おぼろげな夢をものにしたい、寿君 「大どんでん返し」にみる音楽観の変化
INTERVIEW

おぼろげな夢をものにしたい、寿君 「大どんでん返し」にみる音楽観の変化


記者:小池直也

撮影:

掲載:19年03月18日

読了時間:約14分

次の世代に渡しても恥ずかしくないものを作りたい

寿君

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――「大どんでん返し」をライブで披露した感触はいかがでした?

 今の時代、カメラを向ける人が多いですからね。でも「新曲なので、撮るのもいいけど、盛り上がってもらえたら嬉しいです」と伝えたら、曲に集中してくれるんですけど。でも今回は発売前からiTunesで試聴と予約ができるようになっていて、一緒に歌ってくれる人もいて。リリース前から手応えを感じています。

――昨年12月のツアーファイナルでSPICY CHOCOLATEのKATSUYUKIさんがオープニングで登場していました。彼からの影響はありますか?

 もちろんありますよ。KATSUYUKIさんは本当にレゲエミュージックを広げた人なんだなって思いますから。僕の今があるのも、KATSUYUKIさんの仕事をやったことがきっかけだったとすごい思います。インディーズ時代にSPICY CHOCOLATE名義で4曲くらい出させてもらって、毎年コラボさせて頂いたんですけど、KATSUYUKIさんの言うことがだんだんと壮大になっていって。自分はずっと大阪レゲエを背負おうとしていただけなんだなと。

――先日演歌歌手の方を取材したのですが、人間くさい部分がレゲエと似ているのかもしれないと思いました。

 あると思います。演歌も女性が失恋して、男性に「勝手にしやがれ」という感じで歌うところにぐっときます。「あなたが私のことを忘れくさったとしても」とか、汚い言葉ではありますが、その人の気持ちがあふれ出てるんだなと思いますし。人間味のある音楽は僕もすごい好きです。

 ボブ・マーリーも「ONE LOVE」(1977年)で、サビは普通にまっすぐな愛を歌っていますが、バース(Aメロ)では「あいつらは何にもわかってない」と結構批判的なんですよ(笑)。だからあの人の歌が刺さるのかなと。きれいごとばかり書いているのではなくて、人間のきれいじゃないところの言い回しも上手く使っているんです。やっぱりそういうところは消したくないですよね。メジャーでたくさんの人に対して歌っていても、自分くささというか。きれいごとだけで納めずに、そうでない言葉のなかにあふれる愛を感じるアーティストになりたいです。

寿君

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――ところで、1月に西宮市立名塩小学校で卒業生向けの講演をされていますが、こちらについてもお聞きしたいです。

 あの小学生たちの6年生が僕の「SPECIAL THANX」を組み立て体操の退場曲として使ってくれていたそうなんです。その学年の先生が熱狂的に好きな人で、ライブにも来てくれていて。「ぜひうちの学校で」と言ってくださったので、行ったんです。最初「自分は歌手をやっています。レゲエはメッセージ性のある音楽で、いいと思ったからこういう歌を歌っています」と自己紹介してから、一緒に連れていったダンサーと子どもたちと一緒に踊ったり「人生は一度きり」と話してきました。

 それで最後に「SPECIAL THANX」を歌ったら「あ、この歌のお兄ちゃんなんや!」という顔の子もいましたね(笑)。お母さんが僕の音楽を好きみたいで、一緒に歌ってくれてる子もいました。質問コーナーでは「おにぎりで好きな具はなんですか?」とか訊かれて、めっちゃ可愛かったです。話も真剣に聞いてくれましたし。3、4人にサインしてあげたら、全員来ちゃって(笑)。100人以上いましたけど、全員サインしましたよ。

 「あー夏休み」を出してから、子どもと触れ合う機会が増えましたね。宮城県の学校にも元ZOOのSATSUKIさんと一緒に行かせてもらって。彼女のダンススクールの生徒さんと一緒に「あー夏休み」「Choo Choo TRAIN」をやりました。やっぱり子供の時に聴いた曲って忘れないじゃないですか。僕も小学校1、2年生の時にお遊戯でやった曲とか今でも覚えていますよ。そういう曲が僕の作った歌だったら、その子の人生のなかで役に立てているのかなと思ったりもします。そういう機会を増やしていきたいです。

――レゲエシンガーでそういう活動をされている方って少ない様な気がしました。

 あまり聞かないですね。沖縄とかだとよくあるんですよ。IVANくんというレゲエダンサーがいるんですけど、世界各国で活動してますね。踊って、喋って「こういう風に踊ると楽しい」というということを世界の少年院とか、地元沖縄の学校を回っているんです。とてもいいなと僕も思っていました。自分もそういう機会が増えてきて、もっと子どもが聴いても大丈夫な曲を作らなきゃなとも感じます。

 僕は三木道三(現・DOZAN11)が地元の先輩なんですよ。すごい影響を受けました。今となっては音楽を作る時に知識をもらったりしてます。あの人はすごい頭がよくて、大事なことを彼の歌詞から学びました。国民的ヒットチューンを生み出したすごい方ですから。自分も次の世代に渡しても恥ずかしくないものを作り続けていたいですね。

――2019年はこのシングルを皮切りにどの様な活動をされていきますか。

 今年は6月30日に『ありがた夜2019』というイベントがあります。もともとはインディーズの時にずっとやっていたイベントなんですけど、2年ぶりにやろうと。お正月に『おめでた夜』という企画もやっていたので、これも復活できる様にイベントをひとつひとつ成功させていきたいですね。たくさんおぼろげな夢があるので、それをしっかりしたものに変えたい。「大どんでん返し」から、また作品を出して、ツアーとかも回れればいいなと。ミスや無駄撃ちなく、自分の無理ないペースで発信していきたいです。

寿君

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