嘘をつきたくなかった、BOMIが選んだ道の先 ミュージシャンの4年の記録
INTERVIEW

嘘をつきたくなかった、BOMIが選んだ道の先 ミュージシャンの4年の記録


記者:木村武雄

撮影:

掲載:19年03月03日

読了時間:約10分

幸せとはなにか、自分らしさとは

――作品の最後のインタビューのなかで「幸せを感じる力を付けたい。幸せを見つける感度の問題」と言われています。それは昔からそういう考え方があったのですか?

 それは、生きてきたなかで思ったことです。どんな状況で生きていても幸せそうな人は幸せなんですよね。例えば社会的に見て大変そうだなと思っている人でもその人からしたら幸せ。結局自分がその中から幸せを見つけられれば幸せなんじゃないかと。人間って欲深いから「なんでこうならないの」「なんでこうしてくれないの」というのが出てくる。何かに対しての不足感だったり、足りなさの方に目が行きがち。でもどちらかと言えば「足りている」ことに目が行けば幸せに生きられるのではないか、と。でもそう思いながらそんな気分にはなかなかなれないんですよね(笑)。そんな思いも込められています。

――そこに繋がるかもしれませんが、先ほどの「ハロー・ザ・ワールド」。ライブでは何曲か歌っていますよね? でもなぜ監督はあの楽曲の歌唱シーンを選ばれたのか。BOMIさんはどう思いますか?

 希望を感じられたからですかね? 「生まれる」ことを書いた曲なので。子どもが生まれる時ってすごい希望に包まれて生まれてくる。ツルっツルっというか、純粋な魂の状態で。だけどそこからいろんなことがあって、そのままの形ではいられないから、それがその人の個性を作ったり、コンプレックスを作ったり、良くも悪くも。そうしたことを歌っている曲だから選ばれたのかな?

――私自身は作品を通じてBOMIさんはずっと悩んできて、でもこの曲が流れてきた時に、これまで避けてきたものと向き合えた気がしたんですよ。それでいろいろと調べたら、BOMIさん自身は過去に辛い思いもあって。それで、それと向き合えたのかなと。

 その通りです。アルバム自体もそういう気持ちで作ったものだったので。

――そのなかでBOMIさんにとって音楽とは何ですか?

 それも4年で変容するものだからな。自分の能力的に得意なことだと思います。4年前だったらダイレクトに生きることに繋がった可能性はあるけど、今単純に思うのは歌うことが自然だし、得意なことです。

――ということは、今は充実している?

 それはどうかな?(笑)。ただ、いくつになっても活動できることは良いことだなと思っていますね。何歳だから引退ということではなく、続けていけることでしか分からないことがたくさんあると思う。音楽も上京してからを考えると10年以上は歌っている。でもそれぐらいやってきてやっと、歌への緊張がなくなったというか。もちろんライブ前は緊張するけど。始めた頃は例えば「こういう風にしてくれない?」と言われたら焦るじゃないですか? そこに対して今は単純に「そういう感じなら、こういうアプローチがいいよね」と柔軟に対応できるようになりました。声の扱い方も含めてある程度分かってきているのが今だと思いますね。

――芝居もなさっていますが、女優をやることで表現者としての意識が変わったことは?

 先ほど「歌は生きること」とお話ししましたが、表現の方法はいくつもあって、私の場合はそのなかの得意なことが歌うことだった。表現することにジャンルはないと今は思っています。もし絵が得意であれば絵を描く、描きたい。まあ私は絵はうまくないから描かないと思うけど(笑)。お芝居に関してはそれをやる機会があったからやったので。

――2014年のワークショップで初めて芝居を経験されて、その時はどんな感じでしたか?

 感情が解放された感じでしたね。それを凄く面白がってくれる人(スタッフや監督)がいて。アーティスト、ミュージシャンである限りは自分が自分らしく生きていることが大切だし、自分が発信していくものが大切、人に媚びないことが大切、といういろいろなものがあって、個としての強さが必要だけど、芝居の仕事は真逆で監督が求めることに対して自分がどこまで寄り添って、もしくは新しい側面を持って提案できるかが大事。まずは求められていることを返さないとそこから先は始まらないというか。アプローチが全然違うのでフラットになる意味では勉強になったと思います。

――さて、この作品を見たうえでの全体を通しての感想をお願いします。

 モヤモヤする(笑)。自分の生き方を自分で決めることと、卑屈になることが絶妙なバランスでリアリティとしてあって、そこがモヤモヤしましたね。自分も含めて、それじゃなくても良かったんじゃないの? それは晴れやかな選択だったの? もっと軽やかに生きている女性もいるんじゃないの? と。もちろん不器用さを持っているからそうなるのは分かるけど、難しいテーマたなと思いました。一つの側面では語れないというか、100%こうだとは言えない、私が正しい、あなたが正しいとは言えない。考えさせられるし、それには答えがないから。だからモヤモヤする。もっと晴れやかな作りもあったと思うんですよ。強さや光にフォーカスを当てたらもっと変わったと思う、でもそうじゃない。

――BOMI、今後の活動は?

 そろそろアルバムを作りたいなと思っています。でも音楽で、前は商業ベースに乗せていって、自分の生活を支えるものにしようという考えは強かったけど、今はそこに対してどうにかしようという気持ちよりかは自分が心地良いもの、もちろん自己満足になるつもりはないけど、自由に音楽を作れたらいいなと思っていますね。

BOMI

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(おわり)

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