フレデリック「音楽が触れられる瞬間にいれるよう」深化した4人が見せる新たな景色
INTERVIEW

フレデリック「音楽が触れられる瞬間にいれるよう」深化した4人が見せる新たな景色


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年03月06日

読了時間:約13分

表裏一体の言葉に惹かれる

――さて、皆さんが今回収録された曲の中で特に印象的だった楽曲は?

高橋武 どの曲も印象深いんですけど、僕は「YELLOW」です。なぜかというと、メロディや歌のニュアンスが特に好きなんです。あと、この曲のドラムは今まで生きてきた中で、断トツでベストテイクだと思っています。難しいことはしていないんですけど、健司君の歌に対してベストなドラムが叩けたと思っていて、この曲に関して言えば誰にも負けないと思っています。

――それは印象深いですね!

高橋武 アルバムトレーラーを聴いてファンの子が「YELLOW」のドラムが良かったと言ってくれていたのも、凄く嬉しくて。僕はもともとシンプルなビートが好きなんです。それが周りにも伝わるんだなと実感を持てたのが嬉しかったし、健司くんの歌を活かすというのを一番重きを置いているので、それが自分だけが満足するのではなくて、ファンのみんなにも伝えていける曲になるんじゃないかなと思います。

――康司さんの印象的な曲は?

三原康司 僕は「対価」です。フルアルバムという沢山曲がある中で、全体を通してフレデリックというものをこのアルバムを通して感じとってもらいたいと思っていて。「対価」もその中の一曲で、今までとは違ったタイトルの付け方だったり、歌詞の形や自分のメッセージ、この曲から見える風景を感じ取ってもらいたいというのを、伝えたかったし、書きたかった曲です。

――近年、歌詞は凄く変化してきていますよね。

三原康司 そうですね。J-POPのあるべき姿という中でも、構成感もサウンド面のこだわりも凄く強くなっていく中で、より一層フレデリックらしさというのが出ている芯の強い曲だなと感じています。歌詞を書く部分でも悩んだ部分が大きかったです。今までも歌詞に気持ちみたいなものは詰まっていたんですけど、新しい形が出来たなとは思っています。

――私は今作を聴いて、フレデリックはもちろん進化もしていますけど、さらに深化していっていると感じました。健司さんはどの曲が印象的ですか。

三原健司 僕は「夜にロックを聴いてしまったら」です。言葉のニュアンスが変わってきたと感じたのは、「かなしいうれしい」辺りからなんですけど、「シンクロック」でも見せた色んな目線がある中で、音楽が好きな人、プレイヤーに向けた曲が康司は絶対一曲はあるんです。「夜にロックを聴いてしまったら」は、その要素も含んでいるし、共感してもらえる幅が凄く広がった曲だなと思いました。

 『フレデリズム2』は普通の生活の中でも共感出来るようなものだったり、様々な見方ができる曲が増えてきましたし、この「夜にロックを聴いてしまったら」は何かを始めるきっかけになる曲になるんだろうなと。僕らの視野も広がったし、バンドとしての幅も広がるんだろうなというところで、選ばせてもらいました。

――フレデリックは始まるというところへの意識が高いですからね。

三原健司 その意識は強いです。「オワラセナイト」もそうですし、毎回ここがスタート地点だというものを作るというのは、昔から変わっていないところです。

――隆児さんはいかがですか。

赤頭隆児 僕は「スキライズム」が印象的でした。シンプルなビートが好きな人が叩くアップテンポのビート感や、ベースラインも曲を作る、把握している人が弾くラインだったり、歌もサビのファルセットの部分とか、いいなと思える部分が全パートにあるんです。そこで自分はこの曲の中で何をしようか考えました。ギターソロでいつも通りの感じで弾こうと思っていたんですけど、遊び心があっても良いんじゃないかなと思って、タッピングを入れてみました。

――隆児さんそういうハードロック的なアプローチはやらないですよね?

赤頭隆児 ハードロックが嫌いなわけではないんですけど、フレデリックだとタッピングはやったことはなくて。それを3人はよく知ってるから、最初「それやるの?」みたいな反応でしたけど(笑)。でも、結果的にみんなすごく面白がってくれて、今までと違うことを取り入れることが出来た曲ということもあって印象的でした。

――意外でしたけど、ギターソロがまたこの曲の良いフックになっていますよね。でも、皆さんは驚かれて(笑)。

三原康司 レコーディングでも、一番チェックしましたから(笑)。でも、こうやって新しいことを取り入れられたので、またバンドがより面白くなっていく一歩なんだろうなと思いました。

――「スキライズム」はこれぞフレデリックという楽曲になっていますが、最近書かれたものなんですか。

三原康司 歌詞は変えましたけど、曲自体は前からありました。発表する来るべき日が来たと思っています。

――好きと嫌いという相反する言葉が、フレデリックらしさが出ているなと感じました。

三原康司 フレデリックを始めた時から二面性というものに凄く興味が出てきたんです。「かなしいうれしい」もそうですし、「LIGHT」の光と闇という部分だったり。なぜこんなにも表裏一体の言葉に惹かれるのかと考えたら、自分が双子だというのが影響しているのかなと。僕に足りないものを健司が持っていて、健司が足りないものを僕が持っている。2人がバンドをやった時にそれが一つになる、それが凄く素晴らしいものだなと思っていて。僕は自分にコンプレックスというのはなくて、それを埋めてくれる人たちが周りにいてくれるからなんです。それは本当に強さだし、自信になっていくものだなと思っています。

――それに気付けたのは大きいですね。

三原康司 例えば「かなしいうれしい」は表面上だけ見るとネガティブに捉える人もいると思うんですけど、でも実はそうではなくて深い意味があったり。笑っているけど、その背景には辛いことがあって、それがあるから頑張れているという人もいたり、そういったことに気付けるようになったなと思いました。一つの言葉のイメージだけに縛られない、僕らのニューダンスミュージックという言葉も、その言葉の意味だけではなくて、もっと広げて面白くしていこうということなんです。言葉の裏側を受け取ってもらえるようなメッセージを作っていかないといけないと思っています。この「スキライズム」でも、嫌いという言葉をどう思わせるかというところにはこだわりました。

――私は「CLIMAX NUMBER」がおおっ! と思いました。あまりフレデリックやっていなかったリズムですよね。

三原康司 ここまでバリバリのモータウンビートは確かになかったです。それは新しい試みでしたし、ずっと冬の曲を書きたいと思ってました。過去には「トライアングルサマー」という季節を感じさせる曲は書いてはいたんですけど、北海道に行った時にその寒さを肌身で感じていることを言葉にしたいなと思ってました。こういう曲が書けたことは大きな一歩になりました。

――コーラスも凄く印象的ですけど、皆さんで録ったのでしょうか。

三原康司 これは僕と健司の2人でやっています。

――けっこう厚みがあるので、皆さんで録っているものだと思ってました。コーラスをリズミックに使ったりフレデリックらしさも出てますよね。あと、このリズムが私の中で懐かしさが凄くあって。

三原康司 このリズムはJ-POPではやり尽くされた感はあるんですけど、それをロックバンド、ダンスミュージックとしてどう昇華させるのかには、こだわりました。

――リズムといえば「エンドレスメーデー」は、フレデリックでこんなにリズムがシンコペーションしているのも珍しいかなと。

三原康司 今までのフレデリックらしさもありつつ、ニューウェーブっぽいのをこの速さでやるというのはなかったですね。

――この曲の歌詞も言葉の裏側、捉え方によって意味合いや対象者が変わりますよね?

三原康司 「夜にロックを聴いてしまったら」と同じなんですけど、それぞれに色んなイメージを持たれると思うので、聴いた時にどう感じるか、いろんな形で受け取ってもらえたら嬉しいです。

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