フレデリックが4月13日、新木場 STUDIO COASTで『FREDERHYTHM TOUR 2019 ~夜にロックを聴いてしまったら編~』をおこなった。彼らの真骨頂でもあるリズムだけでなく、ライティングや前奏、アコースティック、そして歌などを駆使した演出で楽曲のスケールは増していた。「踊る」だけでなく「聴かせる」「見せる」ことを更に進化させた彼らの音楽。新たな章の始まりを物語る重要な一夜に見えた。【取材=木村陽仁】

「LIGHT」の真の姿

フレデリック

撮影=ハタサトシ

 4年前、三原健司(Vo.Gt.)はこう言った。

 「フレデリックのリズムと目の前にいる一人ひとりの気持ちを合わさって一つにしたい。リズムを目の前にいるお客さんと作りあげていくのが、フレデリックとしてのバンドの新しい形にもなっていく」

 そうして始まったのが『フレデリズムツアー』だ。今では彼らの代名詞にもなっているツアー。規模も拡大し、そのリズムを作り上げる仲間は日に日に増えている。

 仲間が増えれば、フレデリズムの世界観は更に広がり、スケールも増す。それによって生まれるダイナミズムがこの日も表れていた。

 健司がこの日のライブ終わりに「僕らにとっての新たな挑戦です」と語った、今回の『FREDERHYTHM TOUR 2019-2020』は、来年の横浜アリーナでのツアーファイナルに向けて、1年を5つのシーズンに分けまわる。シーズンごとに設けられた挑戦。彼らが更なるステップアップを踏む、そんな決意が見え隠れする。

 そのシーズン1となる『FREDERHYTHM TOUR 2019 ~夜にロックを聴いてしまったら編~』の初日が4月13日、新木場 STUDIO COASTでおこなわれた。

 アリーナ席を埋め尽くす多くのオーディエンス。まさにギュウギュウといった様子だ。開演時刻を迎える頃、ステージ近くに押し寄せる人の波がうごめく。鳴門海峡のうず潮のような光景だった。これだけ見ても熱気が伝わってくる。

 「フレデリズムツアー、始めます」

 健司の声が響くと同時に、割れんばかりの歓声があがる。高揚感を煽るビート打つSEが流れ、手拍子が起こる。スモークに乱反射する青の光。その光を打ち消す更に光度の高い白光が6点から照らす。音量が膨れ上がり、ピークに達しようとするときあのリズムが刻まれる。「LIGHT」。フレデリックが新たに提示した、彼らの根幹でもある「踊ること」を主眼に置いたダンスミュージックだ。

 音と音との間の余白があるBPMを落としたナンバー。音源ではその余白はグルーヴを演出するための休符に過ぎないが、この日のライブではオーディエンスのパートになっていた。そこに「LIGHT」の真の姿を見た気がした。

フレデリック

撮影=ハタサトシ

 まばゆい逆光に照らされ浮き上がるオーディエンスの影。手拍子や手を振り上げている。ゆったりとしたテンポの合間にある余白のなかで踊るオーディエンス。この曲の正体はまさに、4年前に健司が言った「一緒に作り上げるに必要なファンのパート」ということを感じさせた。三原康司(Ba.)がかつて「僕らの音楽はお客さんに聴いてもらって完成する」と言っていたが、オーディエンスと対峙して曲が完成する「ライブバンド」であることを強く印象付けさせた。この日披露していないが「トウメイニンゲン」に託した意味もこの光景で分かる。

瑞々しく生き続ける楽曲

フレデリック

撮影=ハタサトシ

 一方、ライブをもって曲は完成するが、そこでとどまることなく進化をし続ける。それを印象付けさせたのが、「LIGHT」の次に披露された「リリリピート」だ。2016年発表のメジャーファーストアルバム『フレデリズム』収録曲。もう3年前の楽曲になるが、オーディエンスの熱気やリズムを吸い込み、音像は巨大化していた。決して完成したまま陳腐することなく今にあって瑞々しく生きていた。

 そうした感慨にふけるなかで、どんどんと曲が進む。オーディエンスの凄まじい盛り上がりによって、更に盛り上がる。そうしたなかで届けられる「TOGENKYO」。火に油を注ぐようなもので、熱気は更に高まる。同じ光でも白光の「LIGHT」に対して、「TOGENKYO」はそのMVの世界観の如くカラフルだ。

 そして、フレデリックの真骨頂とも言える「スキライズム」。心地よいリズムに歌詞の言葉も踊る。もちろん跳ねているのはサウンドだけでない、オーディエンスもだ。しかも一糸乱れぬといった感じだ。

 そして、大量のスモークが焚かれる。ステージだけでなく、客席からも。定番にもなった「うわさのケムリの女の子」だ。「夜にロックを聴いてしまったらあなたは何を感じますか? フレデリズムツアーへようこそ」と健司。スモーク量は更に増え、視界不良になっていく。まさに夜更けの港のようだ。

 曲終わりに雨の音が鳴る。青の色のライトを反射するステージはどこか雨水に濡れる地面のようなにぶい輝きを放っていた。雨の音は次第に大きく鳴り、そして「RAINY CHINA GIRL」へと流れる。そのまま「人魚のはなし」へ。光の演出も加わって一連の物語を見ているようだ。躍らせるだけでなく、光を使った演出で曲を見せる。光との相性が高い彼らならではの演出だ。

踊る、そして踊る

フレデリック

撮影=ハタサトシ

 「シンセンス」と「かなしいうれしい」はアコースティックバージョン「FAB!!」で届けられた。アコースティックで際立つのは曲の良さ。それを引き立たせる健司の歌声。かつては「自身の歌声に自信がない」と語っていた健司だが、この日見せた歌声は力強く、伸びやか。特に「かなしいうれしい」はその歌声だけでオーディエンスを感傷的にさせていた。

 ブルージーな雰囲気もあったこのセクションを終える。この日のセットリストはいくつかの章に分かれているようだった。「LIGHT」で幕開けた序盤が第1章なら、「うわさのケムリの女の子」から「他所のピラニア」は第二章。「FAB!!」が第三章で、ここからは第四章となる。

 「後半戦行ってもいいですか!」と煽り、武が高揚感を煽るドラミングを見せる。引っ張るまで引っ張る。ジェットコースターのようにいつ下るか、そんなドキドキ感が充満しきったなかで始まる「まちがいさがしの国」。再びダンスフロアと化した場内。更に攻める。「KITAKU BEATS」から「オワラセナイト」、そして「オドループ」。黄金とも言える組み合わせ。しかも、それぞれの楽曲を更に引き立たせるように、共通の前奏を使い高揚感を高めていた。

フレデリック

撮影=ハタサトシ

 凄まじい熱気。気持ちよさに浸っているのはオーディエンスだけではない。メンバーもだ。その表情やグルーヴィーなサウンドからも伝わってくる。まさに、オーディエンスと一緒に作るフレデリックの理想を体現した光景が広がっていた。「もっと遊ぼうぜ! 新木場」。

音、光、歌、組み合わせで形を変える万華鏡

 「次はフレデリズム2を体感しませんか?」

 その世界観はまさに「光の国」だ。これでもかと言うぐらいのラインティング。レーザーにスポットライトなどなどが飛び交う。青や赤、白…。強い光もあれば淡い光も、彼らの音楽を、光をもって視覚化しているようだ。その閃光のなかで次々と送られるリズム。「逃避行」、そして「エンドレスメーデー」。彼らを一躍有名にさせたのが「オドループ」なら、現在の彼らの礎を作ったのが「飄々とエモーション」。その重要な曲を本編ラストに送る。ラストは音を止め、シンガロング。歌によって一体化する場内。凄まじい光景だった。

 興奮が冷めやらぬなかでおこなわれたアンコール。その最後に「ハローグッバイ」を届けた。「いろんな感情がその時にあって、それを感じることができるから強くなれる。感じられることが曲を育ててくれる。もっと強くなりたい。出会いと別れを歌った曲です」、そう語って披露した同曲は人とのつながりを象徴するものだが、健司が力強く歌った<生きる>という言葉が妙に心に焼き付いた。フレデリックの音楽は現在進行形で生き続ける――彼らの決意表明かのように響いた。

フレデリック

撮影=ハタサトシ

 リズム一辺倒だった彼らが見せた、様々な表情。歌、リズム、そして光。もともと持ち合わせていたものが更に際立ち、そして色んな曲の世界観を映し出していた。それは、ガラス、ビーズ、宝石、金属などそれぞれ別のオブジェを成しているが、傾けることで様々な形を見せる万華鏡のようなものだ。MCで健司が語った「想像を超える、アルバムの曲を超えるツアーをやっていきます」。まさに想像を超える輝きを放っていた。

セットリスト

01. LIGHT
02. リリリピート
03. TOGENKYO
04. スキライズム
05. うわさのケムリの女の子
06. RAINY CHINA GIRL
07. 人魚のはなし
08. 他所のピラニア
09. シンセンス
10. かなしいうれしい
11. まちがいさがしの国
12. KITAKU BEATS
13. オワラセナイト
14. オドループ
15. 逃避行
16. エンドレスメーデー
17. 飄々とエモーション

アンコール
EN01. 夜にロックを聴いてしまったら
EN02. ハローグッバイ

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