショー」は二胡のサウンドが印象的でした。

 二胡を入れたのは、とみきの判断です。すぐに二胡奏者の方に来てもらってレコーディングしました。むせび泣く感じも曲に合ってて、本当にいいですよね。やっぱり彼は仕事が早い。デモも一緒に作らせてもらったんですけど、私が10秒かけてやること1秒でしますから。

 あと印象深かったのは、私の歌を録ったときにマイク越しで「どうだろう?」と話しかけたら、いきなり彼が泣いちゃったこと。長く沈黙しているので「悩んでるのかな?」と思ったんですけど、歌を聴いてぐっときてしまったみたいでした。

 やっぱり自分の曲だからこそ、なんでしょうね。とみき自身が楽曲の主人公ぐらい、入り込んじゃうんだろうなって。私はそれを見て笑ってたんですけど(笑)、いろいろな現場で活躍するようになっても、そうやって一曲一曲に愛情をもっているのが素敵だなと思います。

――なるほど。アジアな感じのこの曲に続く「春、恋桜。」は、和なニュアンスでした。アジアから日本という、曲順に意味深げなものを感じましたが、どうでしょう。

この2曲はシンプルに、恋愛という括りでまとめました。「春、恋桜。」のサビは当初、違う曲のサビだったんですよ。でも新しいAメロとBメロを付けた方がよさそうだなと思ってつなげていったら、和っぽくなったんです。狙ったわけじゃなくて、なぜかそうなったという感じでしたね。この曲のアレンジを担当してくださった横山裕章さんにも相談しながら。

――横山さんは、アニメ『7SEEDS』エンディングテーマでもある「WISH」で作詞作曲をされていますね。

 横山さんは優しいです。いろいろ注文をつけても全部「わかりました」と言ってやってくださるんですよ。
「WISH」はメロディとバッキングの感じがきれいで、最初に聴いたときから「めっちゃいい曲じゃん!」と思ってました。

 起用していただいた『7SEEDS』の原作を全巻読んだら、自分のなかでも3本の指に入る素晴らしいマンガになったので、この作品のエンディングで流れることも嬉しいです。内容はエグいところもあるけど、最後ぐらいは救われてほしいなと思って歌詞を書きました。「ちゃんと光はあるからね、大丈夫だから」みたいな。

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