声優の東山奈央が4月3日、2ndアルバム『群青インフィニティ』をリリース。これまで声優として数多くのキャラクターソングを歌い、Rhodanthe*やワルキューレといったユニットのメンバーとしても活躍。歌唱力の高さを評価され、2017年にシングル「True Destiny/Chain the world」でソロデビュー。昨年は、1stライブを東京・日本武道館でおこなった。今作『群青インフィニティ』は、山田悠介やTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDなどが楽曲を提供、2曲で東山自身が作詞作曲を手がけた。オケ録りにも参加し「音楽活動をおこなう意味を感じ充実感がある制作でした」と振り返る。楽曲制作やレコーディングのエピソード、夏に開催するツアー『東山奈央 1st TOUR“LIVE Infinity”』にかける意気込みなどを聞いた。【取材=榑林史章】
空の広さと無限大の可能性を重ねて
――『群青インフィニティ』は、どんなテーマで制作しましたか?
前作より大きな挑戦をしたいと思い、前作のテーマであった“虹”を包む大きなものとして、“空”をテーマに制作しました。空には、雨や雪、嵐など、日によって色々な空模様があります。虹も色とりどりだし空模様も様々で、そんなバラエティ豊かな1枚にしたいと思ったのは前作と共通ですね。
――表題曲の「群青インフィニティ」と「はじまりの空」の2曲を、東山さん自身が作詞作曲していますね。「群青インフィニティ」は、昨年末のファンクラブ限定ライブで披露されていたので、こちらが先にできたのですか?
実は「はじまりの空」が先で、1stアルバム『Rainbow』のラストに収録されている「Rainbow」を作っている時から、「Rainbow」のアンサーソングを作りたいという構想が頭の中にありました。なので、大体の全体像はできていたのですが…主旋律とラスサビのコーラスのハモリを自分で考えたというのもありましたし、壮大なバラードになっちゃったので、歌詞がなかなか書けなくて。
――なっちゃったって(笑)。
なっちゃったんです(笑)。すごく分かりやすい和音なら等身大の歌詞でもっとすんなり書けたと思いますけど、気がついたらコード進行が複雑になっていて。それに合わせて歌詞は若干ポエムっぽい感じになりつつも、言いたいことが分かるように地に足の着いた言葉選びも考えて。バランスや曲とのハマりを考えながら書いていったのですが、「これぞ!」と思う言葉にめぐり逢うのに時間がかかりました。
――歌詞は、ファンへの気持ちと東山さんの中にある不安や葛藤を交えながら、またここから始まっていくと歌っているような感じですね。
アルバムのラスト曲ですが、「はじまりの空」というタイトルであるところにエモーショナルなものを感じていただけたらと思います。それに私が歌詞で伝えていることは、「Rainbow」の時からあまり変わっていなくて、ネガティブな感情を抱えたままでも人は前に進めるというメッセージです。それを「Rainbow」の時よりも、優しく温かく受け止めてもらえる曲にしたいと思いました。「Rainbow」は薄暗がりの森に霧が立ちこめていて、最後に朝焼けが見えてくるイメージでした。「はじまりの空」は、朝焼けで始まり青空のきれいな丘に向かって歩いて行くような、晴れやかなイメージですね。
――「はじまりの空」では、オケ録りにも参加されたそうですが、いかがでしたか?
「Rainbow」のときはストリングスのオケ録りを拝見させていただきましたけど、その時はただ聴いているだけで、自分の中でこうしたいという発想がありませんでした。でも今回は、ピアノ、ドラム、バイオリンのレコーディングを見学させていただいて、全てのパートで「こうしたい」というアイデアが自分の中から出てきたんです。例えばバイオリンのキメの音は、「力強くではなく、優しく音を置いていくように弾いて欲しいです」と、お願いをさせていただきました。ドラムも自分の頭の中で鳴っていたフィルインがあったので、それを伝えました。そうやって自分の中のイメージが、どんどん具現化されていくのを間近で観ることができて楽しかったです。
――そういうこだわった音まで、細かく聴いて欲しいですね。「はじまりの空」から、ツアーに繋がっていくイメージもあります。
歌詞は、いろんな解釈をしていただけたら嬉しいです。1枚を通して聴いて、みなさんが元気になれるアルバムを作りたいと思ったので、みなさんの背中を押す応援ソング「群青インフィニティ」でスタートし、最後の「はじまりの空」を聴いた時に、みなさんの新しい未来が見えてきたらいいなと思います。そういう新しい一歩を踏み出せるような曲にしたいと思いました。
――表題曲の「群青インフィニティ」は、バンドサウンドのロックナンバーです。ロックの曲を作るのは初めてだったとのことですが。
最初は、私の作詞作曲は1曲の予定だったのですが、表題曲をどうするか打ち合わせをしていく中で、「日本武道館での1stライブを無事に笑顔でやり遂げられたのは、みなさんの応援のおかげ。表題曲は、私からみなさんに勇気を届けられるものにしたい。ロックで元気で勢いがある応援ソングで…」と、イメージを伝えていたら、「じゃあ自分で作る?」と、急展開になりました。ロックは初めてだし時間的にもあまりないということで、いつも曲を作ってくださっているWEST GROUNDさんにコード進行とリズムを作ってもらって、そこにメロディと歌詞を乗せるというやり方をすることになって。
――骨組みを作ってもらって、そこに肉付けしていくような?
はい。自分でアイデアが浮かんだら骨組みも変更していいということだったので、その点では気持ちが楽でした。それに声優という職業柄、決まったセリフや尺があるところに自分の表現を乗せるとか、ある程度の制限がある中でプラスアルファを乗せる仕事をいつもやっているので、こういう曲の作り方は自分の気質に合っているなと思いました。
――すごくキャッチーで口ずさみやすくて、爽やかさと熱さの両方があって。<何度も何度も>と歌っているところは、胸にグッと響きました。
そこは、ライブでも熱くなれるパートだなと思っています。表題曲だし、キャッチーにしたいと思って作りました。空の広さと、みなさんの持っている無限大の可能性を重ねて歌っています。
――曲のタイトルは、どんなイメージで?
歌詞に<放て群青>というフレーズがあって、そこが浮かんだところで「群青インフィニティ」というタイトルを思いつきました。それまでは、「Brave Dreamer」というタイトルが付いていたんです。